-序文-
6者協議の「2・13合意」が妥結して1年が過ぎた。去年の2月13日、金正日政権は核兵器の開発状況を報告し、すべての核施設を破棄すると約束した。しかし約束は守られなかった。北朝鮮は核目録の申告をせず、「用済みの破棄の対象」に過ぎない寧辺原子炉の「不能化」作業だけが進行中である。「平和協定」や「米・北修交」は遠い。ブッシュ大統領の任期中の「北核」問題の解決は事実上不可能になった。
1年前、ハンナラ党は金正日の約束を信じ、韓半島の状況が脱冷戦へと履行すると判断した。この判断に、今新政府(李明博政権)の対北政策を陰に陽に奨めている北韓学(北朝鮮学)教授や専門家や言論らが力を合わせた。彼らは「米・北修交」や「平和協定の締結」が2007年内に実現すると予想した。
新対北政策を立案した鄭亨根議員(ハンナラ党)は去年の3月23日、MBCラジオ放送に出演し、このように語った。
「米・北朝鮮の完全な外交関係が2008年の上半期までは樹立されるのではないか、とそのように見ている」、「そのような色々な問題の解決のために、私が知っている限りでは、米国でもライス国務長官が多分共和党候補として来年の選挙に出るのではないか」、「ライスが6月頃には北朝鮮を訪問するのではないか、また交差訪問をするのではないか」、「終戦協定は多分今年内にできるのではないか」、「平和協定とかこういうものは、後半期には実現するだろう」、「そういうことと併行して南北頂上会談が、調律のために必要だ」、「北核問題の完全解決のために、また平和安定の構築が期待できるなら首脳会談が必要だ」。
ハンナラ党を取り囲んでいた焦燥感や権力欲は、断片的情報と「化学反応」を起こした。そして太陽政策を凌駕する「新対北政策」が仕立てられた。李明博当選者の「非核・開放・3000」もこういう雰囲気の中で作られた。金正日が、非核化と開放に出るだろうという楽観から、1人当りの所得を3,000ドルにしてあげる、という「ビジョン」を盛っていた。
脱冷戦という錯覚の中で産まれたので、当然、非核化や開放の手段を盛ることができなかった。「非核化」や「開放」のため、せいぜい、対話をし説得して理解させる、という原論のみだった。結局「非核・開放・3000」は、胎生的限界から「ビジョン」でなく「幻想」になるほかはなかった。
「非核・開放・3000」が、非核化と開放の手段を補い、リフォームしなければならない理由がここにある。金正日政権の本質に対する通察、北朝鮮住民に対する憐憫が欠けているからだ。幸い新しい統一部長官に南柱洪京畿大教授が指名された。彼は対北問題について憲法に立った原則的立場を堅持してきた人物だ。
-第1編- 自由統一を国家的目標にしよう!
もはや南北和解と協力という名分の「太陽政策」は、1970年代の「デタント」のように廃棄されるべき時点にきた。太陽政策は、消滅されるべき金正日政権を蘇らせ、強化した。そのため北朝鮮同胞の生活は向上せず、韓国の安保網には穴が開いてしまった。
太陽政策の以来、韓国から北朝鮮に流れ入ったドルが100億ドルを超える。北朝鮮の外貨保有高が40億ドルなだから、実に途方もない金額が流れたわけだ。だが、このお金は金正日のポケットである労働党の38号、39号室にだけ入り、住民には配分されなかった。収容所に容れられた政治犯は増え、脱北者の強制送還は酷くなり、生産性のない集団農場制の下で餓死者は続いた。変わったことは北朝鮮が核武装国家になったことだ。
李明博政府はいわゆる平和共存政策を終わらせ、金正日政権の解体し、これにともなう北核問題の解決、そして北韓同胞の自由化を、対北政策として進めなければならない。このような対北政策が目指す国家目標は、結局憲法が定めた「自由統一」だ。
我々の憲法は「戦闘的な自由民主主義」である前に、「解放的な自由民主主義」を指向する。第1条で大韓民国は民主共和国だと決め、第3条は韓半島と附属島嶼を大韓民国の領土でするとして、北朝鮮も民主共和国にならなければならないと決めている。第4条はこのために統一は自由民主的基本秩序の下で平和的に推進しなければならないと決めている。
