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書評;アジア三国志
~Bill Emmott, Rivals: How the Power Struggle Between China,India and Japan will Shape Our Next Decade  New York:Harcourt,2009.~
李春根
(2010.3.1)

  

    アメリカは衰退し、アジアが浮上するという主張の論理的矛盾

    21世紀が始まった以後国際政治の一般常識のようになった言及がいくつかある。その中でも最も重要な言及は、「21世紀はアジアの世紀」になるという話だ。これはより具体的に、「もはやアメリカは衰退しており、アジアが浮上している」といわれている。

    なぜアジアは浮上して反面アメリカは衰退しているのかに対する多様な説明が提示されてりる。その中には地球の文明、産業、さらに国際政治と軍事力の中心地は、東から西へ移動したという説明がある。ギリシャが世界の中心地だったが、世界の中心はギリシャより西側にあるローマに移動し、ローマの覇権はまた西へ移動して英国を始めフランス、ドイツなどが世界の核心地域になり、西ヨーロッパの覇権はまたより西にある北米へ移動したということだ。北米のアメリカが覇権を掌握していたが、今世界の覇権はまた西の方へ移動するはずで、その結果21世紀の覇権はアジアが取るようになるという説明だ。

 

    この主張は一般人はもちろん、歴史と政治に対する素養が相当なレベルの識者らの間でも広く受け入れられて真理のようになってしまった。だが、このような説明はその論理的構造が粗末極まりなく、21世紀の複雑多端な国際政治を説明するにはあまりにも不適切な言及と言わざるを得ない。

 

    まず、「アメリカ衰退し、アジアが浮上している」という文章自体が論理的に間違っている。衰退する対象は一国のアメリカなのに、浮上する対象は人口30億に肉迫し国の数も30ヶ国を超える大陸であるからだ。学術的かつ論理的な言及であり得るためには分析や比較の単位が同じでなければならない。

 

    「地球の力の中心が東から西へ移動した。だから、アメリカの次の世界中心はアジアだろう」という説明もやはり非論理的だ。ギリシャ→ローマ→西ヨーロッパ(英国)→北米(アメリカ)へと覇権が移動したというのが歴史的に正しい分析だと認める場合、覇権国の位置が地理的に西にあった国々というのは経験的な意味(empirical import)はある。しかし、西の方にある国がなぜ次の覇権国になったかを論理的に説明できる何の体系的な要因がない。単に西にあるという理由でアジアがアメリカの後を続いて世界の核心地域になるはずというのは正当な説明になれない。事実、覇権の中心が西へ移動したというのも正しい分析ではない。例として、モンゴルは13世紀の世界一の覇権国だったから、それでは世界の中心は東へ移動したこともあったと言わねばならない。

 

    アジアはライバル国家たちの集合体

    以上で提示した、21世紀はアシアの時代になるという主張らの問題点をより論理整然に分析した本が出版された。エコノミスト誌編集長出身のアジア専門家のビル・エムモトが著述した「ライバルたち(Rivals、日本語翻訳版は「アジア三国志」)」という本だ。この本の副題、「中国、インド、日本の勢力競争は今後10年の世界をどう変貌させるか」が示すように、この本はアジアは一つではないとの事実を前提としている。

 

    今流行る国際常識の「アメリカは衰退しアジアは浮上する。21世紀はアジアの世紀」という主張はただ一つの前提が充足される場合にのみ論理的に妥当な主張になる。その一つの前提とはアジア諸国の数十の国々は如何なる国際問題に当面する場合もアジアは一つとの認識、恰も一つの国のようにみな固く団結して共に行動するということだ。中国がアメリカと葛藤する場合、アジアの全ての国が中国の肩を持ち、日本がアメリカと葛藤する場合アジア全体が日本を支持し、インドがアメリカと競争する時アジアの全ての国家がインドを支持するのが確実なら、「アメリカの覇権が衰退してアジアが浮上している」と言っても何の無理がないだろう。「アジアの浮上」を「アメリカの衰退」と置き換える言い方は、アジア諸国は一つという荒唐無稽な仮定に基づくものだ。

 

    ビル・エムモトは、アジアの浮上がアジアとアメリカあるいは西洋との対決を意味するものではなく、アメリカあるいは西洋の力の中心がアジアへ移動するのを意味するものでもないと主張する。彼はさらに「アジアは一つではなく、アジア地域での急速な経済成長は政治的な側面ではむしろアジアの分裂を加速化させるかも知れない。アジアの急速な経済成長は、むしろアジアの人々同士が互いに顔を赤らめる事態を引き起こすだろう」と主張する。

 

    エムモトは、歴史上初めてアジアに3つの強大国が同時に存在する時点になったと主張するが、彼のいう3大強国とは中国、インド、日本だ。アジアは歴史的に一国が圧倒的な地位を持って他の国を支配した伝統を持っている。中国は去る1000年間アジアの圧倒的覇権国だった。1945年以後アジアの覇権はアメリカが占めていた。ところが、アメリカはもう冷戦時代のようにアジアに対して熱情的な政策を取らず、アメリカがアジアで占める力の比重も相対的に減った。

 

    アジアの3大国の日本、中国、インドは過去のように弱い国々でない。問題は力が強大になった中国、インド、日本の三国が、互いが好きで調和し共存できる国々でないということだ。アジアの3大国の中国、インド、日本は互いに好きどころか調和のとれた共存も難しいのが現実だ。結局、21世紀のアジアの姿は19世紀のヨーロッパの姿に似て来るかも知れないというのが著者の主張だ。19世紀のヨーロッパは強大国たちの葛藤と競争で特徴され、二度の世界大戦を通じて問題が整理された。

