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北朝鮮は第2のリビアになるか
五味洋治
(2011.2.22)

 

    中東の民主化を求めるデモが専門家の予想を超える勢いで拡散している。長期独裁政権への民衆の怒りは、ネットを通じて力を増し、さらに地域、世代を超えて広がっている。

 

    そこで感じるのは、北朝鮮で同じ事が起きるのかということだ。残念ながらその可能性はきわめて低い。

 

    その理由は4つ挙げられる。

 

    まず、ネットが全く普及していないことだ。北朝鮮の教育機関にはネット網があると言われるが、国外とは接続されていない。金正日総書記やごく限られた指導層、朝鮮中央通信、ロシアや中国大使館といった特定機関以外ではネットは使えない。最近は、韓国ドラマが韓国とほぼ同時に北朝鮮に流入すると言われているが、DVDという形で持ち込まれており、外部世界から遮断されている。フェイスブックもツイッターも使えない。携帯は普及し、ショートメッセージも可能だが、プリペイド式でネット接続はできない。

 

    2つめは徹底した思想教育だろう。労働者は火曜、水曜、金曜、土曜日が学習の日になっている。毎日2時間みっちり党の機関紙である労働新聞などを読まされ、自己批判などが行われる。毎年正月に労働新聞などが掲載する、その年の方針を定めた長文の「新年社説」は完全暗記させられるという。金総書記と父親の故金日成主席は、神格化されている。その存在を否定する人間は、即、収容所送りだ。収容所には4種類あって、金総書記は「社会の風紀を乱すものには1年間に10年分の労働をさせよ」と指示したとされており、過酷な労働が強いられる。

 

    3つめは徹底した相互監視システムだろう。北朝鮮の住民は労働党、国家安全保衛部、人民保安省、職場、人民班(隣組)の5つの組織から監視を受けている。「人民班」(20~40世帯で構成)の下では5戸が1組になっており、1種の共同体を構成している。反体制運動を起こしたくても、人民は孤立化させられている。同じ志を持っている人を探すのは大変で、民主化要求のためのしっかりした運動体を形成するのは困難だ。

 

    最後は北朝鮮軍の位置付けだ。エジプトやリビアでは、土壇場になって軍が民衆の側に着いたとされ、権力者を追い詰めた。北朝鮮では軍は特権階級で、食糧の配給でも優遇されている。長い間金総書記の権力を支えてきた。兵力は110万人で、全人口の5%を占める。「常に米国との戦争に備えよ」と教育され、緊張させられている軍人たちが、自分たちの特権を放棄して率先して体制崩壊に協力するか。それは今のところあり得ないシナリオだ。

 

    隣国・中国の場合、ネットは一般家庭に普及し、携帯は農村でも使われている。散発的にせよ反政府デモが起きる可能性はあるが、北朝鮮では難しい。

 

    北朝鮮から脱出したいわゆる脱北者は、すでに2万人を超えている。しかし韓国は、北朝鮮を刺激することを避けるため、韓国内での反北朝鮮運動を意図的に抑えてきた面がある。

 

    李明博政権になって、緩くなっているが、それでも韓国内には北朝鮮に同情的なグループが多い。実際1000万人とみられている南北に分かれて住む離散家族の存在も大きいだろう。

 

    それならどうすればいいか。

 

    米国では、韓国系教会が中心になって、韓国に亡命した北朝鮮の人の中から優秀な人を米国に招き、リーダーに育てようとする動きが出ている。

 

    北朝鮮の内情を熟知し、行動力のあるリーダーを中心に、米国から北朝鮮の民主化を求める動きを組織的に拡大させようという狙いだ。民衆が金体制に反旗を翻す日はまだ先だろうが、機会はある。3男正恩への権力世襲がスムーズに進まず、経済がさらに混乱した時だ。世襲失敗の兆候は見え始めている。