憲法の命令は一貫している。自由を北進させ、反国家団体で内乱集団の北朝鮮政権を、平和的に鎮圧した後、未修復地域の北朝鮮を修復し、奴隷状態の北朝鮮同胞を暴圧から解放せよ、ということだ。自由統一と一流国家を作り、7千万の南北の民族が幸せに暮らすようにというなのだ。
よく統一問題の時言われる「平和統一」は、不正確な表現だ。最初、李承晩博士は北進統一を主張した。当時、曺奉岩は平和統一を主張して死刑になった。朴正煕大統領の統一政策は、先に建設、後統一、という体制の競争だった。以後「平和統一」という言葉が徐々に用いられてきて、1972年の「7・4南北共同声明」ができた。「平和・自主・民族大団結」、これは平壌側が主張してきたことだったが、朴大統領は国内政治に活用しようとこれを受け入れた。
ボタンの掛け違いから、以後「相互体制の認定」と「内政干渉の禁止」という違憲的主張が通用され始めた。80年代以後、北朝鮮の対南工作が成果を上げ、ついには北朝鮮式の「赤化方案」である連邦制を受け入れた「6・15共同宣言」や「10・4宣言」まで登場した。左派は「平和統一」のためには「相互体制認定」や「内政干渉禁止」が必要だと強調し、北に対して核廃棄の圧力をかけてもいけず、政治犯収容所の解体を要求してもいけないと主張する。それでは平和統一とは何なのか。金正日一人のための平和ではないか。
平和は手段であるだけだ。統一の原則は、あくまでも平和統一でなく自由統一だ。このため、ここ60年間、建国、近代化、民主化を経て、今最後の段階へ向かっている。金正日を信じるように国民を説得し、朝鮮労働党の統一論を主張してきた左派らは、詐欺や反逆の共犯者らだ。李明博政府は左派の影響圏から抜け出て、対北政策を合憲的に転換しなければならない。
実際に、大韓民国の誕生自体が自由統一という国家目標の下でなされた。1948年5月31日、国会の開院式で、国会議長として選任された李承晩博士はこのように演説した。
「わが以北5道の同胞が、私たちとともに公選を通じて代表を選定し、我々とこの場で円満に同席でないことは、私たちがきわめて痛憤に感じるところであります...一日でも速く自由選挙で以北の代表がきて、この席を占めて、私たちとともに職責と権利を分担し、完全無欠な国家を回復するように準備する覚悟であり、私たちは以北(北側)同胞と心を合わせ合力し、米国と国連の協力で統一の早期成功を再来することを決心するところであり、再び誓うことは、私たちの民族は死んでも一緒に死に生きても一緒に生きることであり、私たちの領土は一尺一寸とも他人に譲与しまいということです。」
同族の半分が、半世紀以上暴圧の下で死に、ついに暴政は終わりに差し掛かっている。大韓民国の選択は自明である。わが民族は、死んでも一緒に死に、生きても一緒に生きる! 直ちに、北朝鮮解放と自由統一に向けての大戦略を始めなければならない。
-第2編- 金正日政権を整理しなければならない理由
「自由統一」のもう一つの側面が北朝鮮の解放だ。金正日政権が終息の対象であるしかない主要な理由は人権にある。金日成・金正日はわが民族を最も多く虐殺した者である。「6.25南侵」で250万人が犠牲になり、1994年以後の飢餓で400余万人が犠牲になった。「生き地獄」から脱出するために逃げる過程でどれくらい多くの人が犠牲になったのか、統計を出すことも難しい。
北朝鮮では、飢えに耐えかねて食糧を盗み、牛を売り、電気線を切って、渡江(川を渡り脱出)にでた場合、皆公開処刑の対象だ。韓国の映画やドラマのビデオを売って取り締っても処刑され、韓国の放送を聞き韓国の歌を歌ったということで殺される所だ。
飢えに絶えられない住民たちが、国境を越え獣のように凍土を流浪する。15万から30万人に達する中国内脱北者の中の60~70%は女性で、その70~80%は人身売買された経験があると推測される。北朝鮮当局は、2003年、20~30代の行方不明の女性が150万人に達すると推定したが、この中の大多数は中国に売られたという分析もある。
