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北朝鮮は、なぜ中国に逆らえないのか~愛憎の中朝60年~

五味洋治

(2008.9.10)

 

連載(1)

第3章 資源を押さえる


誘致マニュアル
 

    北朝鮮の資源開発に関して私の手元に興味深い資料がある。北京に駐在していた2005年、北朝鮮が中国企業を対象に行った投資説明会の資料、いわば「投資誘致マニュアル」である。A4用紙7枚に渡り、ハングルワープロで打たれている。

 

    私が、北京の北朝鮮大使館員からひそかに入手したものだ。貿易省傘下にあった「対外経済協力促進委員会」が作成した。北朝鮮を訪問した中国人実業家に北朝鮮の経済状況を説明する内容である。北朝鮮の最低賃金、税金体系、地下資源の埋蔵量について言及している。これが経済破綻(はたん)に苦しむ北朝鮮の売り物だ。中国はそこを、素早く完全に押さえている。

 

    当時は賃金の大幅引き上げ、実勢価格に合わせた物価引き上げを柱とした2002年7月1日の「経済管理改善措置」(7・1措置)により、北朝鮮の経済部門にも活気が満ちていた。国内の事情を率直に伝え、投資を呼び込み、実利を得たいとの意欲があったようだ。核を使って強引な外交を展開している北朝鮮の別の顔だ。一部を引用してみる。

 

    「中国からわが国に来た各企業家のみなさんを熱烈に歓迎する。中国はわが国と山と川がつながった親善的な国です。今日の説明会では三つ説明したい。わが国は経済管理方法を不断に改善していることについて。二つ目は外国の投資を歓迎、優遇、奨励していることについて。われわれが優先的に受けようとしている投資についてだ。

 

    昨日の経済管理方法が、その時はよかったとしても今日(現実に)合わなければ直さなければならず、仕事をしていく過程で、不合理なことや直すべきことがあるなら、すぐに直さねばならない。

 

    経済事業で実利を得るには昨日のことにふたをして、固執するのではなく、変化する環境と条件に合うように管理と方法を能動的に対応していかねばならない。

 

    こういう思考と観点からわが国では2002年7月に、経済管理で重大な措置を取った。われわれが全般的価格と生活費を改善する措置は、無料と平均主義をなくした。以前に比較し、生産能力は1.2~1.5倍に高くなった。

 

    その後も国家の統一的な指導によって下の単位に多くの権限を与え、創発性を保証しながら、責務に見合った権利を行使するようさまざまな対策を取った。」