北朝鮮は、なぜ中国に逆らえないのか~愛憎の中朝60年~ 五味洋治 (2008.10.30) 連載(1) 第6章 国際世論を味方にする 核実験への怒り 北朝鮮が核実験を行った2006年は、中朝関係にとって歴史に残る年だった。いつもは双方が本音を見せないが、この年に限っては批判、衝突が伝えられた。いざとなったら中国は北朝鮮に強硬に対応することを示したものだ。将来北朝鮮の体制が不安定になったり、崩壊するような場合、中国は自国への影響を最小限に食い止めるため、相当強硬に臨むことを予測させた。とりあえず2006年を象徴する10月17日の出来事からはじめよう。 この日、日本から北京を訪問した扇千景参院議長や松田岩夫参院議員ら9人は、北京の五輪施設を視察後、市内中心部にある人民大会堂で胡錦濤国家主席との会談を行った。扇議長は「オリンピック会場を視察したが環境重視の調和の取れた工事だ。日本としても協力したい」と切り出した。さらに、日中関係に触れ「政冷経熱と言われているが、自分は少なくとも政暖経熱にすべきだと思っていた。もう政経とも『熱』になる状況になってきた」とユーモアを交えて要望した。最後に、北朝鮮問題に触れ「核実験を行った北朝鮮が、六者会合の場に戻るよう中国の指導力をお願いしたい」と締めくくった。 日本側の話を聞いていた胡主席は日中関係について「雨が上がって晴れ間が広がり、『政経両熱』の状況が生じることを希望する」と応じた。そして、問題の発言が飛び出す。 「北朝鮮の核実験については、中国政府は断固たる反対を表明し、国連安保理の決議採択も支持した。北朝鮮には国際社会の強烈な反応を感じさせる必要があると同時に、各国は協力して冷静に対応し、六者会合の早期再開を実現させると同時に、朝鮮半島の非核化という目標を実現させるべきである」(注1) 残念ながら中国語でどんな表現を使ったかは分からない。「強烈な反応を知らしめるべきだ」という中国最高指導者のこのストレートな批判は、その日の夜に放送された中国中央テレビのニュースでは慎重に削除されていたが、翌日、日本の新聞では大きく報道された。中国が、北朝鮮を教え、諭す立場にいることを図らずも示していた。 日本では北朝鮮に関するニュースが大きくなりやすい。日本からの要人に北朝鮮批判をあえて口にしたのは、北朝鮮の中枢部に婉曲(えんきょく)にメッセージを伝えるという、主席なりの計算があったためだろう。 主席が言及した決議は同14日には、国連安全保障理事会が全会一致で採択した北朝鮮の核実験に対する制裁決議だった。中国の王光亜大使は、この決議採決の過程で、「(北朝鮮には)懲罰的な措置は必要だが適切な内容であるべきだ」と言及した。これは、AP通信などにも引用された。英語で言えば「PUNITVE」という厳しい言葉である。北朝鮮を懲(こ)らしめ、思い知らせるべきだとの認識が、中国指導部にあったのは間違いない。 (注1)「参院議院運営委員会議事録」:2006年12月19日
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