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150日間闘争・強兵

~「強兵」で突っ走るしかないか(上)~

岡林弘志

(2009.5.13)

 

    北朝鮮は、2012年を目標にする「強盛大国」、すなわち政治・軍事・経済での大国を打ち立てるという。北朝鮮流の「富国強兵」だ。そのための大キャンペーンが始まったが、実際には「強兵」だけが強調され、「富国」はおざなり。まして国民が安心して暮らせるようなどという配慮はまったく見られない。

 

    「皆こぞって、150日戦闘で栄えある勝利者になろう!」


    北朝鮮は四月下旬から大キャンペーンを始めた。故金日成主席の生誕100周年に当たる2012年に「強盛大国の大きな扉を開く」目標を立て、今年を「決定的な転換の突破口を開く」年と位置づけている。そのために全国民を総動員するのが「150日戦闘」だ。

 

    これまでも、北朝鮮は「70日戦闘」「100日戦闘」「200日戦闘」などがあったが、今回も大行事に向けて、同じような運動が始まった。

 

    朝鮮中央テレビは「金鍾泰電気機関車連合企業所(平壌市)」からの現地レポートを伝え、「戦闘が始まって10日間で2台の電気機関車を生産」と報じた。全国で過酷な目標を設定させられ、労働者はひたすら働かされているのだろう。

 

    北朝鮮からの報道を見ていて、おやっと思ったのは5月9日のテレビ、ラジオ放送だ。金正日総書記が熙川市(慈江道)での現地指導を伝えている。工作機械、電機、精密機械の工場をまわったが、段落ごとに「金正日同志におかれては」という主語が付いている。

 

    これまで、讃える詩などで、こうした書き方は見たことがあるが、一般の報道文でこんなに名前を連呼しているのは異常だ。

 

    これも「150日戦闘の労働者を鼓舞、激励した」とあるから、一連のキャンペーンの一つだが、同時に金正日の健在を強調したかったのだろう。

 

    4月中旬「やせ細った父なる将軍様」に「むせび泣いた」という報道があり、それでも現地指導にいそしむ姿を繰り返し報道することで、カリスマ性を保持しようとしているようだ。

 

    さて「強盛大国」だが、北朝鮮は「政治・軍事面」では達成されたと認識している。その結果、核実験やミサイル発射によって「世界を震撼させた」のである。

 

    ただ、思想面での引き締めは続いており、つい最近も「思想がすべてを決定するという思想論こそ強盛大国建設の出発点」(5・7労働新聞)と強調した。ただ、思想面で「百点」はあり得ない。疑心暗鬼に陥った指導者にとって、現状はいつも不満足だからだ。

 

    問題は「経済」である。「全般的人民経済を発展」させるため、「科学技術を重視し、近代化を積極的に進める」という。これで北朝鮮も民政経済に力を入れるのかと思うと大間違い。実際には「すべてに軍事を優先する」状況下では、資本や資財、エネルギーは「先軍政治=金正日独裁体制の維持強化と、軍需産業に優先的に供給される。

 

    先の最高人民会議で、国防委員会委員に、「テポドン2号」の開発を担当した朱奎昌・党軍需工業第一副部長が起用された。「軍事優先に従い、国防事業を一番の国事として堅持する」(労働新聞)ことを人事面でも裏付けている。

 

    先のテポドン2号の開発費用は、3億ドル前後と推定されている。北朝鮮の年間の食糧不足分100万との穀物を購入できる額だ。軍需への資金投入が増えるコットはあっても減ることはない。

 

    さらには、三年後の「金日成生誕百周年」は大々的に行われるはずだ。父親を限りなく讃えるため、大記念碑的な建造物などが準備されるとなると、結局、民生部門に予算が回ることはあり得ない。

 

    「富国強兵」は、国家が一様に目指す目標だ。しかし、「富国」と「強兵」を同時に達成する国はほとんどない。富国が不十分なうちに強兵に偏ると、国を誤る。戦前の日本がそうだった。

 

    北朝鮮は、韓国との国力の格差を埋めるため、ひたすら強兵に力を入れ、「核とミサイル」の開発に力を入れてきた。「強盛大国」もその延長線上にある。  (続き)