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これから100年の世界政治を展望する
*月刊朝鮮2010年1月号の書評に掲載された文です。
李春根
(2009.12.28)

 

    書名:The Next 100 Years:A Forecast for the 21st Century

    著者:George Friedman

 

    New York所在Doubleday出版社。 2009年刊行

 

    1900年を迎えたわれわれの先祖たちは、「20世紀」は人間の生活はもっと楽になり、また文明の発達によって進歩を重ねた武器の驚くべき殺傷力は、人間が戦争をこれ以上政治的な目的を達成するための手段として考えることができなくするはずだと思った。それで20世紀は平和の時代になると展望した。当時発明された機関銃の威力を前にして、戦争は想像もできないものだと思われた。だが、1900年が始まってわずか4年目の年に勃発した「日露戦争」は、このような楽観論をこなごなにした。暴雨のような機関銃の洗礼を受けながらも日本軍は躊躇せず突撃した。14年後勃発した第1次大戦では機関銃にびくともしない武器(戦車)が発明されて、戦争をまた機動戦へ戻し、第1次大戦が終わって20年ぶりの1939年、人間は二番目の世界大戦を起こした。第2次大戦中に人類文明を抹殺できる核兵器が発明され、発明されてわずか3週で、実戦で使われた。1900年を生きたわれわれの先祖たちの、20世紀の100年に対する予測は完全にはずれてしまった。当時誰も20世紀が人間歴史の最悪の戦争の世紀になるとは予想できなかった。

 

    2000年が始まる瞬間、地球上大部分の人類は、ちょうど1900年が始まる瞬間の人間たちがそうしたように未来に対して大きな楽観論に陥っていた。地球文明を全滅させるかも知れない米・ソ間の核戦争の脅威は消え、自由民主主義が共産主義・社会主義に対して最終勝利をおさめた結果を見て歴史は終わったと宣言した性急な学者もいるほどだった。しかし、21世紀の100年が平和の時代になるという幻想は、2001年9月11日に発生したテロ攻撃事件によって早々終わった。 もう21世紀が平和の時代になるか戦争の時代になるかを論じる人はほとんどいない。惨めな現実だが、21世紀もやはり戦争の時代になるということに大部分の人類は共感している。

 

    ところが、未来への予測をやめられない好奇心の多い人間たちは、21世紀の国際政治を主導する国がどの国なのかに対して絶えず議論を生み出している。様々な専門家たちの主張を概略的に総合してみると、21世紀は去る500年間世界を支配したヨーロッパやアメリカの時代でなく、アジアの時代あるいは中国の時代になる。特に、21世紀の世界の覇権を掌握する国は、米国でなく中国であるという主張が今や一般常識のようになった。

 

    国力が強大国のレベルには達しないが、超強大国たちの戦略的角逐場になるしかない戦略的な要衝地に位置する韓国は、アメリカと中国の覇権競争をいかなる国よりも注視せねばならない。もし、この頃人口に膾炙される多数説のように、米国の覇権が没落し中国が覇権国家になるというのが事実なら、韓米同盟を維持し続けねばならないという主張は韓国の安保に危険極まりないことになるはずだ。その反対も同じだ。アメリカの覇権が強大に維持されれば、「均衡者」になるべきだといった主張も韓国の安保を破綻状態に陥らせるだろう。

 

    このような状況判断のため良い参考になり得る、21世紀の国際政治を長期的な巨視的な視点で分析した良い本が出版された。ジョージ・フリードマンが著述した、「これからの100年:21世紀の展望」という本だが、著者のフリドーマン博士は、アメリカの戦略分析家、情報専門家として未来の世界戦略を研究し、この主題に関する諮問会社を運営している国際政治および戦争関連の情報通として広く知られた人物だ。「戦争の未来」(この本は韓国語で翻訳出版された)、「アメリカの秘密戦争」など6冊の著書がある。

 

    フリドーマンは、国際政治の分析において最も重要な常数と考えなければならない要因が地政学であると主張する。地政学が国際政治の分析で占める重要性は、「見えない手」という概念が経済学で占める重要性に劣らないという。このような命題を基盤にフリドーマンは21世紀100年を予測・診断しているが、彼の主張の独特性はわれわれの一般常識を完全に打ち砕く。フリドーマンの主張は、強力な根拠と論理で裏付けられており、彼の論法はわれわれの一般常識らがどれほど脆い仮設に基づいたものなのかを悟らせてくれる。

 

