現代コリア

TOP     日本     韓国(大韓民国)     北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)     その他     コラム一覧     佐藤勝巳     岡林弘志     五味洋治     田中明     会社紹介      

テポドン2号発射と日本の安保                                                   佐藤勝巳

(2009.4.6)

 

 予測通り金正日政権は4月5日午前11時30分ごろテポドン2号を発射した。この発射に対する米国などの反応は、撃ち落さないで「制裁」も06年の国連決議1718などを「再確認する」という形式的なものになりそうな気配だ。


 こうなったのは国連常任理事国の中国・ロシアが実効性ある制裁に消極的と説明されている。中国・ロシアの思惑は別にして、問題は、オバマ政権に中国・ロシアを制裁に同調させる積極的外交姿勢が見られなかったことである。なぜか。


 オバマ大統領の頭の中は、自国の経済問題で頭がいっぱいということは誰の目にも明らかである。外交問題で関心が向いているのは、①イラン、②イラク、③中国の順序で、金正日政権のミサイル発射など殆ど関心の対象外ではないかと思われる。


 テポドン2号の燃料は液体である。世界中で弾道ミサイルの燃料が液体を使っているのは金正日政権以外にない、時代遅れのしろものである。ちなみに鹿児島県種子島で打ち上げているわが国のミサイルの燃料は通常火薬を使った固形燃料である。時代遅れであるから失敗して破片が落下してくる可能性があるのだ。


 自動小銃の時代に1回1回引き金を引く三八式歩兵銃みたいなものである。やぐらを組んでミサイルを立て、液体をロケットに注入する摸様が世界中のテレビの画面に映し出されている。兵器としては役立たないものだ。


 なぜなら、あの発射台は巡航ミサイルで容易に破壊でき、破壊されたら発射できない。巡航ミサイルはジェットエンジンで1秒間に330メートルほどの速さで、水平に高度50メートルで飛行可能なためレーダーでは捉えられない。標的への誤差数メートル、通常火薬爆弾と核爆弾も搭載できる、というもので防御できない兵器である。


 極東からインド洋までをカバーしているのがアメリカ第七艦隊である。日本の横須賀を基地とする原子力空母ジョージ・ワシントン(81,600トン・搭載機85機・乗組員・兵員計5680名) と旗艦ブルーリッジを含め9隻の最新鋭のイージス艦、3隻の攻撃用原子力潜水艦、駆逐艦7隻、そのほか7隻の輸送艦隊で編成されている。


 9隻のイージス艦はすべて大陸間弾道弾(BMD)に対応能力を持っているだけではなく、イージス艦1隻に240発程度の射程1300キロ(横須賀沖から発射すると北朝鮮のすべての軍事施設に届く)の巡航ミサイルを搭載している。


 第七艦隊に配備されているイージス艦が保有する巡航ミサイル総数は2000発以上である。そのほか、航空機、駆逐艦には各種のミサイルが装備されている。建前として、金正日が軍事的に日本に向けて攻撃すれば、北朝鮮の軍事施設は瞬時にして「火の海」と化すことになっている。


 このアメリカ最大の第七艦隊は、テポドン2号発射に備えて日本列島周辺に遊弋していることは間違いなかろう。


 日本の安全は空気や水のように存在しているのではなく、日米安保条約に基づいて、米軍は日本の安全を保障する強力な担保となっているのである。


 こういう軍事バランスの中でテポドン2号発射を位置づけると玩具のピストル程度のものでしかない。だから口にこそ出さないが、発射したかったら発射させればよい、という考えがアメリカにあることは疑いない。更に金正日政権に軍事にカネを使わせ、経済破綻に追い込むという狙いも隠されている。


 この認識は、民主党クリントン政権8年、ブッシュ共和党政権8年計16年間支配し続け、今またオバマ政権に引き継がれている。


 その間に北朝鮮は核実験をし、長距離弾道ミサイルを実験するまでに至った。周知のように金正日政権は、射程1300キロの中距離弾道ミサイル「ノドン1号」を200基ほど持っている。核爆弾を1トン以下に縮小できれば(既に縮小したとの報道が3月31日付産経新聞になされている)、わが国は絶えず金正日政権の核の脅威に脅かされる。


 現在のミサイル防衛(MD)の能力では10発中撃ち落せるのは6発程度、確率60%というのが専門家の見方である。


 このような深刻な事態が目前に迫ってきているとき、破片を撃ち落す迎撃ミサイルがテレビに大々的に映し出されていたが、とんでもないピント外れの報道といわなければならない。


 ブッシュ政権は昨年10月、日本の意向を無視して北朝鮮に対するテロ支援国家指定を解除したことは記憶に新しい。ここから引き出される教訓は、アメリカがどんな強大な軍事力を保持していてもアメリカのための軍事力の発動はあっても、アメリカの政権益を犠牲にして、日本のために軍事力を発動することはない、ということだ。


 現実がこうなのだから、自国の安全保障をアメリカに全的に依存してよいのかどうかが、今鋭く問われているのだ。


 言葉を替えて言えば、日本の防衛はミサイル防衛だけではなく、巡航ミサイルの保有が不可欠なものとなってきている。なぜ、専門家たちはこのことについて真剣に議論しないのか、不思議でならない。