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連載11回目 核心情報は混乱

五味洋治

(2009.9.3)

 

    米国情報機関は、北朝鮮の核やミサイル開発については、1990年代からその動きは察知していたが、必ずしも正確な情報は得ていなかったようだ。

 

    その典型が、1999年の北朝鮮の核施設のある寧辺から北東40キロにある金倉里をめぐる騒動だった。

 

    1997年春に撮影された衛星写真を元に、CIAは「北朝鮮が、金倉里に密かにプルトニウムの生産工場を地下に作っている」との結論に達した(『誰がテポドン開発を許したか』149ページ)。

 

    米国は1994年、北朝鮮との間で、核計画を凍結する代償に原油と軽水炉型原発を提供する「枠組み合意」を結んでいたが、北朝鮮はこれを破っていると、米国側は疑いを深めた。

 

    1999年の始め、世界中の核計画を調べている米エネルギー省の情報部門が、北朝鮮の貿易商社がガス遠心分離の技術を入手したがっているとの情報をつかんだ。これはウラン濃縮に必要な装置である(同書150ページ)。

 

    これらの情報を元に、米国防情報局(DIA)は金倉里にある地下施設は核開発を行うための物だと主張し、その情報がニューヨークタイムズ紙にリークされた。

 

    CIAはこの時、金倉里が核施設であることには慎重になっていたが、DIAは偵察衛星の写真から、「周辺の道路は(核実験場の)特色を備えており、間違いなく地下核工場だ、と言い張った」(マイク・チノイ著『メルト・ダウン』14ページ)という。

 

    99年5月になって、北朝鮮がアメリカの視察・見学を認めた。現地は空っぽの巨大な トンネルにすぎなかった。見学に際して、アメリカは朝鮮に60万tもの食糧支援を約束するという失態をさらし、「このエピソードは、米国の北朝鮮に関する情報をどう評価すべきかという、ぬぐいがたい疑いを招いた」(同15ページ)という。

 

    昨年、2000年に平壌で開かれた南北首脳会談に参加した林東源・元国情院院長が書いた『南北首脳会談への道、林東源回顧録』(岩波書店、2008年)の中にも、訪米した林に対し、CIA側が、北朝鮮に関する情報は我々のもっとも弱い部分だと話す場面が出てくる。