 

    国際政治体制は、覇権国がある場合は秩序と平和が維持されられる。圧倒的な力を保有し、その力を行使する意志のある国を覇権国と言えるが、アメリカが20世紀の覇権国だった。ところでアメリカはもうこれ以上アジアで覇権国の役割を担当しようとしない。すでにアジア強大国らが相互競争の勢力均衡の権力政治(balance-of-power politics)構図になりつつある。アジアの3大強国は、政治的な側面ではもちろん、経済的な面でも競争関係に陥っている。

 

    中国政府の支援を得る大企業らがヨーロッパやアメリカの企業を買収することが経済論理だけのものでないとの事例が現れている。アメリカの石油会社のユノコルを買おうとした中国の努力を米議会は政治的な論理で遮断したことがある。もし中国の国営企業が日本鉄鋼(Nippon Steel)を購買しようとしたら、あるいは中国の電子会社が日本の東芝を購入しようとしたら、その時日本はどう反応するだろうか? 日本がいくら経済的な沈滞で苦しんでも、中国がいくら経済的によい状況といっても、そういうことが起きる可能性は現在としては殆どない。中国と日本、インドは互いに競争者(Rival)たちであるためだ。

 

    アジアを一つの単位として言っているが、アジアを構成する国々は他の大陸よりはるかに多様だ。アジアはまず種族、人種的にあまりにも多様だ。言語も多様だ。インドの言語は系統的にはアジアでなくヨーロッパ的だ。アジアはまた宗教的にあまりにも多様だ。世界の四大宗教(キリスト教、イスラム教、仏教、ヒンズー教)が全部アジアに存在する。チンギスハンによって征服された短い時期を除けば、アジアを「一つ」の単位と捉えられた時期はなかった。エムモトは、アジアという概念がアジア人の大部分に何の意味もないと断言するほどだ。

 

    アジアで展開される地球的パワーゲーム:アメリカの覇権政策

    アジアの3大強国を地政学的に見ると、日本が一番東にあって中国が中に、インドは中国と国境に接した西南の方に位置している。中にある中国は東の日本とは19世紀末葉以後20世紀が終わるまで戦争と緊張の連続だった。中国とインドは現在も国境紛争中で、国境問題で1962年戦争までやったライバルだ。2004年以来日本の海外開発援助(ODA)の最大の受恵者がインドという事実に注目せねばならないだ。日本とインドが良い関係を維持するのは国際政治の鉄則である遠交近攻の原則に立った外交政策だ。インドと日本は互いに遠く離れているが相互提携、協力、さらに同盟を結ぶことで近くの脅威である中国に対応できるだろう。

 

    アジアで展開されるパワーゲームで最も注目すべき部分はアメリカの対アジア政策だ。中国の浮上でアメリカの地位が揺れるというが、アメリカは中国の浮上が齎す問題に対して軍事的、外交的に対応して久しい。アメリカは中国がアジアの覇権国になり、さらに中国が世界的次元でアメリカの覇権に挑戦するのを許さないはずだ。すでにアメリカは中国の覇権挑戦を遮断する各種措置を取っている。

 

    エムモトは、ジョージW.ブッシュ大統領が中国の覇権への挑戦を制御するためすでに卓越した戦略的代案を成功的に追求したと評価する。つまりブッシュ大統領は史上初めてインドとアメリカの関係を最も友好的な関係に変えた大統領となった。ブッシュ行政府は、去る数十年間中立・非同盟国家らの代表を自認しアメリカよりソ連にもっと友好的だったインドを、アメリカの友人にすることに成功した。インドのシン総理を国賓として招待し、ホワイトハウスでの盛大な歓迎行事やインドの核開発を支援することまでしたブッシュ大統領の親インド政策は、オバマによってそのまま踏襲されている。オバマは2009年11月中国を訪問した直後、インドの総理を米国に招請し盛大な晩餐を施しインドこそアメリカの最高のパートナーと褒め称えた。

 

    アメリカは、アジアが一つでないという事実を正確に理解しており、アジアの3大強国の一国だけでも確実にアメリカの同盟国として確保できたら、アメリカの世界覇権がアジアへ渡ることはないという事実をよく知っている。今まで当然であるほどアメリカの同盟国だった日本が、鳩山政権出帆後変わりつつある。アメリカも日本を以前のように見ていないようだ。昨今噴出しているトヨタ自動車のリコール事態は、単純な製品不良事件を超えて米日両国の不快な関係を反証すると見られる。

 

    アメリカの見えない手がアジアで作動している。アメリカはアジアやヨーロッパの伝統的な強大国らと違って地政学的に非常に有利な位置にある。アメリカは、ヨーロッパ大陸やアジア大陸から覇権国が出現するのは必ず防がねばならないという戦略的大原則を持っている。アジアとヨーロッパの強大国らが一つになれないという事実は、アメリカの対アジアおよび対ヨーロッパ戦略が常に成功的に作動できた根本条件になる。

 

    ビル・エムモトの「ライバルら(Rivals):中国、インド、日本の勢力競争は今後10年の世界をどう変貌させるか」は、21世紀にも覇権を持続しようとするアメリカがアジアに対してどういう戦略を駆使するかを分析する時必ず考慮せねばならない基礎資料を提供してくれる。(*この本の韓国語翻訳版はまだ出帆されていない)

 

    この書評は月刊朝鮮2010年3月号に掲載された。

 

    http://blog.naver.com/choonkunlee  2010.02.24 11:47