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来年6カ国協議が再開される?
五味洋治
(2010.9.3)

 

    休眠していた北朝鮮核問題の6カ国協議がわずかだが動き始めた。議長国の中国が、8月に訪中した北朝鮮の金正日総書記から、「協議の早期再開を望む」との言質を引き出したためだ。これをきっかけに中国は関係国に早期開催を呼びかけている。

 

    中国は予備会議の開始を含め、段階的な再開を目論んでいるようだ。この協議は、すでに2年近く休眠しており、その間、北朝鮮は国際社会の反発をよそに核実験やミサイル発射などを強行している。それだけに「協議はとても多くの困難に直面している」(武大偉・北朝鮮半島問題特別代表)と、まだ具体的な再開のめどは立っていない。

 

    再開されたところで、協議の本質は変化しており、どれだけの成果がえられるか。「北朝鮮に核を放棄させる」という当初の目的が少しでも進展するのかはなはだ心許ない。ただ、時期的に見て、北朝鮮の不安定化を望んでいないのは、中国、米国、韓国、日本も同じであり、6カ国協議は再開されるかもしれない。その時期は早ければ、来年の年明け早々と思われる。それは、米国が中間選挙を終え、一応政治的に安定するためだ。

 

    米国は今のところ、北朝鮮の挑発を無視する「戦略的忍耐」作戦を取っているが、これを弱腰だと批判するグループもいる。たとえば、米シンクタンクの外交問題評議会は今年6月15日、北朝鮮に核開発放棄を迫る強力な政策遂行がオバマ政権には必要とするリポートを公表した。この中で、オバマ大統領の北朝鮮への取り組みを「弱腰」で核開発の黙認に等しいと批判している。

 

    その上で、北朝鮮の核兵器技術や核物質の移送阻止に向けた監視強化、核拡散や核物質の移送に対する米国の直接報復措置、軍事目的にも利用できる物資の輸出規制の強化、北朝鮮の核およびミサイル技術の輸出制限へ国連安保理決議の厳格な執行――などを求めた。

 

    一方で政権内外には、「圧力だけでは北朝鮮は動かない」として対話を求める声も上がっている。

 

    これを伝えたのは、ニューヨークタイムズ紙の8月27日の報道だ。オバマ政権は、断固とした態度をとりながらも、北朝鮮に関与(engagement)または介入、包容する「新しい試み」にも重きを置き始めたと伝えた。

 

    同紙は、クリントン米国務長官が招集した「対北朝鮮政策評価会議」に出席した国務省幹部や外交専門家たちの言葉を引用ながら、米国が金総書記との接触を再開しなくてはならないという点について強硬派たちが同意を示したと報じた。

 

    一方、クリントン長官は、哨戒艦事件をめぐる厳格な経済制裁と米韓合同軍事演習等の現在の対北朝鮮強硬政策について「圧力だけでは北朝鮮を動かすのに十分ではない」という結論を下したという。

 

    ただ、現政府の国家安全保障会議(NSC)アジア担当補佐官ジェフリー・ベーダー氏は「我々は既存の方式を変えたくはない、過去の経験を繰り返さないことを望む」として、慎重な姿勢を崩さなかったという。
 確かに、この報道が出た直後の8月30日、米政府は北朝鮮による武器や贅沢品の取引、麻薬密輸への関与が疑われる団体や個人に対し、在米資産凍結などを可能にする新たな大統領令に署名している。

 

    金正日総書記の秘密資金に狙いを絞った金融制裁であり、北朝鮮が反発するのは間違いなさそうだ。

    世論調査機関ギャラップによれば、米国では先月末時点で、民主党の支持率は41%、共和党は51%だった。この10ポイントの差は、中間選挙の年の共和党のリードとしては1942年の調査開始以来最大だという。

 

    このままでは中間選挙で敗北が避けられないオバマ政権は、外交交渉で目に見える大きな成果がほしい。しかし、たとえ6カ国協議に応じたところで、短期間で成果は得られない。それなら、従来通り、「戦略的忍耐」を続け、独自の金融制裁を科した方が国民の理解を得られやすいと計算しているようだ。

 

    むしろ、オバマ氏は中東和平に力を入れている。こちらは9月1日にワシントンにイスラエルとパレスチナ暫定政府の首相が来てくれ、曲がりなりにも直接対話をしてくれたから、オバマ政権としてもアピールもしやすい。

 

    しかし米国は中間選挙後は、6カ国協議に応じる可能性が高いと私は見ている。それは米国というより、日韓の事情によるものが大きい。

 

    日本は、日本人拉致問題が風化しないためにも、北朝鮮との対話の窓口がほしい。韓国は韓国軍哨戒艦沈没事件で、北朝鮮からの謝罪を求めており、簡単には協議再開に応じない姿勢だが、11月にはソウルで主要20カ国・地域(G20)首脳会議が開かれる。世界の目が韓国に注がれることになる。今は南北関係に波風を立てたくないのが本音だ。6カ国協議が安全弁になるなら、名分を見つけて応じるだろう。

 

    それでめでたし、めでたしだろうか。

    私はそうは思わない。私は最近出版した『中国は北朝鮮を止められるか』(晩聲社)の中で、中国の対北朝鮮政策の特色を3つに分類した。それは

 1.米国が動くと中国も動き始める。北朝鮮半島での米国の勢力拡張を許さない。
2.北朝鮮の延命には経済開放しかないと考え、継続して呼びかけていく。経済を通じて影響力を発揮する。
3.状況に応じて中朝間の距離を調整する――である。

 

    1番目の法則が、今回の6カ国協議再開の動きに当てはまる。たぶん中国は米国が動き出す気配を感じ、8月に金総書記を中国に招き、親密な関係を演出した。金総書記の訪中は、今年2回目、1年に2回の訪中は過去に例がない。

 

    朝鮮半島における中国と米国の利害は一致しているようで、微妙にずれている。米国が「北東アジアでの戦争回避」に重点を置いているのに対し、中国は「現状維持」が原則である。中国に北朝鮮問題を任せきりにしてはいけない。6カ国協議が再開されたとしても、大きな進展は望めないし、ただの時間稼ぎに終わるだろう。そのことを関係国はよく認識し、中国に対しより積極的な役割を求めていくべきだ。