北朝鮮は、なぜ中国に逆らえないのか~愛憎の中朝60年~ 五味洋治 (2008.10.31) 連載(3) 第6章 国際世論を味方にする ミサイルの代価 楊亨燮副委員長は、しばしば北朝鮮の代表としてアフリカなどを訪問している。その行き帰りに北京も訪問する。北京を経由するのだ。そのたびに中国側の要人と会っているとみられる。私も、中国側の出迎えを受ける副委員長を北京空港で何回も目撃した。北京で誰と会ったのかはほとんどの場合報道されない。 楊副委員長は2007年7月の訪中で、胡錦濤主席に金正日委員長の親書を渡したという(注2)。親書にはミサイル発射に対する北朝鮮の立場の説明とともに、対北援助を現在年間120億元(約1700億円)から300億元に増やしてくれという内容が含まれていた。ミサイル発射を止める代価とも受け取れる内容だった。 これに対し胡主席は、楊副委員長に韓半島の非核化が中国の一貫した立場であり、それが地域安定のためだ。核問題を引きずれば日本に軍国主義復活の口実を与える。言いたいことがあれば6カ国協議に復帰して堂々と言ってほしいなどと伝え――この条件を受け入れればエネルギーと生活必需品の支援を増やすことを約束した。 北朝鮮側の反応は分かっていないが、その後核実験まで行ったところを見れば、中国側の要望を蹴ったのは間違いない。胡主席は北朝鮮の傲慢(ごうまん)な姿勢に腹を据えかねていたのだろう。 (注2)韓国「中央日報」:2008年8月8日 |