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なぜイスラエルはもっと待てないのか? 近づくイスラエル-イラン戦争
李春根(国際政治学者)
(2009.12.1)

 

    この文は、筆者が毎月「月刊朝鮮」に寄稿する国際政治関連の海外新刊の書評である。国際情勢を分析する形式を借りての書評で、これは月刊朝鮮の2009年12月号に掲載された2回目の書評である。

 

    著者:Jerome R. Corsi
    題名:Why Israel Can't Wait:The Coming War Between Israel and Iran
    出版社:ニュ-ヨ-ク所在Threshhold Editions、出版日:2009年8月19日.

 

    地球上の如何なる国もその国の最も重要な国家利益は生存することだ。生存と言葉はもっと簡単に言えば「生き残る」という意味であり、英語圏の人々はself- preservationという言葉を使う。国際政治学者たちは、国家が生き残るという言葉がすさまじいという感じがするためなのか、より上品な学術用語である国家安保(National Security)という言葉を主に使う。大韓民国の普通の人々は自らが長く戦争に苛まれてきたのに、逆説的に国家安保に関して非常に鈍い方で、国家安保をそれほど深刻な概念として受け入れようともしない。北韓側が核武器を作りミサイルを撃つ渦中でも韓国国民があまり驚かないことを見て外国の人々がむしろ驚くほどだ。

 

    しかし国々がメンバ-である国際社会とは、国々が命を保って生きることが当然のように保障された社会では決してない。国々は常に自国の国家安保に気を遣わねばいつ死ぬ(滅亡する)か分からない、非常に危険な町で住んでいる。

 

    「国々の死(State Death)」という主題を研究したタニシャ・パザル(Thanisha Fazal)教授は、1816年近代国民国家体制が始まって以来2000年まで184年間存在した国は総207ヶ国だったが、そのうち66ヶ国(32%)が消滅し、消滅した国々の中で50ヶ国(75%)は隣国の軍事的暴力によるものだったという事実を発見した。わずか200年未満の期間に存在した国々の1/4程度が隣国によって他殺されて歴史から消えてしまったというから、国々が国際社会で生存のためどれほど頑張らねばならないのかを物語る統計資料と言わざるを得ない。

 

    だからこそ、わが国も男たちは誰でも軍隊に行って兵役義務を果たさねばならず、国家予算の最も大きな分を国防に投じているのではないだろうか?

 

    程度の差はあるものの国家安保に何の問題もない国はあり得ない。だが、世界で最もぜい弱な安保環境の中で生きており、その結果国家安保を最も深刻に思う国がどこかを訊かれると、われわれは誰でも躊躇せずイスラエルと答えるだろう。

 

    国のない国民がどれくらい辛いのかはわが国も経験したが、イスラエル民族は2000年以上国家なしで生きてきた人々だ。国の無い悲しさを誰よりもよく分かるため、1947年パレスチナの地に小さな巣を作ったイスラエルを護るため、イスラエル人たちはどんな事でもできると決心し、実際にそうやってきた、小さいが真に鋭い国だ。それでイスラエルはその不利な安保環境の下でも1947年以来今日まで彼らの領土を護り抜けた。

 

    そのイスラエルが、2009年オバマ大統領が就任した後、そしてイランでアフマネジャド大統領が再選に成功した後、去る60年間のどの時よりも切迫した、国家安保が文字通り絶対絶命の時点に達するようになったが、このような事実をよく描写した本が出版された。

 

    2004年アメリカの大統領選挙の真っ最中に出版された「ケリ-は最高司令官の資格がない」(Kerry:Unfit for Command)という本で民主党の大統領候補だったケリ-に致命的な打撃を加えたことがあり、昨年のアメリカ大統領選挙の時、オバマ候補の嘘らをつぶさに明かしたベストセラ-の「オバマの国」(The Obama Nation)という本で筆名を馳せた学者であるハ-バ-ド出身の政治学博士ジェロム・コルシ博士が、去る8月下旬「イスラエルはなぜ待てないのか? 近づくイスラエルとイランの戦争」という本を出版した。

 

    110余ペ-ジに過ぎない小さな本だが、この本が分析している主題やその主題の深刻性は、21世紀初の国際政治をまるごと変えられるほどの重要な事案と言わざるを得ない。

 

    イスラエルは、地政学的にも人口学的にも通常的な防御戦略だけでは国家安保を維持できない国だ。国を護るためには面積・人口・宗教などで何と100倍以上の勢力の敵と対抗しなければならないため、イスラエルは他の国々とは異なる国家安保政策を取らざるを得ない国だ。

 

    ミュンヘン・オリンピックの時、パレスチナゲリラがイスラエル選手団を虐殺した後、イスラエル情報部のモサドは、イスラエル選手団を殺害したテロリスト全員を、ほぼ10年かけて地球の隅々まで追跡して結局全員射殺した。無謀だと言う人もいるが、そうしないと今後もどれほど多くのイスラエルのオリンピック選手たちがテロの犠牲になるか分からないというのがイスラエル人たちの論理だった。

 

    1981年6月7日、イスラエルは8機のF-16戦闘機とこれを護衛する6機のF-15戦闘機を動員してイラクの真ん中にあるオシラク原子炉を爆撃して破壊することで、フセインの核武器開発計画を20年以上遅延させ、2007年9月6日の深夜12時、イスラエル空軍F-15戦闘機などはまたシリア領空を深く浸透して北韓技術者たちが建設していたシリアの原子炉を完全に破壊してしまった。

