北朝鮮は、なぜ中国に逆らえないのか~愛憎の中朝60年~ 五味洋治 (2008.12.9) 連載(5) 第8章 研究し、万一に備える 強制送還、20年間続ける 中朝国境秘密議定書 中国は、不法侵入した北朝鮮人を強制送還しているのか、その法的根拠は何か。長く心に引っかかっていた疑問だった。その根拠となる取り決めが判明した。 その取り決めとは1998年7月8日に、中朝の国境警備担当者が締結した「中朝国境議定書」である。完全な秘密扱いだったが、2004年、中国外務省が内部向けに発行した同国の国境関連法令集に、この議定書の原文が中国語と朝鮮語で記載されていた。 私はそれを、中国のある筋から入手した。中国はこの議定書を、脱北者を強制送還する根拠としている。強制送還を締結から20年間、つまり2018年まで続け、簡単な手続きで北朝鮮側に引き渡すことを定めている。 中国は、1982年難民条約を批准している。この条約は正式名称を「難民の地位に関する条約」といい、国連が1951年7月28日、難民の人権保障と難民問題解決のための国際協力を効果的に行う目的で採択した。これに関連し1967年には、「国連の難民の地位に関する議定書」も定められ、中国はこの議定書も批准している。 批准国は、自国で亡命保護を拒否された人に対し、国外退去処分とする前にその拒否内容の再審査を求める権利を認めなくてはならない。 ところが、中国は北朝鮮からの脱出者を、経済苦のため一時的に中国に入り込んだ「不法越境者」と規定し、拘束後、有無を言わせず強制送還しており、「難民条約、難民議定書が定めた義務の履行を怠っている」として国際的な批判を受けてきた。 |