北朝鮮は、なぜ中国に逆らえないのか~愛憎の中朝60年~ 五味 洋治 (2008.9.2) 連載(5) 第2章 経済と油で支配する 東北の拠点、延辺 中朝間の貿易は一般、国境、加工、保税、援助、その他の6種類に分けられる。一般貿易がもっとも多いが、国境貿易は、国境地帯の貿易に活気を与えるために、住民に関税や付加価値税減免などの特典を与えるものだ。保税貿易は北朝鮮の特産品が中国を経由して北朝鮮に輸入され、または第三国の品物が中国を経由して北朝鮮に入る輸入貿易を指す(注5)。 朝鮮半島を故郷に持つ朝鮮系中国人「朝鮮族」が多く住む吉林省の延辺朝鮮族自治州は、北朝鮮との貿易の重要地点である。延辺では、1990年代に北朝鮮との貿易が高い伸びを見せた後、激減し、最近になってようやく回復基調にある。 同地域とロシアとの貿易は急成長しているのに比べ、対北朝鮮は地の利がありながら足踏みしているのは、両国をつなぐ道路や鉄道の不備によるものだ。このため、中国側と北朝鮮の港を直結する計画や、ロシア国境の黒竜江省綏芬河から、吉林省図們、遼寧省丹東などを経由し大連まで、中朝国境に沿って既存の鉄道をつないで1300キロの一本の鉄道にする、「東辺道鉄道」計画が生まれた。この鉄道は一部が2006年4月に着工されている。 さらに関心を呼んだのが、中国側の琿春市と北朝鮮の羅先市を直結する開発計画だった。同港のある羅先市に設立された中朝合弁の「朝鮮羅先国際物流合営公司」が公表したもので、羅津港から中朝国境の元汀を結ぶ48キロの道路を整備し、羅津港の3号埠頭と、今後建設される4号埠頭の50年間の使用権を獲得、同港湾地区に工業団地と保税区を建設する。 貨物の代理運送、観光地開発も行う予定で、総投資額は6000万ユーロ(約82億8000万円)以上になるという。琿春市と羅先市は、直接投資はせず、事業を支援する。 当初から資金確保が問題視されていた。総工費は約6000万ユーロだが、北朝鮮側は道路や埠頭の使用権という現物供与だけで、資金は一切出さない。中国側企業は資金調達に奔走しているが、十分な資金は集まっておらず、計画は宙に浮いている。米国の企業が計画を請け負ったとの報道もあったが、これも頓挫したという。 朝鮮羅先国際物流合営公司で、中国側から理事長に就任した範応生に2006年に琿春市で直接会って計画について聞いたことがある。 範は、北朝鮮側と交わしたという契約書を私に見せ、「道路工事のため、すでに中国人技術者22人が北朝鮮側に入っている。中国から羅津港への年間輸送量は、現在20~30万トンだが、道路と港の工事が終了すれば、5倍の100万トンに増加し、将来的には5000万トンに増える」とこの時点では自信満々だったが、その後は連絡がつかなくなった。 (注5)権哲男「北朝鮮核問題が中朝貿易に与える影響」:48~54ページ 『国際金融』外国為替貿易研究会:2007年4月1日号 |