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北朝鮮は、なぜ中国に逆らえないのか~愛憎の中朝60年~
五味洋治
(2008.12.17)

 

連載(11
第8章 研究し、万一に備える

 

米国の狙い

 

    34ページにわたるこの報告書に沿って今後の北朝鮮核問題の行方を考えてみる。米国はすでに、北朝鮮の核放棄を目指すという目標を放棄し、段階的解決に転換した。米国は、北朝鮮における核開発は、体制維持の手段であることに着眼し、核問題は朝鮮半島の平和体制確立の動きの中で解決すべきだと考えている。

 

    米国の現在の戦略基調を具体的に挙げれば、(1)朝鮮半島の平和、和解、東北アジアの安保の構築(2)北朝鮮を変化させることのできる友好的な環境の醸成(3)北朝鮮に完全核放棄させることは難しい。これを認め、拡散防止に重点(4)「米国による対北朝鮮敵対政策の解消が、核問題解決に役立つ」との北朝鮮の主張を受け入れ――である。

 

    北朝鮮に「先核放棄」を求めれば、問題が混乱するだけであり、段階的な解決法を図るだろう。それは、協議過程でほんの少し譲歩し、最大限の利益を確保する北朝鮮の「サラミ戦術」を逆に活用し、米国も米国式サラミ戦術を取り、経済支援や米朝関係正常化を利用するだろう。

 

    平壌への連絡事務所設置、将来の大使館設置、平和協定の前段階となる、朝鮮戦争の終戦宣言(注3)などの活用も考えられる。

 

 

(注3)朝鮮戦争は1953年に休戦協定が結ばれ、国際法的には戦争状態が続いている。休戦協定は第5条62項で、「この休戦協定の条項は相互に受け入れられる修正と追加、あるいは双方間の政治的水準の平和的解決のための適当な協定中の規定により明確に停止されるまで効力がある」と規定している。北朝鮮が核保有し、国連が北朝鮮の核実験に対して出した武力行使を含む「1718決議」が有効な状態では平和条約への切り替えは困難なため、中間段階として「終戦宣言」を宣言することも検討されている。2006年11月18日、ハノイでの米韓首脳会談でブッシュ米大統領は「北朝鮮が核を放棄すれば、終戦宣言と平和条約を締結する用意がある」と盧武鉉大統領に伝えた。北朝鮮も「朝米協定締結に関する朝鮮外務省スポークスマン談話」(1996年2月2日)で、平和協定までの「暫定協定締結」の必要性に言及している。