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制裁解除にあがく北朝鮮
岡林 弘志
(2009.11.27)

 

    北朝鮮が国連安保理の経済制裁に風穴を開けようと躍起になっている。米国と韓国を突破口とみなしているらしく、盛んに対話攻勢を掛けているが、いっこうに成果は上がらず、焦りが見える。

 

    「何やら大きなことをするかのように騒ぎ立てているが、せいぜい農夫の背負子に載せてもたいしたことのないトウモロコシ、どれほど繰り返し言うのか」

    北朝鮮のウエブサイト「わが民族同士」の韓国非難だ(11・10、聯合通信)。

 

    北朝鮮が離散家族の再会の見返りとして「人道措置」を求め、李明博政権がトウモロコシ1万トンを送ると通告したのに対する北朝鮮の反応だ。「韓国内で非難、冷笑が起きている」と言うが、北朝鮮自身の反応なのは見え見えだ。

 

    離散家族の再会を大幅に遅らせているのは北朝鮮だ。9月末に百人しか合わせなかったのに、見返りとはおこがましい。それに、もらう方が文句をつけるというのは、北朝鮮らしいが、何ともえげつない。

 

    ただ、北朝鮮が韓国の支援にいかに期待していたかがよくわかる。金大中、盧武鉉政権は無条件で年間10万トンを貢いでいたのだから、少なくともそのくらいは、という皮算用があったのだろう。

 

    最近は、韓国の玄仁沢・統一相に対して「極悪な反統一分子」「民族反逆者」などと非難を強めている。北朝鮮はこの八月から李明博大統領個人への非難を控えているが、思うように支援をしてくれない。しかし、大統領非難を再開すれば、支援は進まない。そこで、「核放棄」や南北相互主義を繰り返す統一相に的を絞って非難を続けているのだろう。

 

    一方で、有力なドル獲得手段だった金剛山観光と開城観光を再開するよう様々な手を打っているようだ。韓国側で観光を取り仕切る現代グループの会長を八月に平壌に招き、つい最近も同グループを通じて南北当局者会談を開くよう提案してきたという。外貨や食糧をなんとか手に入れたいという北朝鮮の窮状がよくわかる。

 

    これと同時に、北朝鮮が対話攻勢を掛けているのが、米朝直接交渉だ。このところ朝鮮戦争の「休戦協定」を「平和協定」転換するよう繰り返し求めている。韓国を「赤化統一」するための重要な一段階だ。

 

    同時に米朝関係が進めば、経済制裁を骨抜きにできるという皮算用もありそうだ。

 

    11月10日の黄海での北朝鮮警備艇による北方限界線(NLL)侵犯事件は、米朝交渉を急げという脅しだ。韓国の艦艇と銃撃戦を展開し、早々に退却したが、現状では軍事緊張を伴う事件がしばしば起こる、これこの通りと言いたかったのだろう。

 

    米国は、12月8日に、ボスワース北朝鮮担当特別大使を訪朝させると発表したが、いまのところ、「完全かつ検証可能な朝鮮半島の非核化」(オバマ大統領)の方針を変えていない。

 

    「北朝鮮が挑発的に振る舞った後、協議に復帰し、譲歩を求めて協議から離れる、といった過去のパターンを断ち切る」

    オバマ大統領と李明博大統領は、ソウルでの首脳会談で、北朝鮮のこそくな外交戦術には乗らない意向を確認した(11・19)。過去20年近くになる対北交渉の失敗の教訓だ。

 

    こうした厳しい対応の背景には、経済制裁で苦しむ北朝鮮の現状が念頭にあったに違いない。核開発と金正日が独裁維持のために取り巻きにエサを配るに必要な外貨、それに食糧が著しく乏しくなってきている。

 

    「北朝鮮が武器取引―制裁逃れにあの手この手」。――国連安保理の対北朝鮮制裁委員会の専門家パネルは、中間報告をまとめた(11・18)。

    対北制裁で、武器取引はもちろん御法度だ。しかし、制裁リストに指定された業者の代わりに「鴨緑江開発銀行」「朝鮮光星銀行」などのダミー会社の名前を使ったり、積み荷目録の改ざんなどを行っている、という。

 

    専門家パネルは、来年5月に最終報告を提出するが、北朝鮮にとって武器輸出はかねて最大の外貨獲得手段だ。

    在外公館では、しばらく聞かなかった密輸も行っているようだ。スウェーデン紙は北朝鮮外交官二人がロシア製のたばこ23万本を密輸し、逮捕されたと報じた。

 

    国内経済は、相変わらず非常事態だ。食糧不足はますます深刻で、今年の食糧不足は150万トンにのぼる(韓国農村経済研究院)。年間需要は520万トン、毎年100万トンの不足と言われてきた。来年の春から初夏に掛けては飢餓がもっとも深刻になるはずだ。

 

    このため、この夏以降、コメ、トウモロコシなどの穀物は1・3-1・5倍に高騰し、飢餓に襲われた95、96年のように、軍や兵士による食糧強奪や、餓死者が増え始めたという情報もある。

 

    2012年の「強盛大国」実現のため、九月まで生産拡大の総動員運動である「150日戦闘」を実行したが、成果が上がらず、いまなお「100日戦闘」の真っ最中だ。食うに藤生する中で、ひたすら働かされる人民は哀れだ。

 

    こうしたとき、必ず出てくるのが北朝鮮暴発論だ。これも北朝鮮の揺さぶり戦術。あせりからあの手この手を打っているとき、周辺国がそれに乗る必要はない。