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北朝鮮は、なぜ中国に逆らえないのか~愛憎の中朝60年~
五味洋治
(2008.10.6)

 

連載(13)
第4章 個人的関係でつなぐ

 

突然の自己批判

 

    続いて28日夕に開かれた歓迎式典での胡錦濤はこう挨拶した。「われわれは、中朝親善・協力関係をさらに深く発展させるために中朝双方は、高位級往来を一層密接にし、意見交換を強化し、交流分野を拡大し、協力内容を豊富なものとし、貿易と経済協力を推進、共同の発展を促進、国際舞台において積極的に協力し、共同の利益を守護すべきだということで合意した」。一方で、挨拶は不思議な展開をする。胡主席はもっぱら自国の経済に集中したのだ。

 

    まず「1978年から2004年までの26年間、中国の国内総生産額は年平均9.4%で成長し、1473億ドル未満から1兆6494億ドルまでに増え、輸出入総額は年平均16%を超えるスピードで伸び、206億ドルから1兆1548億ドルまでに拡大した。2004年末までに中国において実際に行われた外国直接投資額は累計5621億ドルに至った」と具体的な数字を上げ「正しい道を歩んでいる」と自信を見せた。

 

    その一方で「中国は相変わらず世界的に最も大きな発展途上国であり、人口が多く、基礎が弱体であり、発展が極めて平等でなく、前進途上に依然として少なからぬ顕著な矛盾と問題が提起されている初歩的に富裕な社会を全面的に建設するという目標を実現するためには、依然として苦しい努力を傾けなければならない」と述べた(注16)。これは、遠回しながら北朝鮮に経済改革を求めたのではないかとの憶測をもって受け止められた。

 

    北朝鮮に対する胡の姿勢は、毛沢東、鄧小平、江沢民などの過去の指導者とは大きく異なっているようだ。毛沢東、鄧小平は朝鮮戦争の際、中国軍の参戦を直接決定した革命世代であり、金日成とも親しく交流し、自分の政策を詳細に説明している。また、江沢民前主席も抗日闘争を経験しており、北朝鮮には同志的感覚があったと思われる。

 

    胡錦濤主席は朝鮮戦争を直接知らない世代だ。金正日も幼いときに中国で暮らした経験はあるが、軍勤務はない。北朝鮮と金正日に対し、連帯意識や革命の同志としての義務感はほとんどない。胡就任以後、中朝関係の重点は政治・軍事交流から経済交流や経済協力に移行しているのがその現れと考えられる。しかし、北朝鮮が中国にとって緩衝地帯となっている現実は受け止めているはずで、北朝鮮とは是々非々でつきあっていくだろう。

 

 

(注16)「朝鮮中央放送」:2005年10月29日