脱北者、特に女性たちを待つのは人身売買屋だ。人身売買された女性たちは山間の僻地、歓楽街などへ売られ、強制結婚、性的暴行、望まない妊娠、各種の婦人科の疾患に苦しんでいる。結婚しても、夫と婚家家族らの無視と殴打、北朝鮮居住家族に対する懐かしさ、不法滞留への申告脅迫および逮捕、強制送還の恐怖に震えなければならない。
突然訪れた中国公安は彼らを捕まえ、北朝鮮当局は辺境の拘留場に入れる。数多くの脱北者たちは今も「ポムプ動作」、「鶏の丸焼き拷問」、「鳩拷問」など呪わしい拷問で死んでいく。万一子供を身ごもった状態で強制送還されれば「強制堕胎」、「嬰児(乳児)殺害」という悪魔的な蹂躙に遭う。
収容所に収監された政治犯の中の30%以上は脱北関連の政治犯だ。単純脱北者は大体6ヶ月以下の労役に処されるが、キリスト教に接したり韓国行を試みた者は政治犯収容所に送られる。最近、脱北者に対する処罰が強化され、単純脱北者まで政治犯として処理されている。
公開処刑など北朝鮮政権の破倫的殺人は政治犯収容所の日常事だ。零下20度で凍らせて殺す刑罰、銃で脳髄を打ち殺す刑罰、尿の中に全身を入浴させる刑罰、石で打って殺す刑罰、鉄線で鼻を通し、かかとに五寸釘を打ち込む刑罰、首の動脈を切り生きうめする刑罰まで行われる。
トウモロコシ一杯と塩一さじで、15時間の重労働やムチを耐えなければならない所、十字架にかかったまま火あぶりにされ、蒸気のローラーの下に敷かれて息をひきとる所、逃走した友人の公開処刑なった死骸の上に石を投げてやっと命を保つ所、生きていることそのものが最も大きな苦痛であり恥辱であるところ。そこが燿徳であり、会寧であり、价川(以上強制収容所)だ。いや、北朝鮮の全域だ。
韓国の憲法第3条によれば、北朝鮮住民は未修復地域に居住する大韓民国国民だ。反国家団体で、内乱集団である北朝鮮政権は、未修復地域に居住する大韓民国国民を暴圧し、蹂躪する非人道的な体制だ。北朝鮮住民の問題は「他人」でなく「私たちの」の一部であり、憲法がそのように定めている。
正常な国家なら、拉致された自国民と国軍捕虜を救出するため、(イスラエルが敢行した)エンテベ式作戦を行わなければならない。正常な民族なら、地獄で死んでいく絶対多数の北朝鮮同族を救援するため、解放軍を組織しなければならない。
金正日政権が整理されるべきもう一つの理由は、すでに失敗した集団であることに起因する。北朝鮮は世界的なアヘン(世界3位)やヘロイン(世界6位)の生産国であり、国家的次元でにせ物のタバコや偽造ドルを作る不良国家だ。
2007年7月12日のタイムズ誌の報道によると、北朝鮮が不法活動を通じて得る収入は、年間10億ドル(米国務部の主張)と推算される。2005年の北朝鮮の合法的輸出総額がCIA(米中央情報局)の推算で17億ドルであったことに照らして見ると途方もない金額だ。にせ物タバコの輸出を通じての利益も年間8千万~1億6千万ドルに達するという。
現在、北朝鮮住民の平均所得は月30ドルにもならない。北朝鮮の経済規模は韓国の1/80、一人当りの所得規模は韓国の1/40、北朝鮮の総産業設備の規模は韓国の0.4%だ。金正日政権は世界の経済自由の順位において161位、世界の民主主義順位で167位、世界の言論の自由指数で168位、国家危険度で173位、環境持続指数で146位、などすべてが調査対象国の中のびりである。
金正日政権は世界で最も失敗した体制(failed state)であることが立証された。北朝鮮が持っているのは核爆弾と先軍政治、主体思想だけだ。金正日政権はひとえに「清算」と「整理」の対象であるだけ、「協力」と「共存」の対象として考えられない。
-第3編- 金正日の没落は災殃なのか、統一のチャンスなのか
自由統一という国家目標を通じ北朝鮮を覗いて見よう。2008年に入り、金正日の突然死、ないし有事(事故)の可能性が高まっている。
①英国の軍事専門紙の「ジェインス・ディペンス・ウィークリー」のインターネット版は2008年1月24日、匿名のアジア情報機関の関係者証言を引用し、「金正日が亡命に備えて自身の秘密口座に預置された資金を携帯ができるように移動している」で報道した。
