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米国NGOの支援 歴史と狙い④
連載40回目 突然の中断、撤去要請

五味洋治
(2010.10.12)

 

    中国の北朝鮮への食糧支援の不透明さは、マーカス・ノーランドという米国の有名な経済学者も自分の本の中で、指摘している。

 

    この本は2009年に「北朝鮮 飢餓の政治経済学」(中央公論新社)というタイトルで邦訳された。米国の学者は国際的なデータを活用して、北朝鮮を分析しており、非常に示唆に富んでい る。

 

    「北朝鮮が中国から食糧を輸入した場合条件は緩かった」「中国は北朝鮮が穀物を軍などに供給することになんの制約もないようだった」と記述されている。さらにノーランドは中朝間の貿易が、中国の大幅赤字となっていることについて「中国はそれを海外援助か、補助金と見なしているよう だ」(232p)と指摘している。

 

    どんなに他国が制裁を強めても、中国が抜け穴になってしまうということだ。

 

    中国という食糧の安全なルートがある北朝鮮は、米国のNGOからの支援に頼り切らなくていい。

 

    その証拠に、2009年、北朝鮮は米国からの人道的食糧支援を突然拒否したことがある。

 

    この通知は、ロバート・ウッド国務省報道官が会見で発表した。「北朝鮮が、現状況で追加の食糧支援を拒否する考えを伝えてきた」と語ったことで分かった。

 

    ウッド報道官は、「食糧支援計画は、苦しむ北朝鮮住民のためであり、(北朝鮮の拒否は)非常に残念だ。北朝鮮に対する人道的支援は、北朝鮮住民に 対する人道的関心によるものだ」と述べた。また、「現在、北朝鮮の食料事情は思わしくなく、住民が食糧支援を願うことは明白だという点で憂慮され る」とも述べた。

 

    米国は、ブッシュ政権時代の2008年6月、北朝鮮が核計画の申告書を提出し、平安北道の寧辺核原子炉の冷却塔を爆破するなど、核施設の無力化作業に積極的に乗り出したことを機に、1500万ドルの予算を策定し、食糧支援を再開した経緯がある。

 

    食糧分配の透明性が保障されないという理由で、2005年に食糧支援を中断して以来、3年ぶりの再開だった。

 

    国務省は、北朝鮮の拒否理由を明らかにしなかったが、ミサイル発射をめぐる緊張の高まりや、韓米合同軍事演習「キー・リゾルブ」の実施など、現在の情勢と何らかの関係があるというのが、大方の見方だった。つまり、政治的におもしろくないことがあれば、人道支援であれ、断ってくる。それが北朝鮮のやり方だ。

 

    米国が、食糧分配の監視強化や、韓国語ができる要員の増員を求められた北朝鮮側が「人道主義的支援を口実に、各地を見回り、偵察しようという考えだ」と不満を抱いていたとも言われた。

 

    さらに北朝鮮は、この支援拒否の後、NGOの要員についても、北朝鮮からの退去
を求めてきた。

 

    国際救援団体「マーシー・コープス(Mercy Corps)」のジョイ・ポルテラ氏も、米政府の発表を受けて「北朝鮮が、マーシー・コープスを含む5団体に北朝鮮を退去するよう通知した」ことを明らか にした。しかし実際は、その後も米国NGOは北朝鮮に残り、支援を細々と続けていたようである。

 

    米国のNGOにとって、気むずかしい北朝鮮とつきあう事は骨の折れる仕事である。

 

連載39回目 飢餓の専門家

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