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北朝鮮は、なぜ中国に逆らえないのか~愛憎の中朝60年~

五味洋治

(2008.8.25)

 

連載(2)

第1章 自国内での金儲けを認める

 

給与は6万円?

 

    外交官としての待遇も良くはない。私が親しくしていたある北朝鮮大使館幹部は「自分の給与は月約500ドルだ」と話していた。日本円にすれば6万円程度だ。彼は子供を平壌に置いてきていたが、中国で子供を学校に通わせている人は負担が大変だという。

 

    それではどう生計を立てているのか。これは実際に彼に聞いた話である。外交官は高麗航空や、平壌に行く国際列車の切符を優先して買える権利がある。これを他人に譲り、手数料を手に入れる。一種の横流しだ。

 

    さらに、北朝鮮への投資を考えている中国人ビジネスマンの商売を手助けし、謝礼をもらうこともある。たとえば平壌への渡航ビザ、北朝鮮側の担当者とつなぎ、口を利くことだ。大きなプロジェクトを実現させれば、もちろん見返りも大きくなる。

 

    これは大使館に出入りしていた別の人間から聞いた話だが、外交官には優先的に北朝鮮国内で生産される偽ブランドたばこが支給される。急に現金が必要な場合には、これを闇ルートに売り、収入にしているという。

 

    米国との間で問題化している偽ドルについて詳しい話は分からなかった。米国は、偽ドルは北朝鮮が作ったものだとして、マカオの銀行と米国銀行の取引を停止する「金融制裁」を行ったことがある。ただ、北朝鮮は北京にもドル口座を持ち、そこを本国への送金窓口にしていたのは間違いない。それが分かったのは簡単なことからだった。

 

    私は赴任後、北朝鮮大使館に朝鮮労働党機関紙「労働新聞」の購読を申し入れた。担当者が電話を寄越し、年間購読料700ドル(約7万円)と口座の振り込み先を告げた。口座は大使館の近くにある四大銀行の一つ、中国商工銀行で、名義人は北朝鮮人と思われた。

 

    毎日発行される新聞とはいえ、安い購読料ではない。そこで「振り込みを確認したら、私に連絡してほしい」と頼むと、その担当者は「口座は本国が管理しており、入金があったかは直接確認できない」と言う。新聞の購読料だけでなく、中国国内で集められた外貨は、中国の銀行を通じて本国に吸い上げられていたのだ。