朝鮮高校生授業料援助に強く反対する(下) 対談 洪熒・佐藤勝巳 (2010.8.30) 破防法上の監視団体 佐藤 総聯は「民族学校」の学生たちを、「朝青」、「留学同」などに組織し、政治行事に動員しています。「民族的」対立を煽り立て、暴力と無理押しを正当化する行動の先頭に立てています。総聯とその構成員は数多くの違法活動を繰り返していますが、この学校はそれが問題になると決まって生徒に「民族弾圧」だと「教育」し、実践させています。 総聯が自慢する「朝鮮大学校」は、海外では唯一の「首領様(金正日)の革命戦士」を養成する教育機関ですが、朝鮮高校生はこの朝鮮大学校への進学を準備する下部の教育機関です。「首領様の革命戦士」(朝鮮大学校出身者)が、高校生の指導に当たっていることは言うまでもありません。 「首領様の革命戦士」を養成する教育機関を、日本はどうして国内に存在させているのか。いや、なぜ国内に朝鮮労働党の存在を許しているのか。総聯も朝鮮学校も破防法の監視対象なのですが、政府には、国家主権が侵害されているという自覚が全くありません。雑誌「現代コリア」は1990年代後半から朝鮮信用組合の実態を暴露し、「朝銀」への公的資金投入に反対し続けてきました。しかし、自民党政権は耳を貸しませんでした。耳を貸したのは、2006年の安倍晋三政権からです。 洪 朝総聯側は、いわゆる「民族教育権」についての根拠として、世界人権宣言(第2条、26条)や国際人権規約(A規約第13条)、甚だしくは日本国憲法(26条)や教育基本法(3条)まで動員しています。自分たちが拒否し、戦い、破壊しようとする「敵」の価値や法体系に保護を求める自己矛盾と欺瞞を平然と行なっています。 北の人権状況、脱北者、特に数万円で中国各地へ人身売買される朝鮮の女性や拉致被害者の問題に目をむけず、なぜ「世界人権宣言」とか「日本国憲法」など云々出来るのか。朝総聯は日本に対して「権利」を要求する前に、北の同族の人権、北へ帰還した身内の人権のために金正日に立ち向かうべきではないでしょうか。 佐藤 彼らは「敵の武器を奪って敵を倒す」というパルチザン(ゲリラ)戦法のつもりで「世界人権宣言」などと言っているのでしょうが、いくらなんでも民主党は北の核開発を容認するとか、 拉致問題をいい加減に取り扱うことは、もう出来ません。一番大きな変化は、金正日政権が貧乏になって、日本の政治家を買収できなくなったことです。金正日政権に対する経済制裁の効果はこの面からも評価できます。 洪 それにしても日本には言論の自由があるのに、どうして朝鮮労働党が日本国内で活動している事実を報道しないのか、日本社会の常識と民主主義の質が気になります。 思考能力、対応能力の劣化 佐藤 労働党の活動を云々する以前に、報道側には大きな問題があります。それは各種学校への授業料支援についてです。総聯の「民族学校」は「各種学校」で、しかも、法的に教員資格の無い教師がほとんどです。日本の中には2010年5月1日現在、各種学校は1467校あります(文部科学省専修学校教育振興室を取材)が、朝鮮学校以外の各種学校で授業料支援が問題になっているところは皆無です。もし政府が支援を決定したら、法の前の平等が崩れてしまいます。ところが取材記者たちは、逆差別が生まれることを政府が率先してやろうとしているのはなぜなのかという疑問も、問題意識も持っていません。だから朝鮮労働党が日本国内で活動している、などとは夢にも思っていないのではないか。この国はあらゆる分野に劣化が起きています。 観念的な歴史認識 佐藤 金正日政権が日本人を拉致したことは、2002年金正日自身が認めて以来世界中が知っています。また金正日は2006年と2009年に原爆実験を行い、これも全世界が知っています。核・ミサイルの向く先が韓国と日本であることを金正日は隠していません。この事実を民主党政権が知らなかった、いや知ろうとしていなかったから、米軍基地を沖縄県外に移設するという、とんでもないことを鳩山前首相が言い出したのです。 沖縄の米軍基地は金正日政権と中国共産党政権などへの抑止力として存在するものです。菅直人氏は鳩山内閣の副総理、官房長官の仙谷氏は閣僚でした。鳩山氏と思想的に違うはずがありません。普天間基地移設問題、今回の菅首相談話、朝鮮高校生への授業料支援問題は民主党政権の「贖罪意識」に基づく、観念的歴史認識から出てきた誤った政策なのです。 あの「談話」の中で日韓の未来志向に言及した箇所がありますが、金正日は今年の3月韓国の哨戒艦を撃沈し、さらに韓国に戦争をしかける、7月24日には核兵器の使用まで口にしています。それに菅談話は一言も触れていません。なぜか。植民地支配に対して「贖罪」し、金正日に「謝罪」しているから言及することすらも出来ないのです。あの談話は本当に国を滅ぼす歴史認識に裏打ちされている危険極まりないものです。 深刻なのは、この亡国の歴史観は民主党だけのものではなく、朝日新聞、岩波書店、社民党、共産党、連合などの労働組合、高級公務員、自民党の一部にも存在していることです。治らない病気を宿痾(しゅくあ)と呼びますが、正しくそれです。亡国を回避するために、非科学的な「贖罪意識」と目的意識的に戦う必要があります。 義憤も公憤もビジョンもない日本社会 佐藤 また、菅総理は「談話」の中で日本人が拉致されたことに一言も触れていません。主権や人権を侵害されているのに、民主党政権には侵害されたという自覚も憤りもなく、侵害している集団に国民の税金で援助するというのだから呆れます。今回の政権交代によって朝鮮問題の質は、1990年9月、20年前の金丸訪朝時代に戻ったという印象は拭いきれません。 「菅談話」は、核武装に狂奔している北の独裁体制に対し、日本の安全、民主主義による統一、非核化を断固求めるべきです。拉致の奪還にも触れず、「謝罪」などの繰り言を続ける日本政府は、世界中から馬鹿にされるのが落ちです。 北を植民地から解放 洪 「菅談話」が植民地支配を本当に「反省」するなら、反省の上で未来に向けて何をなすべきかを表明されたらよかったという気がします。現に、北は100年前日本の植民地になり、65年前(1945年)恐怖のスターリン主義が移植され、南北が分断された。北の人民は今100年前よりも悲惨な状況に置かれています。つまり北はこの100年間ずっと植民地状態が継続されてきたのです。 これは事実です。「民主主義や自由、市場経済といった価値を共有する最も重要な緊密な隣国同士」(菅談話)と本当に思うなら、北を植民地から解放することが談話の中心課題にならなければ、論理的にも現実的にも「緊密な関係」の中身が虚しく聞こえます。 韓日両国の指導者に求められるものは、未来に向けての安全と希望へのビジョンです。 アジアに自由と民主主義の実現を 佐藤 この100年間、日本も韓国も自由民主主義国家に生まれ変わりました。日韓はもうそれ以前の体制に戻ることは不可能です。日韓両国の前に自由と民主主義を脅かす勢力が現われれば、「東アジア共同体」などという観念論ではなく、両国はその脅威と具体的に戦い、北だけではなく、自由を望む大勢のアジアの人々に自由を保障するために、力を合わせねばならないと思います。 ▼菅首相は、8月27日朝鮮高校授業料支援問題を先送りし、党の政調会に検討しなおすよう指示したという(産経新聞8月28日付)。 朝鮮高校への授業料援助に強く反対する(上) |