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北朝鮮は、なぜ中国に逆らえないのか~愛憎の中朝60年~
五味洋治
(2008.10.27)

 

連載(18)
第5章 裏切られても関係を守る

 

最も短い会談

 

    1992年7月、銭其琛は代表団を率いて訪朝した。中韓国交への理解を求める江沢民のメッセージを伝えるためだった。「外交十記」にそのときの様子がリアルに描かれている。銭の乗った飛行機は、平壌の空港の端に止めさせられた。出迎えは金永南最高人民会議常任委員会委員長だけだった。しかもそれから飛行機に乗って、金日成の保養地に連れて行かれる。

 

    金日成は中国が韓国と国交を結ぶ方針を聞き、しばらく考え込んだうえで、江総書記のメッセージを確かに聞いたと言い、そして「われわれは独立、自主、平等に自らの外交政策を決定したことを理解する。われわれは引き続き中国との友好関係増進に努め、一切の困難を克服して自主的に社会主義を堅持し、社会主義を建設していく」と述べた。

 

    この会談は、銭の記憶では、過去金日成と中国側代表団の間で行われた会談のうち最も短いものだった。8月24日には、中韓国交樹立で北京を訪れた韓国の李相玉外相と中国の銭其琛外相との間で共同声明が調印される。国交樹立後、北朝鮮は一時中国人観光客、朝鮮族の親戚訪問規制を行った。

 

    「中国が韓国と外交関係を樹立する上での難点は、双方の関係にあるのではなく、中国と(北)朝鮮の関係にあった。つまり、中国との伝統的な友誼関係にある(北)朝鮮に、この種の外交政策の調整をどのようにして徐々にわからせ、受け入れさせるかにあったのだ」と、のちに銭は回顧録に記している(注28)。

 


(注28)銭其琛著、浜本良一訳「銭其琛回顧録 中国外交20年の証言」:143ページ、東洋書院