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北朝鮮は、なぜ中国に逆らえないのか~愛憎の中朝60年~
五味洋治
(2008.12.25)

 

連載(16)
第8章 研究し、万一に備える

 

中国の影響力増大は不可避

 

    北朝鮮問題における中国の重要性は今後ますます高まるのは間違いない。その理由は、米国がイラク情勢に足を取られ、北東アジアに力を割く余裕がなくなっているためだ。この傾向は政権が交代しようが変わらないだろう。米国は、北東アジアでの最大の脅威を中国と考えているものの、北朝鮮と中国との特殊な関係に鑑みて、中国に問題解決に向けた責任を取らせようとしている。現実的に、米国は、ここ数年北朝鮮問題を核開発と人権問題だけに絞っていることをみても明らかだ。将来的には、6カ国協議を北東アジアの安保機構に移行させ、米国はこの地域から手を引く考えだろう。

 

    中国側は米国の姿勢の変化を微妙に感じ取っているはずだ。核問題が重大な場面にさしかかれば、特使を送り、北朝鮮側を説得する努力は見せるが、それ以上のことはしようとしない。米国や日本が経済制裁を加えようとしても、何も協力しないし、時には公然と批判する。唯一2006年の北朝鮮の核実験では国連決議に賛成し、厳しい姿勢を見せたが、その後徐々に軌道修正した。

 

    韓国にとって中国は最大の貿易国だ。中国の北朝鮮政策をめぐって公に批判しにくい立場にある。日本は日米同盟を基盤に、何かあれば米国にすがるという図式で、朝鮮半島への影響力は減退している。いや、自ら自分の手を縛っているようなものだ。


 

●文中で言及した以外の主な参考文献

 

    今村 弘子『北朝鮮「虚構の経済」』集英社新書、2005年

   

    佐々木智弘「中国と米国との主導権争い」『アジ研ワールド・トレンド』中国の対朝外交、2003年5月
   

    船橋洋一『ザ・ペニンシュラ・クエスチョン』朝日新聞、2006年
   

    ラヂオプレス『北朝鮮政策動向』各号
   

    李ジョンソク「北韓―中国関係1945-2000」中心、2000年
   

    劉金質、楊准生主編『中国対朝鮮和韓国政策文献匯編(1949-1994)』1~5、

    北京・中国社会科学出版社、1994年
   

    太田勝洪、朱建栄編『原典中国現代史 外交』岩波書店、1995年
   

    益尾知佐子「鄧小平期中国の対朝鮮半島外交 中国外交『ウェストファリア化』の過程」

   『アジア研究』第48巻第3号、2002年7月

 

    「金正日の経済改革」アジア経済研究所、2005年2月

 

    伊藤一彦「1990年代の中朝関係」『北朝鮮総覧』(韓国)48~62ページ、環太平洋問題研究所、2002年
   

    小此木政夫編『危機の朝鮮半島』慶應義塾大学出版会、2006年
   

    濱田和子「北朝鮮核計画の廃棄・検証構想」東京財団研究報告書、2005年
   

     「世界週報」各号、時事通信
   

    高山秀子『国境の河』光人社、2007年
   

    木村光彦・安部桂司『北朝鮮の軍事工業化―帝国の戦争から金日成の戦争へ』
   

    知泉書館、2003年

 


【年表 最近の中朝関係】

 

    1996年 6月 金永南最高人民会議常任委員長が訪中

 

    2000年 5月 北朝鮮の金正日総書記が非公式訪中

 

    2001年 1月 金総書記が非公式訪中

 

           9月 中国の江沢民総書記(国家主席)が訪朝

 

    2003年 8月 北京で第1回6カ国協議

 

        10月 呉邦国・全国人民代表大会常務委員長が訪朝

 

    2004年 4月 金総書記が非公式訪中

 

        10月 中朝国交55年。金永南常任委員長が訪中

 

    2005年 2月 北朝鮮が核保有を公式宣言。中国の王家瑞・共産党対外連絡部長が訪朝

 

           3月 北朝鮮の朴奉珠首相が訪中

 

                7月 中国の唐家璇国務委員が胡錦濤国家主席の特使として訪朝

 

          9月 第4回6カ国協議で共同声明採択

 

          10月 中国の呉儀副首相が訪朝。北朝鮮が11月上旬に予定される第5回6カ国協議に 

                       出席すると公式表明

 

          10月28~30日 胡錦濤総書記(国家主席)が訪朝

 

        10月28日 中国の胡錦濤国家主席が北朝鮮を公式訪問、金正日総書記と会談

 

    2006年 1月10日 金総書記が非公式訪中
     

         3月18日 金総書記の義弟張成沢が訪中
     

         4月 4日 中国の曹剛川国防相が訪朝

 

         4月27日 中国の唐家璇国務委員が28日まで訪朝、金総書記と会談

 

         6月 5日 唐国務委員が訪中した北朝鮮の白南淳外相と会談

 

            7月 5日 北朝鮮が弾道ミサイル連続発射

 

                  10日 中国の回良玉副首相、武大偉外務次官らが訪朝

 

                  11日 胡主席が訪中した楊亨燮最高人民会議常任副委員長らと会談

 

                  15日 ミサイルに関し安保理が非難決議採択

 

          10月 3日 北朝鮮が核実験を予告

 

            9日 北朝鮮が核実験に成功と発表

 

          10日 中国外務省報道局長が「中朝関係に悪影響」と強い不満表明

 

        12日 唐国務委員が訪米

 

        14日 安保理が北朝鮮制裁決議を採択

 

        19日 訪朝した唐国務委員が金総書記と会談

 

    2007年 7月 訪朝した中国の楊潔チが金正日総書記と会談。朝鮮半島情勢について

                      「(緊張)緩和の兆しが表れた」と発言

 

  2008年 6月29日 中国の習副主席が訪朝 金正日総書記と会談。 中朝関係の強化確認