現代コリア

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中国「北朝鮮核保有は不可能」論を評す                             

佐藤勝巳

(2009.5.11)


 韓国のジャーナリスト趙甲済氏が、中国政府は金正日政権の核開発の現状をどう見ているか、という興味深いコラムを本サイト(5月4日付「韓・米・日と北・中――7世紀の末と似た東北アジアの情勢」参照)で紹介している。


 「中国政府は、北韓の核および長距離ミサイル技術が、まだ実戦用として配置できない低いレベルだと見る。北韓が核爆弾を500kg程度に小型化してミサイルに搭載し、そのミサイルが目標物に届くほどの技術を発展させるのは不可能か数十年の歳月と数回の追加的核実験が必要だというのだ。それで韓・米・日の『過剰対応』に反対するという。脱北して韓国に来たある高位級の北韓科学者も、『北韓側が国際的な封鎖のため、技術や部品を輸入し難くなり、核とミサイルの開発において乗り越えられない壁に直面しているのは事実だ』と話した」


 つまり、中国政府が金正日政権の核開発能力を「不可能か数十年の歳月と数回の追加核実験が必要だ」と見ていることを、初めて公にしたものである。これが事実なら、こんな結構な話はなく、大ニュースである。こうした情報を日本のメディアは掴んでいるのかどうか、反応は鈍い。


 この中国政府の見方が正しければ、金正日政権の核保有は事実上不可能だということになる。だが、この種軍事情報は、根拠がわからないと鵜呑みにすることは出来ない。なぜなら金正日政権が、このまま弾道ミサイル発射や核実験を継続すれば、韓国・日本とも「相互抑止」という観点から核保有へと世論が傾いていくのを避けられない。


 日本のミサイル技術は将軍様の国よりはるかに優れている。鹿児島県種子島で打ち上げている日本のミサイル燃料は、北朝鮮と違って液体ではなく、固形である。また、北朝鮮の弾道ミサイルは、ブースターの切り離しに失敗しているが、日本のミサイル技術はとっくにその域を越えている。そのミサイルの弾頭に核が搭載されるのは、中国にとっては悪夢の筈だ。


 また、北の核ミサイル開発が進展すればするほど、米日のミサイルディフェンス(MD)の精度は高められていく。日韓の核保有、MDの配備は、東アジアにおける中国の軍事力の相対的低下に繋がる深刻な事態となる。


 従って中国政府の発言は、自国の安全保障上、意図的に金正日政権の核ミサイルを過小評価して情報を流している可能性は否定できない。また日韓の核保有はアメリカにとっても困ることだ。この点米中の利害は一致している。


 今回中国は、如何なる意図をもって韓国に、金正日政権の核保有否定論を流してきたのか。その動きには大変興味あるところだ。思い切った推測をすると、金正日政権の4月の弾道ミサイル実験を契機に、韓国保守派の中から核保有論が台頭してきていることに対する牽制ではないか。情報心理戦と私は見ている。


 実は、10余年前、在日朝鮮人から「わが国はミサイルなどのハイテク部品を全く作れない。あの工業水準で核保有は無理」という趙甲済コラムの脱北者の話と似た話を聞かされている。


 金正日政権は、政治目的を実現するために、ウソ、ハッタリ何でもありのところだ。わが国は、統一した情報機関を持たなければ、国際情報戦に立ち向かうことは到底出来ななくなっている。政治家達は早くこの事実を知って欲しい。