現代コリア

TOP     日本     韓国(大韓民国)     北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)     その他     コラム一覧     佐藤勝巳     岡林弘志     五味洋治     田中明     会社紹介      

北朝鮮は一年中「戦闘」だ
岡林弘志
(2009.9.24)

 

    北朝鮮は国民を総動員しての経済立て直し運動「150日戦闘」が終わったと思ったら、引き続き「戦闘」を断行するようだ。やはり、立て直しは思うようにいかないのだろう。これでは一年中「戦闘」だ。動員される人民はたまったものではない。失政のしわ寄せを全面的に背負わせられるのだから。

 

    このところの北朝鮮のメディアは賑やかだ。

 

    9月16日に終わったはずの「150日戦闘」の戦果を誇示するのに大わらわだ。

 

    電力、石炭、軽工業など各部門で「戦闘計画を超過遂行」と、連日に渡って報道している。金正淑平壌製糸工場は157.5%、平壌紡織工場は114.2%、三日浦特産物工場は150%・・・・・・。

 

    中には、鉄鋼生産の中心である千里馬製鋼聯合企業所は「100%達成で、生産量は昨年の4倍以上」なんて報道まであった。普段は何をしていたのかと疑いたくなる数字だが、とにかく威勢がいい。

 

    ところが、「勝利の150日をさらに輝かしい150日へたゆみなく続けていこう」(9・17労働新聞)となったようだ。朝鮮総連の機関紙「朝鮮新報」(9・11)は年末に掛けて「100日戦闘」を展開するという。韓国の玄仁沢統一相は、150日で「目標を達成できなかった」とみている。

 

    北朝鮮を訪問した在日朝鮮人などによると、「今年も食糧事情はこれまでと変わりない。かえって悪くなると心配する声も聞かれた」という。天候不順による日照不足に加え、韓国の李明博政権が対北肥料支援を止めたのが大きく影響しているようだ。

 

    それに、工業生産に不可欠の資材とエネルギーが大幅に不足する中で、いくら国民を総動員しても自ずと限界がある。というより、期間を区切って無理をすれば、ノルマ達成の数や量合わせ優先して、粗製濫造、ごまかしが横行する。また、国民を総動員した反動も予想される。

 

    「150日戦闘」も「100日戦闘」も、2012年に「強盛大国」達成の「大きな扉」を開くためだ。「軍事」「政治(思想)」「経済」が三本の柱だが、国民に食わせる、飢えさせないための「経済」の達成は、極めて難しい。

 

    一連の「戦闘」のもう一つの狙いは「国民の統制、締め付け」と言われる。国民が食えない中で、独裁を維持しようとすれば、締め付けるしかない。

 

    「思想の威力、われわれの無限大の精神力を噴出させるための政治・思想攻勢を力強く展開しなければならない」(今年元日の共同社説)というわけだ。

 

    今年の春頃から活発になった「権力世襲」の宣伝もその一環だろう。金正日総書記の三男、正雲の名前が取りざたされているが、いまだに正式決定はされていないようだ。気になるのは、7月末からこうした宣伝が中断されたという。

 

    8月に北朝鮮を訪問した在日朝鮮人は「ラジオやテレビでそれらしい内容や正雲を讃える歌といわれる『パルコルム』はやっていなかった」という。ある北朝鮮問題専門家は「金正雲は内外で一応認知されたので、これ以上必要ないと判断したのか」と推測するが、よくわからない。

 

    あるいは、金正日総書記がクリントン元米大統領との会見で健在ぶりを見せたように、体調が回復して、権力継承を急ぐ必要がなくなった。あるいは継承宣伝をしたところ、取り巻きや幹部のなかで、金正雲に取り入る動きが出るなど動揺が広がり自らの独裁に危機感を抱いた、などの理由もあるかもしれない。

 

    いずれにしても、「強盛大国」の大黒柱である「政治(思想)」大国の達成も容易でない。独裁というのは疑り深い性癖を持っている。独裁者は自分以外を信用できずに、無限の忠誠を求める。ところが、忠誠や思想は数字や量で表すことができない。

 

    まして、人の心の内は計り知れない。独裁者が忠誠を求めるのは、輪の中にいてぐるぐる回り続けるハツカネズミの営みに等しい。いくらやってもきりがない。命が尽きるまで止まない。

 

    となれば、金日成生誕百年の2012年の「強盛大国」達成まで、「戦闘」は止まないことになる。

 

    このところ、金正日は悩ましい日々を過ごしているのだろう。核実験などの強硬姿勢の後、米韓への対話攻勢をかけたが、全く成果が上がらず、国連安保理決議による経済制裁は粛々と実施されている。

 

    北朝鮮が国連安保理議長に送った書簡(9・3)には、金正日の焦りがにじみ出ている。「対話と制裁のどちらにも対処する準備が整っている」といいながら、「使用済み核燃料棒の再処理が完了しつつあり、ウラン濃縮も実験に成功し完了段階に入った」と核開発の進展を誇示した。米国が対話に応じないなら、取り返しのつかないことになると脅しているのである。

 

    経済制裁の包囲網が狭まる中で、金正日は外に向けては揺さぶり戦術を展開するも、今のところは成果がなく、内に向けて「戦闘」の継続で人民の尻をたたくしか打つ手はないのだろう。