政府の方針が変わったのだ 佐藤勝巳 (2008.6.21) 今回の拉致被害者の「再調査」に伴う日本政府の「制裁の一部解除」騒動であるが、6月13日午後7時からの斎木外務省アジア大洋州局長の家族会・救う会などへの説明では、「制裁を解除した」、もしくは「解除する」というものであった。 ところが、6月17日午後1時30分からの町村信孝官房長官の家族会・救う会・拉致議連に対する回答並びにその後の政府の国会答弁では、「金正日政権が、拉致被害者を帰すという行動を取らない限り、制裁は解除しない」また、「拉致の進展なくしてテロ支援国家指定解除には反対する」と変わった。 これが現時点での福田内閣の拉致被害者救出に対する方針である。13日の政府見解が17日には変化したことを、マスコミははっきり書いていない。 それでは、なぜ数日間で政府見解が変わったのかというと、政府自民党内に強い反対と疑問が出たことと、拉致関連3団体はじめマスコミや国民から「金正日政権が、『再調査』と言ったからといって、制裁解除などとんでもない」という声が澎湃として沸き起こり、態度を変えざるを得なかった、というのが私の分析である。 救う会全国協議会に加盟している一部には、「簡単に制裁を解除する政府と『in○○集会』などとんでもない、中止すべきである」と言っている人もいるが、この主張は正しい。 なぜなら3月16日の救う会全国協議会幹事会は ◆ 万一、政府方針が改悪される場合は、座り込みやデモなどで強力に抗議する準備をしておく。 ◆ 『人道支援』の名目で拉致解決を妨げる支援を再開しようとする動きに警戒する」と決めていた。 だから、6月13日の政府見解なら「政府の方針が改悪された」と解するのが妥当であろう。全国協議会執行部は、外務省斎木局長の説明を受けた直後から、政府方針の転換を図るべく、家族会・議連・拉致対策本部などに積極的にはたらきかけ、6月17日午後の官房長官回答及び国会答弁を得ることが出来たのだ。 政府の見解が当初のままなら、全面対決となることは改めて言うまでもないことである。 しかし、上述のように政府の救出の方針は、従来よりもむしろ厳しくなったのである。したがって、拉致対策本部と県・救う会共催(または主催)の「in○○集会」は引き続き開催していく。 一部には救う会と政府・県の「in○○集会」を指して「政府と合体した運動」と言っている人がいるが、これは誤解もしくは意図的中傷である。 3月16日に採択された全国協議会の運動方針は、政府の救出の方針を支持する内容を次のように規定している。 ◆ 第1に、平成18年10月に決定した6項目の『拉致問題における今後の対応方針』と、平成19年2月に6者協議の場で表明した『拉致問題の進展がない限りエネルギー支援に参加しない』との方針を堅持すること。 ◆ 第2に、今年4月に北朝鮮への制裁継続につき再検討を行うことになっているが、当然のことながら延長すること」と記している。 上述の政府の「拉致問題における今後の対応方針」(平成18年10月16日、拉致問題対策本部)の6項目を紹介しておく。 1. 北朝鮮側に対し、すべての拉致被害者の安全を確保し、直ちに帰国させるよう引き続き強く求めていく。また、拉致に関する真相究明、拉致実行犯の引渡しについても引き続き強く求めていく。 2. 現在、政府としては、北朝鮮に対して、人道支援の凍結措置(平成16年12月28日発表)、万景峰92号の入港禁止を含む諸措置(平成18年7月5日発表)、北朝鮮のミサイル等に関連する資金の移転防止等の措置(平成18年9月19日発表)、すべての北朝鮮籍船の入港禁止やすべての品目の輸入禁止を含む諸措置(平成18年10月11日発表)等を講じているが、今後の北朝鮮側の対応等を考慮しつつ、更なる対応措置について検討する。 3. 現行法制度の下での厳格な法執行を引き続き実施していく。 4. 拉致問題対策本部を中心に、拉致問題に関する情報を集約・分析し、問題解決に向けた措置の検討を迅速に推し進めていくとともに、拉致問題に関する国民世論の啓発を一層強化する。 5. 「特定失踪者」にかかる事案を含め、北朝鮮による拉致の可能性を排除できない事案に関する捜査・調査等を引き続き全力で推進していく。また、捜査・調査の結果、新たに拉致と認定される事案があれば、北朝鮮側に対して然るべく取り上げていく。 6. 国連をはじめとする多国間の場、また、関係各国との緊密な連携を通じて、拉致問題の解決に向けた国際的な協調を更に強化していく。 この政府の方針を全国協議会が支持することのどこが悪いのか、指摘して欲しい。 全国協議会は、無原則的に政府の政策を支持するなどとどこでも言っていない。支持する中身を上記のように明記している。 われわれが支持している政府の拉致救出の方針は、全国協議会が、過去10余年にわたって勝ち取ったものであり、自然発生的に生まれてきたものではない。 それでもなお「政府と合体」などと言うのは、運動方針をきちんと読んでいないのではないか。あるいは読んでいて、なおかつ言うのなら、それは意図的な誹謗中傷である。 今回の騒動で分かったことは、国民は、政府が6月13日の時点で言っていたような甘い態度で拉致解決が出来ないと考えている、ということを政府関係者に改めて認識してもらったことである。これは大きな成果であったと考えている。 |