盧武鉉の狂乱と李明博政権に立ちはだかる伏兵たち 「現代コリア」平成19年終刊号掲載 洪 熒(早稲田大学客員研究員) 大統領選挙の投票を2ヵ月ほど残している時点で、与野党の候補たちが決まった。ハンナラ党候補の李明博の支持率は依然50%を超え、左派の候補が乱立しているから、正常な社会だったら、もう李明博政権を予想してもおかしくないはずだ。だが、まだまったく予断を許さない情勢である。李明博の前には、彼の命を狙う刺客や伏兵たちが待ち構えているからだ。 「大(大統領)選ドラマ」は、ようやく大団円に向け第3幕が始まった。このカオス(混沌)の第3幕は、韓半島の60年間の冷戦構造に劇的な決着をつけるための期待や緊張感を高めるのに必要不可欠な要素であるのかも知れない。 李明博の対抗馬を選ぶ「大統合民主新党」(旧与党のヨルリンウリ党)の全国巡回の予備選第2ラウンドは、鄭東泳が、孫鶴圭と李海瓚を抑え勝利した。予備選の極端に低かった投票率のため、世論調査ではトップだった孫鶴圭と、南・北左翼権力の絶対的支援を当てにし親盧グループを単一化した李海瓚は、組織動員力で勝る鄭東泳にまったく敵わなかった。孫と李は、鄭が不正・不法選挙をやったとして予備選をボイコットし、ルールを変え、鄭東泳の組織動員力を無力化する「ワンショット(one shot)競選」を要求もした。 さらに鄭東泳の選挙本部が盧武鉉大統領などの名義を盗用して選挙人団に登録したのが発覚すると、李と孫は鄭の候補辞退を要求した。候補間の告訴告発を通じ、とても民主主義的選挙過程と言えない予備選の醜悪な真相の一端が赤裸々に公開された。「大統合民主新党」は統合どころか、自滅状態に陥ったが、金大中の介入などで候補選びまではなんとか辿り着いたわけである。 民主党も、世論調査では好感度が圧倒的に高かったのが趙舜衡であったが、予備選の極端に低い投票率で、党内基盤が強い李仁済が明らかに優勢だった。趙舜衡は党指導部に厳正な選挙管理を求めたが受け入れず、途中辞退した。この趙舜衡の挫折にも金大中の影がちらつく。 これから分裂状態の左派候補群から単一候補を導き、「反ハンナラ党」の「左翼政権3期目」の実現は、生きている権力=盧武鉉大統領が最大の頼りになる。都合よく、平壌で金正日と「民族共助と平和」を謳い「10・4宣言」を演出した盧武鉉は、支持率が30%台に上がりご機嫌だ。左翼政権実現のためアメリカへまで出向いた(9・17~29)金大中もほっとしているようだ。 大統領選の第3幕は、盧武鉉・金正日合作の「民族と平和」の風を利用した左派の扇動や保守派破壊工作と、体制交替をかけた保守右派の決起が衝突する場面がクライマックスになる。 醜さをさらけ出し国民に幻滅を与えた大統合民主新党 「反ハンナラ党」のスローガンだけで金大中の全面介入で急造した「大統合民主新党」(旧与党のヨルリンウリ党)は、大統領候補の予備選で激しい内部抗争の末、鄭東泳を党の候補として選出したものの、党の結束を維持するための事態収拾に追われている。どうせ、大統領選挙後は空中分解する政党だと予想されたが、12月の投票の後も、今の形で残るかどうかも疑問である。今後の展開を予測するためにも予備戦を振り返ってみよう。 そもそも、世論の支持率10%台の政党が半月で200万~300万人の選挙人団を募集するとは虚偽で政治的詐欺だった。候補たちは他人の名義を盗用までして選挙人団の確保競争に走った。盧武鉉大統領をはじめ長官や青瓦台秘書官などまで個人情報を盗まれ、選挙人団に登録された。芸能人のファンクラブのリストなども丸ごと盗用されたそうだ。このような不正・幽霊選挙人が全選挙人団の3分の1以上だった模様だ。選挙不正は民主主義の基礎を破壊する悪質犯罪なのに、党の指導部はこの不法・狂態の実状を調べようとせず黙認してきた。もっとも左翼の倫理では、目的のためにはいかなる手段をも正当化する。 当初は鄭東泳と李海瓚が力を合わせ孫鶴圭を牽制したが、いざ、全国16地方の巡回が始まったら、鄭東泳の優位が明らかになった。