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北朝鮮は、なぜ中国に逆らえないのか~愛憎の中朝60年~
五味洋治
(2008.11.5)

 

連載(5)
第6章 国際世論を味方にする

 

中国の説得外交

 

    それから協議は紆余曲折をたどってきたが、節目節目で中国は政府高官を平壌に派遣してごねる北朝鮮を交渉に戻し、時に譲歩を引き出してきた。

 

    たとえば、第1回6カ国協議の前後には、中国の王毅外務次官、中国の国会に当たる全国人民代表大会の呉邦国常務委員長が訪朝。第2回の後にも李肇星外相が平壌を訪問し、金正日と会談している。

 

    北朝鮮は2005年2月に核兵器保有宣言を行い、周辺国の懸念が増大した。この時期、中国の対北朝鮮窓口である共産党対外連絡部代表団が金正日と会見した。まるで、北朝鮮をなだめるかのように、中国の要人が頻繁に北朝鮮を訪問していた。

 

    6カ国協議の中でも中国の「世話役」ぶりは目立った。第3回まで議長役を務めた王毅中国外務次官はテニス、スキーが趣味で「毎日深夜まで外務省の自分の部屋の電気がついている」と言われた、外務省のエースだ。協議期間中も、渋る北朝鮮代表を1対1で説得し、成果を議長要約や議長声明などにまとめた。

 

    2005年9月、北京で再開された第4回6カ国協議は共同声明を発表、ようやく軌道に乗り始めた。この声明は「検証可能な非核化」を目標に掲げ「すべての核兵器と既存の核兵器の放棄」が盛り込まれた。

 

    一方で、北朝鮮が望んでいた軽水炉の提供について「適当な時期に議論を行う」として盛り込んだ。あいまいさの残る表現だったが、一応朝鮮半島非核化に向けたスタートラインに立った。

 

    現在の議長役・武大偉外務次官は「中国政府内に友人が多く、調整に長(た)けている」と評されていた。共同声明をまとめるため四回も草案を作り、各国間の調整を図り、実力の片鱗(へんりん)を見せた。

 

    もちろん、中国にとって国境を接する隣国北朝鮮の安定は自国の利益にもつながる。ただ、これまで中国は多国間協議には消極的な姿勢で臨んでいただけに、その変貌ぶりは注目の的となった。核問題を通じ、米国と良好な関係を結べば、東アジアでの影響力を高められるとの狙いで(注3)、中国政府内で「北朝鮮関与派」が勢いを増していた。


 

(注3)王 逸舟著「中国外交の新思考」:123ページ、東京大学出版会