 

    幸いにイスラエルによるイラクとシリア攻撃は、攻撃された側がむしろ隠す状況だった。自分たちは原爆を作ったことがないと言ってきたから、当然だったかも知れない。イスラエルの先制攻撃が戦争に飛び火しなかったのは、イスラエルのためにも世界のためにも非常に幸運なことだった。

 

    しかし、迫ってきたイランの核武装は、イラクやシリアの場合のように簡単に解決できないだろうという点に問題がある。ジェロム・コルシ博士がこの本で取扱う主題がまさにこの難しい問題だ。コルシ博士はまずイランの核開発計画がすでに完成段階に達したと主張し、イランの対イスラエル政策は「イスラエルを地図から消してしまうこと」である事実をイスラエル戦略家らの分析を引用してはっきり提示する。

 

    すでにイランの大統領が何回も演説を通じてこのような主張を繰り返し強調しており、イランだけでなく中東の複数の国々がイスラエルの存在を認めていない事実を強調する。存在を認めない相手と交渉することが如何に虚しいことであるかをコルシ博士は正確に指摘する。

 

    オバマ大統領は、去る6月4日、エジプトのカイロ大学で演説したが、演説中聖書(Holy Bible)はただ一回引用したのに、「コ-ラン」(Holy Koran)は五回も引用したという。

 

    この演説はアメリカ大統領の演説としては史上初めてにアラブ世界で友好的な反響を呼び起こした演説だった。イスラエル人たちは、オバマのカイロ大学演説以後、アメリカとイスラエルの関係はこれ以上以前のような真の同盟関係であり得なくなったという事実を指摘する。今までイスラエルとアメリカは話や文書が全く必要のない「本当に」真の同盟だった。イスラエルはどの場合でもアメリカの強大な支援が自動的に担保されると信じたため強大なアラブ世界と競うことができた。

 

    コルシ博士も、アメリカとイスラエルの間に永らく形成された無言の真の同盟は、オバマ大統領になってからこれ以上存在しないと分析する。2009年の春、数ヶ月間イスラエルを訪問して数多くのイスラエル安保専門家や政策決定者らと対談した後著述されたこの本は、オバマ行政府が親イスラエル的だと認識するイスラエル人はわずか6%にすぎないという驚くべき事実を伝える。(エルサレム・ポスト紙の2009年6月19日付世論調査)

 

    イランの核武器が時々刻々完成に向かっているこの時点で、イスラエル人は彼らの存在に対する威嚇(existential threat)を深刻に感じている。イスラエルは小さな国だ。ただ一発でも核爆弾がテルアビブに落ちる日、イスラエルは国家としてこれ以上延命できない、それこそ核爆弾一発で終わる(One Bomb State)国だ。

 

    そういうイスラエル人たちが、オバマ行政府が果たしてイランの核問題を本質的に解決しようとする意志を持っているのかに対して疑問を提起している。過去アメリカはイスラエル人が感じる安保脅威を常に「共に」感じた国だ。だが、オバマのアメリカも過去のアメリカと同じだと思うイスラエル人はあまりいない。このような状況で、多くのイスラエル人をインタビュ-してから下したコルシ博士の展望はだいぶ憂鬱だ。

 

    コルシ博士は、イスラエル人たちが伝えようとするメッセ-ジは単純明瞭だという。「イスラエルはイランが核兵器を完成する瞬間でも、世界がイスラエルを放棄しなかったと考える限りイランを攻撃しない。イスラエルはイランを攻撃する前にイランの核武器を除去するように西側と穏健なアラブ世界にまず訴える」、「しかしイスラエルのユダヤ人国家は、アメリカが事前に承認しようとしまいと自らを保護できる権利を他人に譲渡しない。」

 

    コルシ博士は、イスラエルは恐らく早ければ2009年年末、あるいは2010年の初、自らの存在に対する深刻な威嚇になるイランの核を除去するための先制攻撃を敢行するかも知れないという。イスラエルがイランを先制攻撃する場合、イランも過去のイラクやシリアのように反撃せず我慢するだろうかという点が最大の問題だ。もし、イスラエルとイランの間で戦争が勃発すれば、オバマが計画した中東平和はもちろん、世界平和まで水の泡になってしまうだろう。

 

    イスラエルは、オバマ行政府に明確なメッセ-ジを送っている。「イランの核問題をはっきりと解決して欲しい。そうしない場合われわれ自らが解決するしかない。それは3次世界大戦に准ずる戦争になるはずだ。だからアメリカはもっと積極的にイランの核問題解決に取組んで欲しい」という内容だ。小さいが自国の生存に対して透徹したイスラエル式の国家安保論だ。

 

    近頃、「北核問題」の解決方案、韓米連合司令部の解体問題を巡って、韓・米間に見えない異見はないのか? この本を読んでイスラエル人たちの愛国心と大戦略を改めて調べる契機になった。韓国もアメリカや中国に、「貴方方が北韓の核武装をこのように引き延ばし、真摯に解決できないなら、われわれ自らが解決方案を講じるか他の代案を模索せざるを得ない」と脅せたら、その時アメリカや中国は北韓の核武装問題解決に一層積極的に出るのではないかという考えもしてみた。(2009年11月2日)

 

    http://blog.naver.com/choonkunlee 2009.11.20