②読売新聞は1月22日、「金正日政権が崩壊危機の時、中国は、北朝鮮難民や軍の一部の中国への流入を憂慮している」、「この場合中国が、北朝鮮に軍を派遣し、治安の回復と核の管理などに乗り出す方案を検討中」と報道した。
③アメリカの戦略国際問題研究所(CSIS)と平和研究所(USIP)は、中国の対北朝鮮専門家および中国軍関係筋とのインタビューを土台に作成した最近報告書で、金正日政権の崩壊危機の時、中国が、治安回復と『核』の管理のため軍を投入する非常計画を持っていると明らかにした。
④趙甲済ドットコムの1月22日の報道によれば、最近、労働党幹部出身の脱北者は、「北朝鮮の支配層の間で、金正日に対する不信感が急速に広がっている」、「北朝鮮住民よる蜂起は不可能だが、支配層が金正日を相手に一種の『宮廷クーデター』を起こすのは可能だ」と言った。この高位級の脱北者は、「金正日が滅びると私たちも亡びるから一緒に行くほかはない、という諦念から目覚め、今は金正日と一緒に行けば、みな滅びるから自救策を試みるべきだ、という議論が起きつつある」、「このような点を韓国当局がうまく利用すれば、金正日を追い出せる」と話した。
⑤金正日の公開活動は2005年123回、2006年99回、2007年86回と、減ってきた。この公開活動の急激な減少に対し、「健康の異常説」が力を得ている。言論報道によると、金正日は2007年5月、ドイツ医療陣から「風船拡張術」という心臓疾患の治療まで受けたことが分かった。
⑥北朝鮮では2007年から「市場」と「幹部たち」に対する厳しい統制が始まった。また、毎年1-2回程度だった「中央党の集中検閲」や「非社会主義に対する検閲」も随時行われた。独裁体制を維持する「監視体系」の効力が急速に落ちたので、統制を一層強化するわけだ。(市場や幹部たちに対する統制が北朝鮮経済を悪化させ、不平・不満を増加させるということが分かっていながらも、強行される悪循環だ。)
以上の報道を総合すれば、このように言える。①金正日が「突然死」で死ぬか「宮廷クーデタ」等で突然除去されることがあり得る。②すべての権力が集中した金正日の死は、いわゆる「北朝鮮の急変事態」を招くことになる。③「北朝鮮の急変事態」で、難民はもちろん、武装兵力などが朝・中国境を越える場合、中国軍の介入が考えられる。
原論的に言えば、金正日の死亡や事故(有事)は、「北朝鮮解放」と「自由統一」の好機である。金正日という「絶対権力」が消えれば、韓国の「10・26」(朴正煕大統領の暗殺)以上の混乱が避けられず、これを収拾するため(韓国軍の)「人道的介入」に乗り出すことができるからだ。
金正日以後の北朝鮮は、権力の核心である軍部が「新しい権力の座」を巡って分裂と衝突を繰り返す過程で、内戦に発展する可能性がある。内戦が発生しないとしても、秩序の崩壊は住民相互の報復と再報復の悪循環を招くかもしれない。人権弾圧が続き、累積されたあらゆる怨恨らが一瞬にして噴出するのだ。カオス(混沌)の中で、難民はもちろん、敗退した軍閥が中国との国境や休戦ラインに押し寄せる遠心力が作動し始める。これがいわゆる「北朝鮮の急変事態」の始まりだ。
だが、問題は中国だ。中国は、北朝鮮の急変事態の時、北朝鮮地域を事実上属国化するための緻密な準備をしてきたことが伝えられている。緩衝地帯として北朝鮮の体制を維持させ、北朝鮮地域に対する影響力を維持しながら、韓・米勢力の韓半島北部への進出を阻止するための軍事的介入に乗り出すことだ。
中国の軍事的介入は、国連の承認を受け行われる事もでき、承認なしで行われることもあり得る。国際法的に後者は不法だが、韓国など周辺国に対する説得を試みるという点では大きな差はない。どちらの場合にも、中国は「朝・中友好協力および相互援助条約」により、北朝鮮に軍隊を派遣することが比較的容易だ。米国が中米地域国家の国内問題に「米洲條約」に基づき軍隊を派遣したのと似ている。
中国は、軍事的介入に対し否定的立場を明らかにしてきたが、難民流入など避けられない状況が起きると話が変わる。問題は、米国も中国の介入に同意する可能性が高いというところにある。「核を持った金正日政権より、核のない親中政権がましだ」という米国の戦略的判断は中国との第2の「桂・タフト密約」を結ぶようにするかも知れない。中国は衛星国家を、米国は北朝鮮の解放でなく非核国家を望むからだ。
