北朝鮮流・強兵 ~「強兵」で突っ走るしかないか(下)~ 岡林 弘志 (2009.5.18) 北朝鮮がやたらに突っ張っている。ミサイル発射以来、とくに強硬姿勢を続け、ついにはオバマ米政権批判を始めた。期待した米朝直接折衝が始まらない焦りがあるようだ。2012年を目標にする「強盛大国」建設のために、米国による体制保証が不可欠の条件だからだ。 北朝鮮が強硬姿勢をあらわにしたのは、「テポドン2」の発射(4・5)を受けて、国連安保理が対北非難の議長声明を採択(4・13)してからだ。 六カ国協議離脱表明(4・14)、核燃料棒の再処理再開表明(4・25)、安保理に謝罪要求、核実験と大陸間弾道弾発射実験を警告(4・29)。 とくに、安保理への謝罪要求は、その後も繰り返しているが、かつて聞いたことがない。安保理加盟国全体、とりわけ非難決議でなく議長声明に格下げするのに汗をかいたロシア、中国も非難することになるからだ。いわば、世界全体を敵に回すことになる。 注目したいのは、五月に入ってのオバマ政権非難である。 「『多面的協調外交』で騒ぎ、妖術を使っているが、気にくわない国々を力で圧殺しようと狂奔した前政権と少しも変わらない」(5・4) 「我が国への敵視政策に少しも変化がないことが明白になった」(5・8) しかも、オバマ大統領が任命したボズワーズ北朝鮮担当政府特別代表が、中国、韓国、日本を歴訪している最中のことだ。ボズワーズは、北朝鮮訪問も打診したようだが、北は受け入れなかったようだ。 オバマ大統領は、確かに選挙期間中、イラン、北朝鮮も含めてあらゆる国との対話を公約した。このため、北朝鮮は六カ国協議での核放棄と見返りのロードマップを途中で中断してまで、新政権に期待をかけたのである。 ところが、オバマ政権は政権百日を過ぎても北朝鮮との接触に乗り出さない。しびれを切らして、いつもの恫喝戦術を始めたのだろう。 しかし、オバマ政権がいかに対話重視といっても、勝手にミサイルを発射しておいて話し合いに応じろというのは、あまりに虫がよすぎる。「核・ミサイル」の開発放棄という周辺国の意向に反した行為をした国と、唯々諾々として対話をするはずもない。 また、北朝鮮は中朝国境で韓国系と中国系の米国人記者2人を拘束(3・17)し、6月4日に裁判を行うことになった。この拘束は、北朝鮮の秘密警察が協力者の朝鮮族の中国人ガイドを抱き込んで計画的に行った(5・11毎日新聞)ものだという。いわゆる「人質作戦」である。返してほしければ、対話に応じろという意思表示だ。 これほどまでして、北朝鮮が対話を求めるのは、一言でいって「強盛大国」のためには、米国による独裁体制の保証が絶対不可欠と判断しているからだ。そのためには米朝関係改善-国交正常化が望ましい。「強盛大国」と言っても、すべての面で独り立ちできるわけではない。ひたすら「強兵」に突っ走る北朝鮮にとって、経済を立て直し、国民を食わせるには、周辺国の援助が必要だ。援助ができるのは、韓国と日本だ。 日韓は、米朝の関係改善が進めば、バスに乗り遅れるなとばかりに、われわれにも援助させてくれと泣きついてくる。 それに、金正日体制を維持発展させるには、最大の軍事脅威である米国の軍事攻撃をしない、体制をそのまま認めるという確約が必要なのである。 しかし、北朝鮮はいまさら柔軟路線、国際常識をふまえた外交展開はできない。金正日は、何のカードもない北朝鮮は誰からも相手にされないことがわかっているからだ。強面は強面を続けるしかない。 北朝鮮は「核・ミサイル」カードを捨てることはできない。この構図のなかで考えれば、六カ国協議は「六カ国がただ一つのテーブルに着く」という以上の意味は持たないことがよくわかる。 もちろん、「富国」を進める絶対条件である「改革・開放」は、独裁体制の危機を招くために不可能だ。倒れるまで「強兵」で行かざるを得ないのが、独裁体制の宿命だ。このところの強硬路線はそのことを裏付けている。 (了) |