「幽霊」まで入れ急造した選挙人団だから、投票率は当然低い。投票率が低いと組織動員力が物をいう。地域巡回が半分終わった時点で、党内基盤の管理に力を入れてきた鄭東泳の独走が確認され、バンドワゴン効果で鄭の支持率はさらに上がった。 金大中に誘われハンナラ党を脱党した孫鶴圭は、政治生命が絶体絶命の危機に瀕した。親盧グループを単一化した李海瓚も、本選進出どころか、支持基盤の限界だけを露呈した。そこで孫と李が連帯し、鄭東泳の不正・不法を暴いた。李海瓚側の主張では110万人の選挙人団には、長期の病人やハンナラ党など他党の地方議員、服役囚や行方不明者、死者まで含まれていたという。李海瓚側は鄭東泳を告訴した。 盧武鉉大統領の名義を盗用した鄭仁薫(ソウル市鐘路区議員)など、鄭東泳側の関係者が逮捕された。鄭仁薫はアルバイトの大学生3人を雇い523人を選挙人に不正登録したそうだ。この大学生3人は鄭東泳の選挙本部で選挙人団の署名を代筆するアルバイトをしたことも判明した。しかし鄭東泳側は警察の令状による押収捜索(10・6)を実力で阻止した。互いの批難・告訴が拡大し、李海瓚は鄭東泳を候補辞退へと追い込んだ。 地方巡回予備選での投票参加率は最終的に、ハンナラ党の予備選投票率(70・8%)の4分の1水準の16・2%だった。それで「大統合新党」は予備選の興行を盛り上げるため、前代未聞のモバイル(携帯電話)投票を考え出した。自由民主制度での投票は直接、秘密が原則だという常識は無視した。20万人を想定した「モバイル選挙人団」には、数十人が一つの番号で登録したケースもあるそうだ。 韓国の政治史上もっとも醜悪な選挙不正が、自称「民主化勢力」の、金大中・盧武鉉の路線を継承する自称「改革勢力」の主体たちの「大統合民主新党」により恣行された。このようなことを平気でやる無道な左翼勢力が10年間も占領してきた韓国はいかに破壊されたのかが分かる。「大統合民主新党」が110万人の選挙人団を今さら全員検証するのは不可能だった。当局は鄭東泳陣営に対する捜査を中止した。「大統合民主新党」の内部抗争は結局オーナーの金大中の介入で収束し、鄭・孫・李の3人は中止した予備選の続行と結果への承服に同意した。しかし予定通りワンショット競選(10・14)で鄭東泳か孫鶴圭かが党の候補として決まっても、有権者の脳裏に刻印された醜悪なイメージを消すことが出来るだろうか。また、敗者である孫と李は黙って引き下がるだろうか。 「大統合民主新党」の醜いイメージを希釈し隠す最後の秘策は、第3の候補を入れた「反ハンナラ党」の候補単一化工作という大イベントに頼るしかない。 しかし不思議なのは、有権者から見ればほとんど勝てる見込みの低い大統領候補になるため、鄭東泳や李海瓚、孫鶴圭はなぜそこまで執拗に拘ったのか。実は左翼の中からも、すでにこの12月の大統領選挙は諦めたという敗走の声も聞こえるそうだ。左派は今、大統領選挙より来年の4月の総選挙に備えての独自生存と政治的基盤や持分の確保が本音で大事なのかも知れない。 盧武鉉式成功を夢見る(?)群小候補など 朝鮮労働党の友党の「民主労働党」は、権永吉を大統領候補に決めた。権の父は韓国戦争の時、北のパルチザンだった。権永吉の世論調査の支持率は3%前後だ。民労党は、左派の「反ハンナラ党」単一化には参加しないが、投票段階では平壌からの指令に従うだろう。 「民主党」も10月16日、李仁済を党の大統領候補に決めたが、ここも異変が起きた。民主党も選挙人団の構成の問題では「大統合民主新党」と似たような状況だった。世論の支持率では党内候補群の中で趙舜衡が圧倒的に高かったが、党の選挙人団の投票率が9%台だったので、党内の組織基盤が強い李仁済が動員力を活かし予備選の優位を保った。趙舜衡は党指導部に不正・不法選挙の是正を要求したが受け入れられず、趙が批判した金大中側の妨害工作などもあって予備選を断念した。李仁済は生涯3回目の大統領候補に決まったが、趙舜衡の挫折は民主党にも大きな損失である。 選挙を前に群小政党が雨後の筍のように出現している。