北朝鮮は、なぜ中国に逆らえないのか~愛憎の中朝60年~ 五味洋治 (2008.11.6) 連載(8) 第6章 国際世論を味方にする BDAに消極的 中国はその後も、BDA資金問題の解決に積極的に動かなかった。中国内では、米国はBDAを口実に、中国に対して圧力をかける意図があると分析していた。中国政府内には徐々に、北朝鮮問題を静観すべきだとの「警戒論」が強まっていた。 中国外務省の劉建超スポークスマンは2007年3月22日の定例記者会見で「(資金の移管には)依然として技術的、手続き的な問題がある。解決には一定の時間が必要だ」と述べ、早期解決は困難との見通しを強調した。移管先として名前が挙がっていた中国銀行については「同行を含む関係先にはそれぞれ立場がある」と述べ、むしろ米国側に解決の努力を促した。「まもなく解決する」と甘い見通しを示していた米国とは対照的な冷たい姿勢だった。 北朝鮮の不満は、具体的な行動に表れてくる。2006年7月、北朝鮮は日本海に向けミサイルの発射実験を行った。中国側には事前通報がなかったとされる。中国の唐家璇国務委員は2007年7月8日、松下政経塾出身の与野党議員と北京で会談、北朝鮮のミサイル発射について、中国側が知ったのは「発表の約1時間前だった」と述べた。中国が北朝鮮大使を3回にわたり呼び、ミサイル発射に対する中国の立場を伝達していたことも明らかにしている。 ミサイルをめぐる北朝鮮から中国への連絡については銭其琛国務院副総理も2002年2月8日に、海部俊樹元首相との会見で言及している。この時は、北朝鮮が発射し日本海を越えたテポドン1号のことだ。銭は「3年前の事件は覚えている。北朝鮮がミサイルを発射したことは、事前にわれわれに通報されてないし、当然日本側にも通報しなかったであろう」と、事前の通報がなかったことを明らかにしている。 |