金正日以後の「親中政権」は朝鮮労働党と主体思想が統治する共産政権だ。政治犯収容所の解体をはじめ強制送還など人権蹂躙の中断はもちろん、中国式の改革・開放も不可能だ。これは改革・開放や人権改善に出ると、覚醒された人民によって崩壊するほかはない労働党政権の本質に起因する。金正日政権との差があるなら、核武器が中国と米国により除去される事実だけだ。
このようなモデル(状況)は大韓民国にとっても災殃になるしかない。
まず、北朝鮮が中国の統制力の下に入れば、韓国も中国の影響力から自由になるのが難しくなる。中国にとって北朝鮮は「属国」、韓国は「辺境」になるという憂慮はここに起因する。
二つ目に、これは死んでいく北朝鮮の体制を、中国や特に韓国が与えるドルと物資で延命させるモデルだ。「北朝鮮体制の保障費」または「韓半島平和維持費」の名目の対北支援が急増するしかない。
三つ目、中国は、急変事態の処理過程で、休戦ラインを一部を開放、難民だけを韓国に押し付けることもできる。結局、南北統一ははるかに遠くなり、韓国も経済的負担や社会的負担が大きくなり、衰退の道を歩むことになるだろう。
民族の同伴滅びを防ぐ唯一の道は、金正日以後の北朝鮮政権を崩壊させ、普遍的体制を作ることだ。北朝鮮政権は進化するにはあまりにも硬直してしまった。差し当たり、痛く見えても大手術、つまり体制崩壊が避けられない。暴圧の構造が崩れた後、自由・人権・法治のシステムが作られなければならない。
-第4編- 北朝鮮の急変事態の前段階
新政府は、具体的にどんな政策を執るべきなのか。
まず、自由統一という国家目標の下、いわゆる「北朝鮮体制の保障論」を廃棄し、レジーム・チェンジ(Regime Change)を隠密に進めなければならない。北朝鮮体制の保障論は、北朝鮮人民の苦痛を延長させ、永久分断へと繋がり、未来を傍観し、韓半島の中国化を通じて民族全体の衰退を放置する論理だ。
李明博政府は、今や堂々と北朝鮮の解放と自由統一を追求する、と言わなければならない時だ。共産体制や全体主義は元々内部から崩れる。100倍以上の圧倒的な経済力と、民主主義の力を土台に、金正日政権を圧迫して行くと、北朝鮮の中で根本的変化が起きるはずだ。これは側近による金正日の暗殺や追放、クーデタなど多様な形で現れるだろう。なだめることの10年、むやみな支援の10年を清算し、抑え政策を5年だけやっても敵は降参する。
二つ目、自由統一のため、対北支援を暫定中断し、ドルの供給を遮断しなければならない。北朝鮮は、人民経済である「ウォン貨」経済と、宮廷経済ないし軍・党経済である「ドル」経済で構成される。金正日はドル(外貨)で上層部を管理し、武器などを買い入れる。ドルがなくても人民は生きるが、金正日と上層部は難しくなる。
金正日がドルを儲ける方法は、ドル偽造、タバコの偽造、麻薬密売、にせ物医薬品、そして保険金詐欺によるドル獲得、最大10億ドルにも達した朝総連の支援などだった。だが、2005年頃から金融制裁が始まって朝総連に対する法的制裁が強化され、金正日の資金ルートが詰まってしまった。残った金づるは、中国が死なないほど与えている物量支援と、韓国からの莫大な現金支援だ。
去年、韓国から北朝鮮に渡されたお米や肥料が4,700億ウォン(500億円以上)、開城・金剛山観光で現金2億ドル、南北交易で鉱石や砂などの購入費用で5~6億ドルなど総10億~15億ドルおよび現金化できる現物が提供された。これは金正日が「現金釣り」という餌に食い付いたことだ。金大中・盧武鉉はずっと釣り糸を放した。李明博大統領がこれを引けば、北朝鮮からは必ず変化が起きる。合法的手段で金正日の金づるを遮断すれば、金正日政権は崩壊につながるほかはない。
いわゆる「人道的対北支援」も中断せねばならない。多くの人々が北朝鮮の子供を助ける、水害民を助ける、はなはだしきは教会やお寺を助けるとし、物量支援を惜しまない。しかし、「先軍政治」の下で行われる、いわゆる人道的支援は、暴政を支える乳腺になるだけだ。これも金正日の暴政と同族の苦痛を延長させることであり、人類最悪の首領独裁を助けることだ。
