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北朝鮮は、なぜ中国に逆らえないのか~愛憎の中朝60年~
五味 洋治
(2008.9.5)

 

連載(16)
第2章 経済と油で支配する

 

危機的なエネルギー事情

 

    北朝鮮には安州市近郊と北部豆満江中流部の咸鏡北道訓戒西方約5キロの2ヵ所に精油所がある。中国からの原油は距離的に近く、規模の大きい安州市北東方の製油所に送られている。ここで、白物石油製品(ガソリン、ジーゼル油、灯油)を分離している。北朝鮮軍の装備もエネルギーを全面的に中国に依存しているという。

 

    また製油後の油は火力発電所に運ばれ、発電に使われている。北朝鮮には旧ソ連の支援で建設された火力発電所が平壌、先鋒、清津、先倉にある。先鋒火力発電所は羅先市に位置する初の重油専用火力発電所で、発電量は20万キロワット(年間原油50万トン)規模とされ、KEDOからの支援重油はここで使われていた。現在は稼働停止中だ。

 

    韓国統一省は、北朝鮮の総発電設備容量を約780万キロワット、総発電量を韓国の約6%の約200億キロワット時(2004年現在)としている。しかし、原油不足や施設老朽化のため、実際の総発電設備容量は200万キロワット程度に過ぎないと推定している。

 

    2004年のIEA(国際エネルギー機関)統計によれば、北朝鮮の発電量のうち、火力発電は全発電量の約43%で、約56%は水力発電が占め、水力発電優位が続いている。100万キロワットの発電所を1年間運転させるのに必要な石油の量は131万トンとなる(注17)。100万トンの原油が支援されれば、これらの発電所が本格稼働し、発電量も大幅に増える見通しだ。

 

    ただし、北朝鮮は6カ国協議の「経済・エネルギー支援作業部会」で「わが国には、原油5万トン以上を備蓄する能力がない」とも説明したことがあり、備蓄能力に構造的な問題を抱えている。

 

    電力不足でどんな問題が起きているか、北朝鮮の公式メディアが伝えたことがある(注18)。「鉄道輸送や火力発電所への石炭輸送、工場や企業の操業、公共交通機関の運行、公共施設の運用に影響が出ている」としている。かなり広い範囲で影響が出ているのだ。

 

    2007年の「労働新聞」などの新年共同社説も「電力・石炭工業部門の活動家は経済強国建設で抱いた重い責任感を深く心に留め、緊張した電気・石炭問題を決定的に解決しなければならない」と呼びかけた。

 

    それでは北朝鮮は、発電力増強のため原油や石油製品をどれだけ輸入してきたのか。

 

    1980年代まで北朝鮮は年間計250万~100万トンの原油や石油製品を輸入していた。そのうちの100万トンを中国、100万トンをソ連、残り50万トンを中東から供給していた。ソ連の崩壊でロシアからの輸入はそれまでの1割に落ち込んだ。

 

    1994年の米朝枠組み合意で、年間50万トンの重油支援を手にしたが、その後打ち切られたことはすでに触れた。中国の原油輸出量は、96年までは年間100万トンを越えたが、97年以降は40万トン前後にとどまっている。これにロシアが40~50万トンの石油製品を輸出しており、北朝鮮はかろうじて100万トンを確保している計算だ。

 

    中国から北朝鮮への原油の価格は、援助開始当初は対世界価格のわずか7分の1から、3分の1だったが、91年以降はほぼ同じか、やや高くなっているという(注19)。両国のドライな関係を証明しているとも言えそうだ。

 

 

(注17)資源エネルギー庁ホームページ

(注18)「朝鮮中央通信」:2003年1月30日

(注19)今村弘子「中朝の経済関係」「聖学院大学セミナー報告書」51ページ:2006年11月17日