現代コリア

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怪しい中朝関係
岡林 弘志
(2009.12.4)

 

    北朝鮮への国際的な経済制裁が続くなか、中国と北朝鮮の交流が盛んに行われている。中国はさる五月の核実験の後、国連の厳しい経済制裁に賛同したが、対北政策を修正したようだ。年明けには、金正日総書記が訪中という観測すら出ている。

    北朝鮮の生殺与奪を握るという中国の動きが気にかかる。

 

    10月はじめの温家宝・首相の訪朝は、核実験後初めての首脳級の中朝交流になった。中国からは、それ以前の9月には戴秉国・国務委員、11月には梁光烈・国防相、陳至立・全人代常務委副委員長がそれぞれ訪問した。

 

    「中朝両国の伝統的な友好を一層強固に発展させていく」

    梁国防相が平壌で述べたように、盛んに両国の関係強化をうたい、「軍同士の団結力」を繰り返し強調した。
    北朝鮮からも金養建・朝鮮労働党統一戦線部長、崔泰福・書記が中国を訪問した。このほかに軍幹部の交流が増えているようだ。

 

    このうち、陳副委員長は6月に訪朝する予定だったが、北のテポドン発射や核実験に対する不快感の表明として延期された。
    この時期、訪問が行われたということは、中国側が対北対応を変えたことに他ならない。

 

    日中関係筋によると、「中国は一時対北強硬策をとったが、軍部を中心に抱擁策、囲い込み策が必要という主張が強まり、軍における軸足を強化したい胡錦涛主席もそれに乗った」と説明する。

 

    中国という国はやはり「垣根国家」を必要とし、同時に強圧を掛けて北朝鮮が混乱、不安定になれば、中国にとってマイナスが大きい、という従来からの認識に戻ったのだろう。それに、このところ、北朝鮮の核を巡る動きを眺めると、北の核は「対米カード」として有効という判断もあったようだ。

 

    もちろん、北朝鮮にとって、中朝関係の改善は、経済制裁に風穴を開けるうえからも望ましいことだ。国連での制裁採決賛成などによって金正日の対中不信は根強いと言われるが、この時期の食糧をはじめとする経済支援はのどから手が出るほどほしい。背に腹は代えられないのだ。

 

    もう一つ、金正日が狙うのは、米朝関係改善への中国の口利きだ。
    金正日は、昨年夏の脳卒中から回復し、元気を取り戻したようだ。このため、「金正日独裁体制」を揺るぎないものにするため、執念を燃やしているという。

 

    「独裁護持」の国内的な大きな礎石が2月の憲法改定だった。国家運営の基本方針として自らが創案した「先軍政治」を盛り込み、自らが就任する国防委員長を「最高指導者」と明記した。

 

    もう一つの礎石が米国による体制保証である。親子二代の悲願でもある「赤化統一」の跳躍台にするためもあって、米朝関係改善-休戦協定から平和条約への移行、を急務と位置づけているようだ。

 

    いま、金正日がもっとも恐れるのが脳卒中など致命的疾患の再発だ。なんとか元気なうちに「独裁護持」を確立したという執念が、対米関係を急がせている。

 

    そこにつけいる隙があるはずと、中国は北の動きを注視している。先の日中関係筋は「中国は北朝鮮に核を放棄させるのはいましかない、と判断している」という。このため、中国は六カ国協議を軸とする対北交渉を模索、その環境作りとして要人の交流に力を入れているようだ。

 

    12月8日から、米国のボズワーズ特別代表が訪朝する。米朝の直接折衝によって実現することになったようだが、中国が仲介を勤めたという情報もある。
    八月のクリントン元米大統領の電撃訪問も中国が関わったといわれる。

 

    米中は北朝鮮問題について、いつになく緊密な意思疎通を行いつつ、北朝鮮との接触を行っているようだ。温家宝首相の訪朝時、中国は国境の鴨緑江河口付近に橋を架けることを約束し、多くの経済協力についての文書を交換したが、米国は「制裁破り」などの非難を一切しなかった。

 

    ここまで書いたところで、北朝鮮のデノミ断行のニュースが飛び込んできた。
    11月30日に実施したという。制裁による外貨不足、例年にない食糧不足、物価高騰などの情報が漏れてきていたが、デノミはこの経済苦境の現れだ。

 

    今回は、北朝鮮ウォンを100対1の割合で交換。要するにこれまでの100ウォンは1ウォンに切り下げられる。もちろん旧札は無効になり、新札となる。しかも、交換期間はたったの1週間だ。

 

    全国に広がったヤミ市場などで稼いでため込んだカネを表に出させるのが最大の狙いだ。しかも交換の上限は1世帯10万ウォン。おおむね二ヶ月分の生活費に相当するという。それを超える金額は1000対1で交換というのだから、タンス預金は紙切れ同然、没収と同じことだ。

 

    しかも、デノミは必ずハイパーインフレを伴う。人民の生活はますます苦しくなる。この冬、餓死者が増えるという予測がますます当たりそうな気配がする。片や、労働党や軍幹部などの特権層は、事前に情報を得て、ドルや中国元に交換しており、ほとんど損害はない。どころか、これを機にもうけることも可能だ。

 

    今回のデノミは、なりふり構わず「独裁護持」に突っ走る金正日の焦りがみえる。大混乱の引き金になるかもしれない。

 

    米中は北朝鮮との接触を進めるのだろうが、北朝鮮の現状を厳しく分析して、事に当たってほしい。金正日が最終的に核放棄をするという中国筋の分析にどれほどの根拠があるかは不明だが、核を抱えたままの独裁の延命に手を貸してはならない。