北朝鮮政権でなく北朝鮮住民を助けようとするなら、与えないことがはるかに「まし」で、どうしても与えるなら、米の代わりトウモロコシを与えるべきだ。北朝鮮宣教のための道は、にせ物教会である鳳岫教会にドルを献金するのでなく、地下教会や脱北者を助けることだ。最も人道的な対北支援は金正日政権を終息させ、自由・人権・法治が尊重される普遍的体制を作ることだ。
今李明博政府と大韓民国は、刀剣の柄を握っている。お米や肥料を北朝鮮の核問題の解決の前は送るまいと言えるし、お米や肥料を送っても国軍捕虜と北へ拉致された人の送還、改革・開放など条件を付けることもできる。どんな方向でも心構え次第であるということだ。
三つ目、「積極的」な脱北者支援政策を推進すべきだ。左派政権の10年間、政府は脱北者を徹底的に冷遇してきた。これから中国内脱北者を積極的に収容および支援する一方、彼らが金正日批判に乗り出すようにしなければならない。脱北者を助けるのは一個人を助けることに止まらず、北朝鮮と中国の中の我々の親類を救出することだ。宗教団体も宣教や布教の一環として労働党への支援を中断し、脱北者を助けることに積極的に取組まなければならない。
脱北者は「荷物」でなく、自由統一の尖兵たちだ。脱北者を支援してこそ、北朝鮮内のエリートなどが大韓民国に頼ることになる。政府は北朝鮮住民が保護すべき国民であり、大統領も韓半島全体の大統領であることを肝に銘じて、北朝鮮住民の心を得る、誠意ある努力をつくさなければならない。それでこそ「急変事態」の時の北朝鮮住民が大韓民国に帰属する「自由統一」が進められる。
北朝鮮の志のある高位幹部たちとエリートなどは、黄長燁氏が去る10年間、軟禁されてきた事実に非常に失望してきたと伝えられる。彼らは、韓国と連係して金正日を除去する事もでき、韓国に脱出してくることもできるのに、代わりに第三国への亡命を選んでいる。2004年、労働党中央党の作戦部長呉克烈の一人息子呉世郁も黄長燁氏の状況が分かり米国行を選んだ。すべてが韓国政府や国民の無関心と利己心、そして愚かさのためだ。
四つ目、北朝鮮の変化を促進する心理戦を展開しなければならない。過去、KBS(韓国放送公社)の社会教育放送は、北朝鮮の大学生たちの間で最高の人気だったと脱北者たちは証言する。深夜の12時を過ぎこの放送をこっそりと聞きながら、自分たちが絶対的独裁体制の下で生きていることが判るようになったという。政府は公営放送の対北放送機能を復活させる一方、自由北韓放送・北韓改革放送・VOA・RFAなど既存の対北放送も積極的に活用しなければならない。北朝鮮の海岸地方で韓国の放送を視聴できるように、大型の送信装置を設置する方法も考えられる。対北放送は「北朝鮮の急変」の兆しが現れる時、全面的に拡大しなければならない。
対北放送と同時に、情報機関は北朝鮮の上層部の中で「反金正日の勢力化」を誘導する工作に着手すべきだ。反金正日勢力化は自由統一の費用を最小化できる最善の方策だ。新政府の国家情報院の第一の使命もこのことだ。
五つ目、北韓人権運動を国家的に推進しなければならない。中国で性のなぶりもの(おもちゃ)として売られている、数十万の同族の娘たちを救う運動と、政治犯収容所の解体要求運動および公開処刑、嬰児(乳児)殺害、強制堕胎など、強制送還された脱北者に恣行される蛮行を金正日が中断するようにしなければならない。国軍捕虜および戦時や戦後の拉北者の送還を国家次元で推進しなければならない。
70~80年代の韓国の「民主化運動」も外国からの一言の支持発言から大きな力を得た。北朝鮮住民が体制転換の時、韓国との自由統一を選択できるように、北朝鮮の人権を強調し続けなければならない。
六つ目、強硬・穏健策をすべて動員し、北朝鮮の核武装を解除すべきだ。「国際的努力に参加する」というほどの消極的な態度を捨てなければならない。核問題は大韓民国の死活の問題だ。北朝鮮が最後まで核放棄をしない場合、「対応の核」開発を考慮しなければならない。
