北朝鮮は、なぜ中国に逆らえないのか~愛憎の中朝60年~ 五味洋治 (2008.12.15) 連載(9) 第8章 研究し、万一に備える 北朝鮮は核を放棄するか? 現在、北朝鮮をめぐる問題の中で国際的な焦点となっているのは核開発問題だ。核問題については中国が議長国となり、6カ国協議が進められている。北朝鮮は、基本的に核計画の放棄には合意しており、現在その実践段階を迎えている(注2)。 核兵器を開発し保有しながら放棄した国が一つだけある。南アフリカだ。アパルトヘイト(人種隔離)政策で孤立した南アは国連制裁を科せられ、同国の北にあるアンゴラにはソ連の指示でキューバ兵5万人が展開していた。東の隣国モザンビークには親ソ政権ができ、隣国との関係が緊張した。 南アは世界有数のウランの産地であり、その資源を使ってウラン濃縮がひそかに進められた。1974年に核爆弾の製造が正式決定され、79年には、ウラン濃縮型の最初の核爆弾製造に成功した。その後合計6つの核爆弾を持った。しかし冷戦の終結、アパルトヘイト政権の退陣、国際社会への復帰の3つが重なり、核を持つ意味がなくなったため、放棄を決定した。 荒っぽい行動から“アラブの狂犬”と称されたリビアはカダフィ大佐の下、1980年代に核開発に着手した。リビアを米国は、1988年に起きたパンナム機爆破事件を契機にテロ支援国家に指定した。2003年に核兵器開発の放棄を宣言、国際原子力機関(IAEA)などの査察を受け入れた。経済制裁によって、経済は疲弊しており、核開発より経済の発展を選んだ。米国は2006年5月に指定解除を発表した。石油資源を当て込んで、欧州企業が積極的に進出し、日本の石油6社も探査・開発事業に参入している。 北朝鮮が所有するという核兵器のレベルは不明だが、簡単に放棄することはできないだろう。米国との国交正常化が実現するまでは保持し続けるに違いない。 確かに、北朝鮮は2008年、恒例の新年共同社説で、「2012年、強盛大国の門を開く」と宣言した。この意味は、北朝鮮でもさまざまに論じられている。ただし、少なくとも1990年代の経済危機を脱することを狙っているようだ。 北朝鮮は核を使って、米国との関係改善を実現し、緩やかに後継体制を固めていく考えではないか。そうなれば、中国は、場合によっては「北朝鮮」という緩衝地帯を失うことになり、危機感を募らせるであろう。 ウクライナはソ連崩壊で自国内に残された1900の核弾頭を、軍などの反対を押し切って放棄した。見返りは国家の安全と経済支援で、米ロ英仏4カ国が保証した。ソ連時代のウクライナには、核ミサイルが配備してあった。また日本はウクライナに対しては、「核兵器廃棄要員のための医療機器供与」を行っている。 北朝鮮の場合、どう安全を保証するのかは明確ではないが、ここでも、中国が中心となり、関係国が保証する形をとるのは間違いない。ただし、簡単には核兵器を放棄しないはずだ。 (注2)6カ国協議は、2007年2月13日、北朝鮮の核問題をめぐる手順に合意。第1段階で北朝鮮は60日以内に寧辺の実験用原子炉など核施設を停止・封印。監視、検証のため国際原子力機関(IAEA)査察官を復帰させる。見返りは重油5万トン相当の支援。第2段階は、全核計画の申告、全核施設を無能力化。見返りは重油100万トン(初期段階の5万トンを含む)相当の支援を定めた。第3段階は核の完全廃棄をうたった。 |