    まず、フリドーマンは、21世紀はアメリカの時代であり、21世紀のためには米国を研究しなければならないと主張する。アメリカは力が強大なだけでなく、文化的な面においても世界中に深く浸透し、世界そのものをアメリカが規定していると見なければならないほどだ。フリドーマンは、体系的な根拠を提示しながらアメリカは2100年にも現在のような世界1の強大国として残ると主張する。アメリカは資源や人口などにおいて卓越する。アメリカは多量の石油を輸入してはいるものの、石油の生産量が一日830万バレルでサウジアラビアの生産量の85%に達する。世界全体の人口密度が49人なのに比べ、米国は31に過ぎない。アメリカ人たちは、アジア人に比べて約5倍も広い土地を保有している。

 

    アメリカの地政学的位置とアメリカの軍事力は、アメリカは他国を侵略できるが、他国から侵略されないようにする。アメリカは、太平洋と大西洋全部を国境としている、地政学的に非常に有利な位置を占めている海洋強大国であり、アメリカの強大さは今ようやく始まっていると主張する。アメリカの力に対して、フリドーマンは次のような決定的なことを言及している-「アメリカは人工衛星を通じて地球上の海に浮いている全ての船の動きを見ている。そして、アメリカは自らの意志によって、アメリカ海軍を通じて、この船らの動きを保障-あるいは拒否-できる」 (every ship in the world moves under the eyes of American satellites in space and its movement is guaranteed -or denied - at will by the U.S. Navy)。

 

    すでに覇権国の地位を占めたアメリカは、もうこれ以上「何かを成就する」という意味の大戦略を持っていない。アメリカの大戦略は、「他人が何かをすることをできないようにする」に焦点が合わせている。アメリカの別の卓越した戦略理論家であるバコビツ博士も、アメリカの大戦略は、アメリカが「現在占めている戦略的利点(strategic advantage)を持続的に維持するところにある」と主張する。

 

    アメリカの大戦略が、「現状維持的な性格」を持つ理由は、アメリカがすでに覇権国であるという事実以外の要因、すなわち地政学的要因からもくる。アメリカは、大西洋や太平洋という大きな海を置いて、ヨーロッパおよびアジアという権力の中心から隔離されているため、ヨーロッパやアジア大陸で勢力均衡が維持される限り、安全が保障される。アメリカはヨーロッパやアジアを占領する必要がない。 ヨーロッパとアジアの全体を掌握する覇権国の出現を防げば良い。アメリカの大戦略は、アジアあるいはヨーロッパで、少なくとも二つ以上の国家あるいは国家群が、相互牽制と均衡をなす状態を保つところにある。

 

    21世紀のアメリカが留意するもう一つの挑戦はイスラムだ。われわれはアフガニスタンとイラクを別個に考える傾向があるが、フリドーマンはイラン、イラク、アルカイダ、タリバンなどは全部イスラム大帝国を建設するという一つの共通目標を持っている同じ対象と看做す。すでに処刑されたイラクのフセイン前大統領はもちろん、アフマネジャド現イラン大統領、アルカイダのオサマ・ビンラデンなどは皆分裂したイスラムを統一し、窮極的にイスラム大帝国を建設する主役になるという夢を見る者たちである。

 

    アメリカが「9.11」の直後中東に介入した理由は、イラクを征服するとか石油を掌握するというような枝葉的理由のためだけではない。アメリカは自らの国家利益に重大な威嚇になり得るイスラム大帝国を建設しようとする者らの努力を「妨害」するため中東に介入したのだ。だから、アメリカがイラクとアフガン戦争で勝っているか負っているかは妥当な質問にならない。サダム・フセイン、オサマ・ビンラデンなどの遠大な大戦略を成功的に妨害している限り、アメリカが行っているイラク・アフガン戦争の有用性は保てられるのだ。アメリカは、甚だしくは大戦略目標を達成するためには戦争で負けることもできる国だ。

 

    フリドーマンは、21世紀のアメリカに対しての最も強大な挑戦勢力を、中国でなくロシアと想定する。ロシアは今再び蘇りつつあり、過去のように力を誇示しようとするだろう。もちろん、アメリカはロシアが力を誇示するのを座視しない。アメリカは、ロシアの登場を阻止するためむしろ中国というカードを使うだろうと予想する。フリドーマンは、ロシアの他に21世紀に強大な国力を発揮する可能性のある国は、日本、トルコ、ポーランドだと主張する。ポーランドは衰退しているドイツに代わってアメリカのロシア封鎖努力に加担してくれる国であり、結局、アメリカの強大な支援を得て21世紀中にドイツより強い国家として登場するだろう。トルコは、力の増すイスラム世界の主役として強大国の隊列に入る条件が良好な国であり、日本も21世紀の世界に対処するためには、2次大戦以後の60年間余り持続した国家戦略より、その以前の日本が選んだ、富国強兵の道を選択する可能性が高いと見る。メキシコもアメリカに挑戦する可能性の高い21世紀の強大国の一つだ。