現在韓国の国防費支出は国内総生産(GDP)の約3%だ。北朝鮮の軍事費支出は低く見ても国内総生産の25%と推定される。李明博政府が、「もし2008年末まで北朝鮮が核兵器を廃棄しないと、韓国は自衛的次元でNPTを脱退し『対応核兵器』開発を始め、国防費を国内総生産の6%まで増やす」と宣言すると、金正日は手を上げるしかない。
七つ目、韓・米同盟の復旧だけでなく、韓・日関係を強化する。北朝鮮の「急変事態」を安定的に管理し、自由統一を導くには、自由民主的な基本秩序を共有する米国や日本の力を活用しなければならない。
八つ目、公職社会から親北朝鮮勢力を一掃し、法治と秩序を破壊する左派勢力を厳しく処断する政策を実践しなければならない。対共捜査機関を活性化し、スパイ捜査を再開しなければならない。金正日と金大中が野合して作った、大韓民国の赤化戦略文書である「6・15宣言」と、これを継承した「10・4宣言」を廃棄しなければならない。
九つ目、国内的に自由民主統一を核心的綱領とする政治勢力を育成していかなければならない。
-第5編- 北朝鮮急変事態への対応策
北朝鮮の「急変事態」が現実化した場合、韓国は、まず憲法第3条に立ち、北朝鮮が韓国の領土であることを明確にしなければならない。中国の北朝鮮地域介入を遮断し、韓国の対応が国際的に承認されるように、米国など国際社会と外交的協議に出るべきだ。
最善の策は、韓国と連携した北朝鮮内の反金正日勢力(軍部エリートなど)が金正日を除去し、過渡的体制を構成した後、自由選挙を通じて大韓民国と統一する方案だ。
だが、このような工作が成功を納めぬ状況で、「急変事態」が統制されない方向へ展開する状況もあり得る。この場合、国軍と同盟軍である米軍は、大韓民国の未修復地域の回復と、憲法上大韓民国国民である北朝鮮住民の人道的保護、大量殺傷武器の回収などを理由として介入しなければならない。
よく北朝鮮の急変事態の時、国際法上の「人道的介入(humanitarian intervention)」の論理を援用しなければならないという指摘がある。国際法的に人道的介入は、「人類の良心を憤怒させる、国際人道法の重大、かつ深刻な違反状況」がもたらされる場合、国連の直接的、または間接的委任を通じてなされる。
だが、中国が国連安保理の常任理事国として待ち構えている現実では、このような人道的介入は現実的に不可能に近いと見るべきだ。たとえ中国が参加する平和維持軍、または多国籍軍が派遣されるとしても、北朝鮮に自由民主主義の体制を作れるかどうか疑わしい。ややもすると、北朝鮮は、強大国が左右する「国際的私生児」にもなりうる。したがって北朝鮮急変事態の時の「介入の主体」は韓・米連合軍出でなければならない。もちろん、どんな形で介入しても、大事なのは大韓民国の自由統一の意志にある。
すべての過程で、中国の反対を克服することが関鍵だ。一方では、北朝鮮の落伍が中国の東北3省の開発の障碍になってきたことを理解させ、市場経済の形成が中国に役立つと(中国側を)説得しながら、もう一方では、韓・米・日の共助を通じて中国を圧迫しなければならない。統一以後の朝・中国境線を維持するという約束も必須だ。
ヘルムット・コール(H.Kolh)首相の、「ドイツ統一のための努力の大部分は外交的なことだった」という指摘を銘じる必要がある。北朝鮮「急変事態」が発生したのに、韓国がいわゆる「体制保障論」を出して、消極的態度で一貫すると、強大国らは「親中・隷属政権」という怪物を作り出すだろう。
韓・米連合軍が北朝鮮急変の時、介入する状況は、「概念計画5029」(CONPLAN 5029)で概念化されている。言論報道によると、「5029」を稼動の時、韓米連合軍は平壌など北朝鮮の主要都市の占領→北朝鮮人民軍の武装解除→北朝鮮住民たちに対する臨時の救護などの任務を遂行すると伝えられる。また、早急な治安回復と難民管理、さらに北朝鮮体制を崩壊させ、普遍的体制の樹立を主導することになる。
