北朝鮮は、なぜ中国に逆らえないのか~愛憎の中朝60年~ 五味洋治 (2008.11.7) 連載(10) 第6章 国際世論を味方にする 中朝関係への影 北朝鮮の核実験については、さまざまな見方がある。米国では失敗との見方が多いようだが、実験の実情は未だに詳細が分からない。核実験まで踏み切ることは大方の専門家は予想していなかった。核実験を行えば、中国、日本を含め周辺の国々が一斉に反発し、国際的な孤立がいっそう深まると考えたからだ。ところが、北朝鮮は実行に移してしまった。その損得勘定は今後明らかになっていくだろうが、少なくとも、中朝関係には大きな影を落とす結果となった。 実験に至る過程を少し振り返ってみよう。北朝鮮の核問題をめぐる6カ国協議が停滞していた2006年10月3日、北朝鮮は外務省声明を通じて「核実験を行うことになる」と宣言した。単なる脅しと見る向きも少なくなかった。中国は北朝鮮が7月に行った日本海に向けてのミサイル発射直後に、武大偉外務次官を平壌に送って行動を自重するよう促したが、この声明に対しては特使を送らず、翌4日、中国外務省スポークスマンが「緊張を激化させるような行動をとるべきでない」と自制を呼びかけた。この迅速な談話は、かえって北朝鮮を怒らせてしまったかもしれない。 同9日、北朝鮮は実験に踏み切ってしまう。中国は、核実験をうすうす感じていた節がある。7月から9月にかけて瀋陽軍区の旅団が北朝鮮国境に接する吉林省の長白山(朝鮮名・白頭山)で実弾合同演習を繰り返し、北朝鮮を牽制(けんせい)したほか、中国の一部学者は北朝鮮が自国の利益を考え、実験に踏み切るとの論文を新聞に発表していた。 |