北朝鮮がとんがっている 岡林 弘志 (2009.3.26) このところ、北朝鮮がいやにとんがっている。 この強硬路線は、金正日総書記の健康悪化の副作用か、それとも独裁体制の維持強化の表れか。いずれにせよ、隣近所にとっては迷惑な話だ。 とんがった原因の一つは、米韓合同軍事演習だ。 合同演習は、毎年行われている。今年は「キー・リゾルブ」と名付けられ、3月9日から20日までの間、東海岸などで展開され、一部は報道陣にも公開された。 ところが、今年は演習開始に合わせて、軍関係の声明が続いた。 朝鮮人民軍最高司令部は「一種の宣戦布告だ」という強硬な警告を発した。 具体的には、韓国との軍事通信網を遮断した。これは南北経済協力事業である開城との往来の安全保障のために利用されている。このため、一時は570人ほどが足止めを食った。しかし、一週間後には通行や通信を再開させ、人と物の行き来はできるようになった。 北朝鮮は毎年、演習中止を呼びかけているが、これほど神経質になっているのは珍しい。「南北和解」の象徴が、北朝鮮の思惑でいつでも「人質の団地」に変質する極めて脆弱な存在であることを露呈した。 もっとも、北朝鮮の韓国非難や嫌がらせは、昨年2月「南北相互主義」を掲げた李明博政権の登場以来のことだ。 10月には「北南関係の全面遮断も」、12月には南北連結鉄道の運行と開城観光事業の中断、そして、今年1月末にはこれまでの南北合意をすべて「無効化する」と宣言し、南北関係は「火と火、鉄と鉄がぶつかり合う戦争の瀬戸際まで来た」と盛んに危機をあおってきた。 金大中、盧武鉉政権と続いた10年間の融和路線は、北朝鮮の言いなりだった。一方的にカネとモノを提供して、核とミサイルの開発を促進する結果を招いた。こうした韓国の「太陽政策」を続けさせようとする狙いだろうが、虫のいい話だ。 もう一つのとんがりの原因は、米国のオバマ政権だ。 大統領選で「対話路線」を公約したため、北朝鮮の期待は大きかった。 しかし、先にアジアを歴訪したクリントン国務長官は「米朝関係改善には北朝鮮の核放棄が必要だ」「北朝鮮が韓国との対話を拒否するなら、米国との関係改善も期待できない」と原則論を繰り返し強調した。 北朝鮮が先に予告した「人工衛星」打ち上げについても「いかなる目的であれ、国連安保理決議違反だ」と厳しい姿勢をみせている。これに呼応するように、米軍はハワイ沖で、ミサイル迎撃実験を行い、成功したと発表した(3・18)。 北朝鮮は期待を裏切られたと受け取っているに違いない。 つい最近、北朝鮮は米国の食糧支援を拒否する通報があったという。国務省が明らかにした(3・17)。理由は言ってないようだが、毎年100万トンの食糧不足の中で、かなりのやせ我慢だ。 「人工衛星」打ち上げに関しても、朝鮮人民軍の総参謀部報道官は、長距離ミサイル発射を警戒する日米韓三カ国に対して、「衛星への迎撃は戦争を意味する」と強い調子で非難した。(3・9) 北朝鮮は4月4日から8日までの間に、人工衛星「光明星2号」をロケット「銀河2号」に載せて、打ち上げると国際機関に通報した。 しかし、これを素直に受け取る国はない。「銀河2号」は弾道ミサイル「テポドン2号」と専門家は見ている。もし発射すれば、06年7月にミサイルを連射した際、国連安保理でのミサイル開発の停止を求める決議に抵触する。 この打ち上げは、ミサイル技術の向上はもちろん、六カ国協議での主導権確保、米朝協議の催促を狙ってのことだろう。 それにしても、先に(3・19)、朝鮮中央通信が配信した金正日の写真には驚かされた。 金日成総合大学に新しく作られたプールを視察した際の写真だ。アルミのパイプに捕まって立つ姿は、まるで生気がない。腹はひっこみ、服はだぶだぶ、首筋のしわが目立つ。重病を患った後か、何らかの病気が進行中であるのか。これでは金正日の健康悪化のうわさは、さらに広がるに違いない。 人間は健康に支障を来すと、心身の弱みを見せないために、ことさらこわもてを演じる習性がある。取り巻きも柔軟姿勢より、威勢のいい意見を耳に入れて、こびを売る傾向が強くなる。 そうでなくても、独裁体制というのは、絶えずとんがっていなければ、存続できない性癖がある。まして国民に食わせられなければ、対外的な緊張を作り出し、国民の不満を外にそらし、従わせる作業が必要だ。 もしそうなら、これから北朝鮮の強硬姿勢は強まりこそすれ、弱まることはない。 こうしたとき、ばたばたすれば北朝鮮の思うつぼだ。冷静に対処する必要がある。 |