北朝鮮の非常事態と米国の役割② 連載50回目 緊急事態の論議の歴史(米政策研究機関「外交評議会」レポートその2) 五味洋治 (2011.1.17) 米国と韓国は、北朝鮮が崩壊したも同然の状態であった1990年代に、北朝鮮の不安定化を含むさまざまな事態について検討し始めた。 これらの協議は、軍同士の連携を改善することを目的としており、政治や民間に関する共同協議はほとんど行われなかった。 2005年に米国が韓国に、北朝鮮の不安定化のさまざまな原因に対処する以前の共同概念計画(CONPLAN5029)http://www.globalsecurity.org/military/ops/oplan-5029.htm を更新し、より詳細で具体的な作戦計画(OPLAN)に変えるよう要求したとき、北朝鮮の反感を招き、危機発生時に韓国の主権を制限するのではないかという懸念から、この構想は拒絶された。 日本も1990年代に、北朝鮮が突然崩壊する可能性に備える計画を練ったが、日本の平和憲法のため、米国との共同計画と連携の範囲が制限された。韓国との間には、歴史的問題や政治的な摩擦があるために、米国、韓国、日本の本格的な共同協議が妨げられた。中国も拒否している。 今後の北朝鮮について考えられるシナリオは大きく分けて以下の通りになる。 (実際には、金正日総書記の3男が権力継承者に確定しているが、2009年の段階の分析なので、その部分がない。 ただし、権力継承の過程で軍が西海で挑発行為を行うとしており、この見方は2010年11月の延坪島への砲撃で裏付けられた‐筆者注) 権力継承の成功 金正日の妹の夫である張成沢、金正日の現在の夫人・配偶者である金玉、最高人民会議常任委員会委員長である金永南のうち、いずれか1人または複数が関係する暫定制度のほうが可能性が高いと指摘する声も聞かれる。 張は、兄弟が平壌軍管区の部隊長を務めるなど、警察および軍と家族ぐるみの関係を持つ。この権力継承の成功シナリオのバリエーションとして、実質的に国を運営している国防委員会(NDC)の幹部を含む正式な集団指導体制が出現することが挙げ られる。NDCは、いくつかの理由で集団指導体制の基盤になるものと見られる。 権力争いを伴う権力継承 金正日の権力継承によって混乱が生じ、特定の個人の権力争いや権力を求める摩擦が起こりかねない。一部の候補者が自分を正当な後継者と見なし、唯一の指名された後継者は正式に認められないと考えるかもしれない。ベトナム式である。 金一族の銀行預金口座へのアクセスを含め、権力争いで支持を取りつけ、貴重な資源を獲得するための国内外の資金源は言うまでもなく、関係する個人の指導力、個人的な人脈、組織的能力にかかっている。驚くほどのことではないが、軍、そしておそらく北朝鮮の諜報機関である国家安全保衛部(SSD)の支持を受けることは、権力争いの結果にとってきわめて重要と考えられる。中国に近くなるだろう。逆に、国家統制が厳格かつ抑圧的になり、国際協調がさらに影を潜めることにより、反対方向に進む可能性もある。 権力継承の失敗 何らかの理由で、後継者の準備が最終的に失敗し、広範な支持基盤を持つ統治体制が生まれる。1989年に東欧の大部分の国で起こった政治権力の崩壊と同じような状況が起こるかもしれない。しかし、東欧とは異なり、平壌からの命令と統制が失われると、根底から広範に崩壊することにつながり、深刻な人道的結果を招く恐れがある。 権力継承の途中で軍が暴発も 北朝鮮軍が権力継承シナリオの進行中に警戒を高める可能性があり、危険な紛争や相互作用が起こるリスクが必然的に高まる。 そのような紛争の長い歴史から、この問題の深刻さが立証されている。北朝鮮で軍の異なる支持基盤を持つ対抗する派閥が絡む権力争いが起こると、国内の政治的支持を築くために、国境紛争を起こす可能性もある。 それらの紛争は、おそらく、南北朝鮮が主権を主張する地域を巡って以前にも衝突した非武装中立地帯 (DMZ)か西海で起こるだろう。最後は、北朝鮮軍が敗北、失望、自暴自棄などにより全面的に離反する可能性である。 大量破壊兵器への懸念解消 軍の結束が低下し始めたら、北朝鮮国外への大量破壊兵器、原料、技術の流出を防ぐことが緊急優先事項となるだろう。近隣諸国はそのような流出を防ぐことで利害関係を共有するが、大量破壊兵器を安全な状態に確保するための軍事行動の必要性と実施を巡っては、依然として重大な意見の相違が生じかねない。 |