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アメリカの2010年度国防報告書(QDR)と韓米同盟
~韓国民が望むことは防衛でなく戦争の抑止(deterrence)だ~
李春根
(2010.3.12)

 

 

    東西冷戦が終息して数年が経った1997年、米議会は国防部が毎4年ごと国防政策に関する報告書(Quadrennial Defense Review Report、略称QDR)を作成して議会に提出させる法案を制定した。

 

    これによって米国防部は1997年からQDRを作成して2001年、2006年そして今年2月に4回目のQDRを発表した。QDRとは文字通り「4年周期の国防報告書」だが、QDRの内容は必ずしも今後4年間だけの国防政策を記述するものではない。より長期的なアメリカの国防目標が記述されることもあり、2001年の「9.11」直後のQDRのように国防政策の緊急な考慮事項が包含されることもある。

 

 

    今年2月1日刊行された第4次QDRは、ブッシュ大統領および共和党行政府によって進められてきたアメリカの反テロ戦争政策とは立場の異なるオバマ行政府が出帆してから刊行された国家安保関連の最初の公式報告書という点で意義がある。専門家たちは今まで言論に公開されたオバマ大統領および高位官僚たちの言及に根拠してオバマ行政府の国家安保政策を分析してきたが、この2月1日のQDRが刊行されたことでわれわれはオバマ行政府の公式的な国家安保と国防政策の基調が分かるようになった。

 

    今回のQDRは、アメリカが今戦争中である事実を明確にし、この戦争で勝利することが米国防政策の最優先目標であると表明している。アフガンとイラクで進行中の戦争で勝利するという目標とともに、アメリカは世界の他の重要な地域でも安定を維持し助けが必要な国々を支援し、地球次元の共同善(common good)のため努力することを闡明している。

 

    米国防部は、現国際状況が非常に複雑である事実を強調し、特に中国とインドの浮上は未来を一層複雑にするはずだと予想する。特異なことは、中国を世界で最も人口の多い国(world's most populous county)と中立的に表現した反面、インドは世界で一番大きな民主国家(the world's largest democracy)と友好的な意味で表現しているという点だ。

 

    アメリカは変化する世界で最も強力な国家として残るし、世界の安定と平和のため核心的な同盟国らとの協力をより一層増進させねばならないと話している。世界化や技術拡散を通じて、国家でない行為者(non‐state actor)、例えばアルカイダのようなテロ組織が持続的に影響力を及ぼすと判断しこれに対処していくと語る。

 

    同報告書は、大量破壊武器の拡散に対して憂慮し、特に大量破壊武器を保有した国家が不安定状況に陥る場合、あるいは崩壊することを憂慮すると表明している。大量破壊武器を保有した国家が崩壊する場合、大量破壊武器製造用の物質と技術の急速な拡散が惹起され得るが、これはアメリカやその他の国家の安保に直接的な危害になり得ると分析する。国内的に不安定で崩壊危機に処している大量破壊武器保有国がどの国なのかを明示しはいないが、北韓も対象国の一つであると推定できるし、アメリカの立場と行動が類推できるだろう。

 

    同報告書は、その他にも希少資源による国際的葛藤、環境変化、新しい疾病の拡散、地域間の人種や言語葛藤問題も米国防政策の考慮事項になると主張している。アメリカはこのような安保状況に対処するため他国とは比較できない強大な軍事力を維持し、遠い地域で長期的かつ大規模な戦争を遂行できる唯一の国として残ることを約束する。QDR 2010報告書は、アメリカの軍事力が最強の位置で変化した安保環境に対応するため必要な兵力構造を詳細に説明している。

 

    私たちの主要関心は、オバマ行政府の最初の公式国家安保戦略文書である2010年度QDRが韓国に対してはどう言及しているかであろう。本文が全105ペ‐ジに達する2010年度QDRで韓国と北韓関連言及はそれほど多くない。北韓に関する文章が三回出るが、北韓がイランと共に国際社会の規範を破ってミサイルと核兵器の開発に拍車を加えているという言及と、アメリカはイランと北韓など戦略的に重要な地域で戦争が発生しないように事前に紛争を防止し抑止する努力を続けるという言及のみだ。   

 

