北朝鮮は、なぜ中国に逆らえないのか~愛憎の中朝60年~ 五味洋治 (2008.11.19) 連載(2) 第7章 関係を不断に発展させる 王忠文論文の意味 天津市社会科学院対外経済研究所の王忠文は「朝鮮問題と北東アジア情勢を見る新たな視点」との論文を発表した(注2)。ここには中国の北朝鮮に対する本音が集中的に現れており、大きな反響を呼んだ。この王は、研究者としては無名で、どんな経歴の人間か不明だ。私は、直接連絡を取ろうと天津に電話をしたが、天津社会科学院側は、「出勤していない」の一点張りだった。論文が公表された後、再び論文を発表したとの消息はない。 まず北朝鮮に対する率直な批判が目につく。「朝鮮国内では近年の自然災害のために人民の生活は困窮している。これは誰の目にも明らかな政治的現実であり、しかも世襲政治を維持するために、国内では極左政治と政治的迫害が行われている。わが国のこれまでの政治支持、経済援助に全くの感激の気持ちは微塵もなく、肝心なときにわれわれに十分な理解や全面的な支援を示さない。このような国にわが国は全面的な支持を与える道義的責任はない。また北朝鮮は自ら責任を負わない行為によって米中友好協力関係の発展を阻害している」 一方で北朝鮮との現実的な関係も認めている。「朝鮮はわが国の隣国であり、その国内で戦争が起きることは望まない。このため国際社会、主として米英による朝鮮攻撃については、公式、非公式を問わず、わが国は常にはっきりとした反対の態度を示さなければならない。同時に朝鮮の独断専行的な手法や、それが引き起こすすべての紛争について、交渉や話し合いによる平和的解決を維持すべきである。そうすることによってのみ北東アジア情勢が全面的に安定し、アジア各国の経済成長にプラスとなる環境を創出できる」。これは中国の公式な立場を代弁したものだろう。 同誌は、人民日報の元論説委員の馬立誠や中国人民大学の時殷弘教授が、中国の国際戦略にとって日本との関係強化が国益にかない、「歴史問題」にはこだわるべきでないとする「対日新思考外交」を主張する論文を掲載するなど大胆な論調で知られる。この論文が発表されたあとしばらく停刊処分を受けたが、それだけ、中国側の本心が現れていたと考えても良さそうだ。 (注2)「戦略与管理」:2004年4期 |