 

    それでは圧倒的に多くの人々が考えている中国の覇権への挑戦の可能性をフリドーマン博士はどんな理由で軽視しているのか? この本の第5章はまさにこの主題に対して説明している。第5章の題名は、China 2020:Paper Tiger、すなわち「2020年の中国は紙に描かれた虎」となっている。だが、フリドーマンの主張は全く意外な主張ではない。経済学や経営学を研究する人々は、中国をアメリカに代わる次世代の覇権国と見る傾向が多いが、国際政治学、特に軍事や戦略問題を研究する人々は概してそう見ない。戦略理論家たちは、中国がアメリカを追抜く国になるのは事実上不可能だと見る。

 

    フリドーマンも、中国がアメリカに代わる覇権国になるのはほとんど不可能だと断定する。彼が提示する理由らは次の通りだ:(1)中国が去る30年間急速な経済成長を遂げたという事実が今後も中国の高速経済成長を保障するものではない、(2)中国は高度成長が止まる場合、政治的に深刻な危機に処することになる。 そうなる場合、中国は主要強大国になる可能性どころか、今のように統一された国家を維持することも難しいかもしれない、(3)高速経済成長が止まる場合、中国は社会全体が揺れる虚弱な構造だ、(4)中国は地政学的に見て島のような国だ。拡張し難い国という意味だ。 反面、アメリカは大西洋と太平洋を掌握できる地政学的に最も有利な位置を掌握している、(5)中国は腐敗が蔓延し、経済の統計すら操作する国だ、(6)中国の経済成長が中国に利益になるのか(profitable)の可否も問題だ。経済の成長が中国経済を強化できずにいる。アメリカの経済が悪いと中国の経済も同時に悪くなる非常に脆弱な構造だ、(7)中国の国内的分裂要因は深刻だ。例えば、今上海は、北京との関係よりロサンゼルスとの関係にもっと気を遣っている程度だ、(8)中国は米海軍に挑戦できない。中国海軍は、現在台湾海峡を渡るのも力不足だ。米海軍は、いつでも中国の全ての商船を撃沈させることができる能力を持っている。

 

    フリドーマンの分析は、現実主義の国際政治学や地政学的接近方法に基づいている。中国が「和平掘起」-すなわち平和的に強大国になる-を言っているが、アメリカが自らの覇権を中国に平和的に譲歩する可能性は殆どない。英国がアメリカに平和的に覇権を譲歩したのは、英国とアメリカの世界を認識するパラダイムが同じだったから可能だったのだ。 英国は、フランスとドイツが覇権に挑戦してきた時、彼ら(佛・独)の世界観は英国と異なると認識したため戦争を通じてでも覇権への挑戦を防がねばならないと考えた。ナポレオン戦争以後、第2次大戦が終わるまで続いた世界大戦級の戦争らの原因がまさにここにある。

 

    中国の世界政治に対するパラダイムが、アメリカのそれと同様だと考える人はない。イギリスとフランス、イギリスとドイツの小さな差すら世界大戦級の戦争を引き起こす原因になった。アメリカと中国の覇権競争が、平和的な勢力転移(power transition)をもって解決されると信じる人々は、-少なくとも政策決定者のレベルのアメリカの役人たち、あるいはアメリカの戦略理論家たちの中には-いない。フリドーマンは彼らよりもう一歩進んで中国はアメリカが憂慮せねばならない覇権への挑戦国になれないと主張している。アメリカが中国を「G-2」として待遇しても、中国はまだG-2でないと言逃れるのが2009年-2010年の冬現在の国際状況だ。われわれ韓国人はこれが意味する国際戦略的な意味をよく把握せねばならない。

 

    国際政治学の究極的な目的は、国々の力を精密に測定することだ。現在はもちろん、今後の国力の測定も重要だ。強大国らの国力と国力の趨勢を分析することはもっと重要だ。それでこそどの強大国と連係すべきかに関する長期計画を立てられ、大戦略が樹立できるからだ。フリードマンの「これからの100年:21世紀の展望」という本は、韓国の未来を考え望ましい戦略を構想しようとするすべての人々が読んで吟味しなければならない、学術的価値が十分な本だ。

 

    (2009年12月10日作成)

 

    ttp://blog.naver.com/choonkunlee 2009.12.20 23:29