    韓国に関しては4回触れているが、二回は駐韓米軍と関連した言及であり、残りの二回は韓米同盟と関連した言及だ。駐韓米軍の地位と関連した部分は、

 

    「駐韓米軍の地位(status)は、前方配置軍(forward deployed)から家族を伴う前方駐屯軍(forward stationed)に変わるだろう.... 駐韓米軍を、家族を伴う駐留兵力に正常化(normalize)すれば、ほぼ5,000人の軍人および軍人家族が韓国に前方駐留することになる」となっている。

 

    アメリカは、今まで駐韓米軍を戦闘のため前方配置(forward deployed)されている軍事力と看做したが、これから駐韓米軍は前方駐留(forward stationed)兵力に変えようとする。つまり、駐韓米軍は他の地域で勃発した戦闘任務遂行のため派兵でき、他の地域での戦闘任務が終了してから韓国に戻って駐留する米軍に変化するという点だ。駐屯軍である駐韓米軍の勤務期間も現在の1年から3年に増え、家族を伴う軍隊に変えるということだ。

 

    盧武鉉政権は、駐韓米軍が他地域へ派遣されるということは韓国が紛争の当事国になるという理由で積極的に反対したが、これは21世紀の変化した国際状況を全く無視した要求だった。韓半島に駐留する米軍は専ら韓半島内の紛争にだけ備えて駐留しろとの要求は、結局駐韓米軍の撤収を促進することになったはずだ。

 

    盧武鉉政権は、駐韓米軍が戦略的柔軟性を持つようになる場合、アメリカが台湾問題などで中国と葛藤を起こすかあるいは戦争に陥った場合、駐韓米軍が動員される可能性が多く、その時米軍に基地を提供する韓国は中国と敵国になって戦わねばならないかも知れないという論理を提示して駐韓米軍の戦略的柔軟性に反対した。

 

    アメリカと中国が戦争する状況でも韓国が中立を守れるという発想そのものが国際政治学の基礎を無視したものだった。米国と中国が軍事衝突するならそれは事実上第3次世界大戦を意味し、その場合地政学的に極めて重要な位置にある韓国は中立を守る道がないはずだ。

 

    駐韓米軍の地位変化は、2009年の李明博‐オバマ大統領の首脳会談当時、韓米両国は韓米同盟を21世紀型の戦略同盟に拡大発展させるという約束ですでに公式的に包含されたものだった。

 

    だが、QDR 2010は、2012年と約束されている戦時作戦統制権の転換時期の延期を求める韓国国民多数の意思を反映はしていない。韓半島の安保環境が悪化することを憂慮する900万人以上の韓国民が、戦時作戦統制権の転換時期の延期を嘆願する文書に署名したが、QDR 2010は韓国の領土を共に防御するにあたって韓国軍が主導的な役割を担当せねばならず、2012年に戦時作戦統制権は韓国軍へ転換される事実を明確に言及している。

 

    戦時作戦統制権の転換と韓米連合軍司令部の解体は、盧武鉉政権が望んだものであり、韓国で戦争が勃発すれば自動的かつ無条件参戦せねばならない責任を免除されるアメリカが内心嬉しい気持ちで応じたものだった。米国は言葉では共に韓半島を護る(combined defense)というが、韓国国民が望むことは防衛でなく戦争の抑止(deterrence)だ。戦争が勃発すればわれわれも北韓を撃退はできる。だが、数百万人の韓民族が死んだ後の勝利が何の意味があるのか?

 

    北韓の戦争挑発野心を「抑止」するためには北韓がとうてい敵わない確実な抑止力が必要だ。既往の「韓米連合軍司令部」体制は、それこそ強大な戦争抑止策だった。同盟理論を研究した学者たちは、最も確実な同盟は同盟国の軍事力が一つの指揮体系に統合されている場合である事実を究明した。

 

    盧武鉉政府は確実な戦争抑止の装置を破壊し、安保と平和を憂慮する多くの国民は韓米連合の戦争抑止装置を当分の間でももっと持続させるため苦労してしる状況だ。(2月26日作成)

 

    *この文は「未来韓国」2010年3月第2号の「李春根博士の戦略話」に寄稿したものです

 

    http://blog.naver.com/choonkunlee 2010.03.06 14:52