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北朝鮮は、なぜ中国に逆らえないのか~愛憎の中朝60年~
五味洋治
(2008.12.5)

 

連載(3)
第8章 研究し、万一に備える

 

有事の際は中国軍進駐?

 

    それでは北朝鮮有事の際、一体中国はどんな対応を取るのだろうか。それは中国の最高機密の一つであろう。中朝国境を封鎖することや、北朝鮮内の華僑の保護などが考えられるが、中国はもっと先を考えていたようだ。

 

    2008年1月に米シンクタンク・戦略国際問題研究所(CSIS)がまとめた報告書に、北朝鮮有事の際の中国の対応が盛り込まれていた。報告書はCSISの研究員らが前年6月、中国を訪れ、中国の研究機関や人民解放軍の北朝鮮専門家らとの討議をもとにまとめた。タイトルは「手に負えない隣人を見つめて」だった。

 

    万一北朝鮮情勢が悪化し、国際社会の対応が間に合わない場合、中国は秩序回復のため、人民解放軍が北朝鮮に入り、(1)人道的支援を行う(2)民警のような役割を果たし、秩序維持に当たる(3)中朝国境にある北朝鮮の核施設が攻撃されたことによる核汚染を除去し、核や核物質の安全を守ることを検討している、と明らかにした。

 

    報告書は、中国側が、2006年の北朝鮮の核実験を、「国際社会に対する挑戦だけでなく、中国に対する挑戦でもあった」と受け止めていたと指摘している。非常に興味深いことにこの認識は、中国で一般的だった。

 

    報告書は北朝鮮の状況について、「安定しており、金正日の急死などの事態がない限り、今の状態が数年以上は続く」とみている。ある専門家は、中国が北朝鮮の政権交代を考えているとの見方を否定し「安定さえしていれば、誰でもいい」と語ったが、全体的に集団指導体制になるとの見方だった。また北朝鮮の経済改革については、多くの専門家が失望していた。

 

    北朝鮮が不安定化した場合の中国の優先課題は、国境から難民が押し寄せてくることを防ぐことだと指摘。人民解放軍の専門家の中には、北朝鮮は核兵器を放棄するか、中国にとって北朝鮮の戦略的価値、中朝友好協力条約の見直し、米朝関係の急速な改善が中国に与える影響の四点について激しい論議があったとしている。

 

    韓国では、金正日が不意の事故に会った場合、実力者の呉克烈北朝鮮中央人民委員会作戦部長が政局を掌握する可能性がある、という見方が出ている。2006年12月18日中央日報によれば、国会・情報委員会が、平和財団に依頼、作成した報告書「北朝鮮の危機管理体制と韓国の対応策」の内容として公開した。 

 

    報告書は「北朝鮮の非常事態は党政・軍の最高指導者である金正日委員長の死去で招かれるものと見られ、現実化する場合、軍部が政権を掌握する可能性が高い」と指摘している。しかし、北朝鮮の軍部内に、全軍を動員できる能力を持つ部隊がないとの点を挙げ、党政治部の干渉を受けることなく独自の指揮権を握っている呉克烈・中央党作戦部長が、部隊動員の能力と命令服従システムの側面から、最も先に部隊を動かす可能性が大きい、と予測している。 

 

    報告書は、軍部が主導権を握る場合、最も先にすべきことは国家非常事態の宣布で、労働党規約第27条に基づき、北朝鮮内の一切の武力を指揮、統制できる党中央軍事委員会になると分析した。報告書はまた、非常事態以降、北朝鮮が外部との交戦状態に入る場合、最高司令官を中心にした非常統治体制に転じるだろう、としている。