これと同時に、韓国政府は「応戦自由化計画」と命名された「忠武3300」、「忠武9000」を本格稼動することになる。「忠武3300」は北朝鮮の難民の収容方案(軍が管理する10ヶ所の難民収容所設置予定)であり、「忠武9000」は金正日政権が崩壊した場合、北朝鮮に「自由化行政本部(本部長統一部長官)」を設置し、非常統治するという計画だ。
韓・米連合軍が北朝鮮に進駐する主目的は、治安回復と難民管理であって、北朝鮮政権関係者たちに対する処罰ではない。韓国も米国も、反人倫犯罪(crimes against humanity)を犯したごく少数を除いては処罰する意志はない。もちろん、個人崇拝的な全体主義体制を主導し強化した象徴的人物に対する歴史的裁判は避けられないだろう。残りの幹部などは新しい北韓の建設に参加の機会を与えなければならない。
北朝鮮地域に相当期間の過渡体制が維持されても、韓国は北朝鮮に対する領土的主権を主張し続けなければならない。西ドイツも、東ドイツの崩壊および西ドイツとの統合決定に至るまで東ドイツ地域に対する主権をあきらめなかった。北朝鮮地域は、たとえ金正日以後独立した形で一定期間存続するとしても、将来は統一されるという基本立場が変わってはいけない。
北朝鮮に普遍的体制が作られると、統一は、時間の問題か選択の問題だけのことだ。統一は漸進的に、全的に北朝鮮の住民の意志に従えばいい。普遍的体制を作り、自由選挙を実施すれば、大韓民国を憧れてきた大多数の北朝鮮住民は結局大韓民国体制に吸収される自由統一を希求することになるはずだ。この段階で北朝鮮住民に対する大々的な啓蒙活動が必要だ。
-第6編- 自由統一がもたらすルネサンス
政治体制の異なる形で分断された国家間の統一は、例外なしで一方が他方の体制を吸収する形態でなされた。ドイツとイエメンは、一方が他方の体制を吸収する形態でなされた。ドイツとイエメンは共産主義体制が崩れ、自由民主主義や自由市場経済体制で統一がなされた場合だ。ベトナムはその反対であった。韓国も同じだ。「北朝鮮の急変事態」の時、自由統一以外の第3の道はあり得ない。
「統一費用」などを言い出し、自由統一に反対する論理は虚構だ。抑圧や搾取さえなければ、すべての人間は自身を生存させる能力を持っている。北朝鮮も例外でない。すでに、国家的配給体制から抜け出た市場経済の生活者たちが40%に達する。彼らは、北朝鮮の体制崩壊の時、規制と統制がない状態で、活発で独自の労働活動を通じ北朝鮮経済の基盤をなすはずだ。全羅南道求禮郡ほどの予算を運用する北朝鮮を管理できないという分析は杞憂に過ぎない。
むしろ、外部からの支援と投資を通じての利益の創出は天文学的水準になるはずだ。市場経済というシステムの転換と共に入るからだ。北朝鮮への介入がなされる場合、韓・米同盟軍と別の一軸をなす主人公たち、他ならぬ韓国の企業そして技術者たちだ。開かれた北朝鮮、繋がる北方は、青年たちの「エルドラド」(理想郷)である。狭い土地、少ない機会で苦痛を受けた韓国人が、海洋と草原と大陸を往来する主役になる。
自由統一をもって韓半島は新しい世の中に変わる。大韓民国は体制転覆を企んできた扇動や欺瞞のすべての工作が止み、和合と団結の気勢が固められる。造船、半導体、石油化学、製鉄、自動車、機械、設備、ITやBTの産業大国の韓国が、混乱の震源地だった北朝鮮政権の消滅により満開する。 世界で一番良い頭脳を持った国民の7千万、海外同胞の7百万の人口が、世界最高の教育の熱意と意気揚々の気勢で武装し、世界5位圏の経済大国を成就するだろう。
東アジアも文明の飛躍を成し遂げられるはずだ。この地域には、世界2位の日本、世界5位の中国、世界11位の韓国、12位のロシアが集まっている。 ブラックホールだった北朝鮮の参加は「一つの市場(One Market)」を完成し、東北アジアの経済共同体へと進化していくはずだ。道路、鉄道、海路を追い人と物流と情報が自然に移動しながら、文明のルネサンス(再生、復興)が繰り広げられる。東アジアは2018年には、韓国(2兆ドル)、日本(9兆)、中国の黄海および東北3省(6兆)、ロシアの沿海州地域を含んで10億人口と18兆ドルの世界経済の大拠点になるはずだ。