北朝鮮研究⑤ 東京新聞記者 五味洋治 (2009.7.15) 北朝鮮経済 十分資料が入手できないためか、米国で北朝鮮の経済を研究している人は限られている。 ニコラス・エバーシュタットとマーカス・ノーランドの2人が代表格だ。 アメリカン・エンタープライズ研究所(AEI)のニコラス・エバーシュタットは 『The End of North Korea』(AEI Press, 1999)などの著書がある北朝鮮経済の専門家だ。 この10年あまり、北朝鮮はまもなく崩壊する、厳しく対応するべきだと訴えている。1999年には『北朝鮮の終わり』(The End of North Korea The American Enterprise Institute)と、自分の主張の通りの著作を出版している。 2004年に保守誌「ウイークリースタンダード」に寄稿し、第2次ブッシュ政権は、北朝鮮の体制変革を目指すべきだと提言したことがある。学者の中でも、自分の主張をはっきり言う人との評価のようだ。 http://www.aei.org/scholar/62 マーカス・ノーランドはピーターソン国際経済研究所上席研究員、イースト・ウェストセンター上席研究員。東京大学、埼玉大学にも在籍した経験がある。 専門は、米国の貿易政策およびアジアの金融危機、北朝鮮や朝鮮半島の統一問題の研究。著書『Avoiding the Apocalypse』(Institute for International Economics 2000年)。2008年12月には、北朝鮮に対する国連の制裁が効果を挙げていないと指摘する論文を発表している。 データの分析だけではなく、脱北者にインタビューするなど、行動範囲が広い。 http://www.piie.com/publications/interstitial.cfm?ResearchID=1079 日本では『北朝鮮 飢餓の政治経済学』(Famine in North Korea: Markets,Aid, and Reform Colunbia university press 2007)が出版されている。「自由で開かれた社会が飢餓の解決につながる」(359ページ)として、国際社会の北朝鮮関与を求めている。 このほか経済に限らず、北朝鮮に関して、活発にコメントしている人としては、 ゴードン・フレーク http://www.mansfieldfdn.org/about_fdn/staff/lgflake.htm スコット・シュナイダー http://asiafoundation.org/about/profile/scott-snyder ピーター・ベック http://www.ncnk.org/member-directory/peter-beck ジョン・パク http://www.usip.org/specialists/bios/current/park.html らがいる。 ゴードン・フレークは、モルモン教徒として、韓国で布教活動を行った経験があり、朝鮮語に非常に堪能である。飢饉が起きた1990年代に北朝鮮に入った米国NGOの経験をまとめた。1999年2月からモーリーン&マイク・マンスフィールド財団(元マンスフィールド太平洋問題研究所)の所長を務めている。 スコット・シュナイダーは、現在ワシントンにあるアジア財団で研究員を務めている。『瀬戸際交渉』(Negotiating on the Edge: North Korean Negotiating Behavior、USIP Press Books、1999)という本は、日米韓の外交当局者60人にインタビューし、北朝鮮の交渉パターンを丁寧に解明した労作だ。その後、ガルーチ氏など、核危機の当事者が当時のことを本にまとめた。その意味で北朝鮮と本格的に取り組んだ先駆けの研究者といえる。 ブッシュ政権時代に、北朝鮮との交渉に当たった米国のヒル国務次官補も、彼の本を読んで、研究したと言われている。 韓国にも留学経験があり、北朝鮮の東北部の羅津、先鋒を訪問したことがあるという。たくさんの人から、会うように勧められた。 彼が言うには、北朝鮮は通常の外交で通用するギブアンドテイクの関係は通用しない。それを踏まえて交渉しなくてはいけない。その交渉スタイルは、「プニキ(雰囲気)」「キブン(感触)」「コジップ(頑固さ)」で表現できると『瀬戸際交渉』の中で書いている。 中国は切実に米朝関係の改善を求めている。以前、自分の論文で「中国は米朝関係の急進展を望んでいない」と書いたこともあるが、それは間違い、中国の動きが今後のカギになる、と話していた。 2009年2月には『中国と二つのコリア』(China's Rise and the Two Koreas Asia foundation)という本を出版している。中国の対朝鮮半島政策を、主に経済の観点から分析した内容である。 最近の発言は日本語で読むこともできる。 http://www.foreignaffairsj.co.jp/essay/200905/%83X%83i%83C%83_%81%5B.htm ピーター・ベックは 国際危機監視機構ICG(International Crisis Group)北東アジア研究所(ソウル)所長。カリフォルニア大学バークレー校卒業。ソウル国立大学韓国語課程修了。カリフォルニア大学サンディエゴ校国際関係・太平洋地域研究大学院博士課程修了。アメリカン大学非常勤講師。学者ではあるが、現在進行中の核問題や、脱北者問題にも関心が深い。 ジョン・パクは米平和財団で、北朝鮮研究をしている。ここにくる前にはウオール街で働いていた変わり種で、ケンブリッジ、オックスフォードで学んだ人である。 彼は主に北朝鮮の経済に関心があるという。フィールドワークが中心で、最近も実際に韓国の脱北者に広くインタビューした。その時感じたのは、北朝鮮の企業では賄賂が横行しており、賄賂なしにはうごかない社会になっているということ。 今後朝鮮総連や中国の企業関係者にもインタビューして見たいという。カナダ生まれで韓国語もうまく、完全なバイリンガルである。 悩みは北朝鮮に関する情報が米国ではなかなか手に入らず、確認も難しいことだという。「日本の新聞社は、北朝鮮に関する情報をどう確認しているのか」と聞かれた。 これは難しい質問で、関係国の政府当局者を含め、多くの人が同じ事を言えばだいたい正しいと考える、と答えた覚えがある。 |