北朝鮮は、なぜ中国に逆らえないのか~愛憎の中朝60年~ 五味洋治 (2008.10.23) 連載(13) 第5章 裏切られても関係を守る 同盟関係の終焉、胡耀邦訪朝 1982年から92年までは中朝の蜜月期だった。中朝間の高官訪問は85回にのぼり、うち北朝鮮側から中国への訪問が71回と突出して多かった(注19)。83年5月の胡耀邦総書記の訪朝は、中国が北朝鮮との伝統的な関係は維持しながら、軍事同盟を薄めるステップともなった。 胡耀邦は平壌駅では閲兵式に臨んだほか、錦繡山議事堂で会見歓迎宴会、万景台で金日成主席の生家を見学した。また万寿台芸術劇場で演劇の鑑賞、大衆歓迎大会に出席。海軍基地や北朝鮮の誇るビニロン工場、清津港なども見学した。 金日成との会談は7時間に及び、2人だけの単独会談も3時間行った。訪問終了後、中国の延吉市に戻った胡は、新華社の記者の質問に答え「われわれは朝鮮半島情勢の長期的安定と朝鮮の自主的平和的統一問題について深い討論を行い、完全に同じ見解に達した。われわれは金日成同志と朝鮮労働党の主張に完全に賛同した。つまり(朝鮮の)自主的で平和的な統一と、連邦制の実現だ、方法は協議を通じてである」と語っている。 さらに、朝鮮半島情勢の緩和について「金日成同志は再三にわたって丁寧にこう語った。わが国は十分関心を持ち、誠心誠意、朝鮮半島情勢の緩和と長期安定を希望している。朝鮮側は安定を破壊するいかなる行為も行わない。南進する考えは全くない」と説明し、北朝鮮側が、半島情勢安定に協力する考えであることを強調した。また韓国の駐留米軍問題については「われわれは一貫して駐留に反対してきた」と表明し、「朝鮮側も米軍の撤退について話し合う意向を明確に示した。われわれはすでにその意向を米国側に伝えた」と述べ、北朝鮮と米国の橋渡しを行う考えも示した。 北朝鮮滞在中には、両国関係を「中朝の友誼は、白頭山の青い松が雪や霜にあっても常緑だ。中国、朝鮮両国民の友情はとうとうと流れ、やまない」「天池の清水が千年万年枯れないような万古長青で偉大な朝中友誼」と表現している。だが「鮮血で固めた友誼」という表現は一回も使わなかった(注20)。 1983年11月末に訪日した胡耀邦主席は中曽根康弘首相と会談した際、金日成主席が直接語った言葉として「北から南に侵攻しないし、その力もない」との言葉を紹介。「中国は朝鮮半島情勢の長期安定を希望している。同半島の緊張激化は、どこからくるものであろうとも、あくまで回避すべきだ。南北朝鮮の自主独立の統一を期待する。ラングーンでの事件は、詳細を承知していないが、中国はどこの国のものであろうともテロ活動には反対する」と述べ(注21)、北朝鮮を牽制した。 (注19)「中国与朝鮮半島国家関係文件資料匯編(1991~2006)」:(上)、10ページ、世界知識出版 (注20)「中朝友誼史上新的一頁 胡耀邦總書記訪朝文集」:人民出版社 (注21)「盧泰愚肉声回顧録」:82ページ、朝鮮日報、2007年 |