香港の雑誌が伝えた中国の本音 五味洋治 (2010.12.24) 香港で発行されている雑誌は、見えにくい中国政府の内情をすっぱ抜いて見せてくれることがある。 十一月二十三日に行われた北朝鮮による韓国・延坪島への無茶な砲撃事件に、中国がどう対応したのかについても、やはりレポートしていた。 それは「争鳴」という月刊誌の十二月号である。 「京城耳話」というコーナー、日本語に直せば「北京で耳にした話」とでもなるだろうか。そこに掲載された談辛という人の手になる「北朝鮮の挑発の意図は何か」というタイトルの記事である。 それによれば、中国は、北朝鮮が砲撃を行った日の午後五時に、「中央外交工作領導小組会議」を招集していたという。事件は午後二時半過ぎに起きたので、かなり迅速な対応である。 この会議は「小組」という名前こそついているが、中国政府の外交を決めるトップの会議だ。胡錦濤国家主席や恩家宝首相、次期トップの座を確実にした習近平副主席らが参加する。 「争鳴」によれば、会議で中国政府は五つの点を確認した。 ①在北京の北朝鮮大使に事件に関する事実を確認する②外交上、北朝鮮と韓国双方に自制を求める③この事件は外交上、宣伝上、国際関係上、事態が悪化する可能性がある④米国が今回の事件を利用して緊張の雰囲気を作り出し、政治経済上、中国に厳しい状況を作り出すことを警戒する必要がある⑤各方面に、会議を通じて争いの解決を目指すよう建議するーだという。 中国は、砲撃事件後、同盟関係にある北朝鮮に圧力を掛けるよう求められ、「6カ国協議の首席代表者会合を緊急に開こう」と韓国をはじめとする関係国に呼びかけた。 これは小組の合意事項の五番目を実行に移したということだろう。 間違いなく、一番目と二番目も実行に移されたはずだ。事件後、中国の戴秉国国務委員(副首相級)が韓国と北朝鮮を訪問している。 注目すべきは四番目だ。砲撃事件に対して中国の指導部は、「米国を警戒すべきだ」と意見が一致したというのだ。つまり、今回だけではない。北朝鮮が核やミサイルで乱暴をするたびに、中国の視線は遠く米国の動向に向けられている。 本当に中国指導部が五点を決めたのか確証はないものの、香港の雑誌の情報力 からして、信じて良いと思う。 そこで、もう一度この五点を読んでいただきたい。北朝鮮の大使に事実確認を行うとしている。 つまり中国にとっても寝耳に水の事件だったに違いない。 ところが、決定事項の中には、北朝鮮批判は一文字もない。北朝鮮の行動に対して、中国はいさめるとか抑えようなんてことは、はじめから考えていないのだ。 民間の情報漏洩サイト、ウィキリークスが公開した米国の機密公電を見ると、中国は、言うことを聞かない北朝鮮に手を焼き、「韓国の主導で統一してもらっても構わない」と考えている節がみえる。 ただし、それは中国の外交官個人のレベルに留まっているのかもしれない。 そんなに煩わしく思っても北朝鮮を切れないのは、やはり米国の存在だろう。 米国は、仮に南北朝鮮が統一されても、在韓米軍を現在の北朝鮮領土に配置する考えはないと関係国に語っているという。 そんなことをしたら、中国との間に緊張が生まれ、朝鮮半島の冷戦構造をさらに深刻なものにしてしまうからだが、中国は信じていない。国を護るためには、相手を信じず、絶対に譲歩しない。それが、長年侵略されてきた、彼らのやり方だ。 暴れ者の北朝鮮は、米国の干渉を招く危険性もあるが、国際社会での中国の存在感を高める可能性もある。核を保有しているだろうが、暴発さえしなければいい。北朝鮮は、米国の視線を中国から遠ざけるためむしろ役に立つ。中国は、そう計算しているに違いない。 それゆえ、何があろうと北朝鮮への政治的、物理的支援を、今後も継続していくだろう。 |