中央選挙管理委に登録された出馬希望者も130人以上だ。盧武鉉(のような者)も大統領になれたから自分もできる、と思ったのだろうか。中には半年後の総選挙の事前選挙運動の目的もあるようだが、大混沌の時代に混乱に乗じ主役の座を窺う、盧武鉉式の成功を狙う博打心理があるのかも知れない。 左派権力の公然の支援を受けている文国現(前柳韓キムベル社長)が、新党「創造韓国」(10・14発起人大会)を発足し選挙に臨む。オーマイ・ニュースをはじめ左派のメディアが、全力をあげて文国現を大統領候補として紹介している。おかげで文の支持率は急上昇し、韓国ギャロップの世論調査(10・16)では李明博(55・5%)、鄭東泳(16・2%)に次いで5・3%で、李仁済(3%)、権永吉(3%)とつづく。もし、「大統合民主新党」の候補が駄目になると、左派の代表として浮上する可能性もある。すでに与党の「大統合民主新党」から数人の議員が支持を表明している。 鄭根謨前明知大学校総長(前科学技術庁長官)も出馬を宣言した。鄭根謨氏は以前から「韓国基督政治文化研究院」に参加し、基督教系を支持基盤にする。鄭根謨は、同じく基督教系の支持基盤を持つ李明博の落馬を期待するようだ。果たして彼は、李明博に失望しているクリスチャンの票を吸収できるか。鄭根謨を大統領候補に推戴した「真主人連合」の代表は、9月末「大統合民主新党」から脱党したばかりの金善美議員だ。彼女は李海瓚の選挙陣営のメンバーだった。金善美は李海瓚と鄭根謨の連結役の目的を持っているのだろうか。 李寿成前総理(前ソウル大学校総長)も「和合と跳躍のための国民平和連帯」を結成し出馬する。金爀珪などヨルリンウリ党出身の左派との連帯が予想される。 野性を失った野党「ハンナラ党」と李明博陣営 李明博も選挙対策本部を発足(10・8)させたが、戦いの相手がまだ決まっていないためか、有権者の関心を掌握する政策や企画が見えない。ハンナラ党には挑戦者としての必死の緊張感もなく、策士は多いが闘志は見えない。李明博陣営は、選挙戦を経済を中心とする姿勢で、今度の選挙は単なる政権交替でなく体制交替を目指すべきだと思う保守派には不安と不満の声が増している。 ハンナラ党は、「10・4宣言」を武器に「虚構の平和」を叫ぶ左翼独裁から政権を奪還しないといけないのに、理念戦を闘おうとしない。ハンナラ党は「大統合民主新党」の自滅ぶりだけを見て安心し油断している。すでに政権を取ったかのように振舞う議員さえいる。鄭東泳などは煽動の名手で、物理的暴力まで覚悟の左派の連帯体ができたのに、これを実力で制圧できる右派連帯作りに熱心でない。 李明博の参謀たちは経済大統領のイメージをつくろうとし、李明博の米・日・中・ロ訪問を企画したもようだが、最初の訪問先になる筈のブッシュ大統領面談をしくじった。 李明博陣営の最重要課題は朴槿恵を包容し、党内をまとめることだ。朴槿恵陣営の共同選挙対策委員長の一人は、競選敗北後「親盧」・親北左派メディアの代表であるオーマイ・ニュースとのインタビューに応じ、ハンナラ党や保守のメディア(特に、朝鮮日報)を非難した。朴槿恵支持者の一部は、朴槿恵が李明博の選挙対策本部の顧問になったのも不満だ。彼らは未だ主敵が誰なのかが分かっていないようだ。 李会昌(前大統領候補)は、党の指導部(鄭亨根最高委員)から「太陽政策」や「10・4宣言」を継承するという表明が出たのに対し、ハンナラ党が相互主義の原則で金正日に対しもっと堂々と臨むべきだと主張する。保守派の中には李会昌に共感し、李明博の身辺に異変が生じた場合は、李会昌も代案になり得るという雰囲気もある。 盧武鉉の狂乱「10・4宣言」がもたらすカオス 実質任期を2ヵ月半しか残していない盧武鉉が金正日と「10・4宣言」(「南北関係発展と平和繁栄のための宣言」)に署名した。盧武鉉は得意満面で成果を自慢するが、中身は15年前に発効した「南北基本合意書」よりも後退したもので、悪魔と野合した反逆だ。紙面の制限で内容分析は省くが、現実を無視し、名分も全くない。金正日の延命を謀る「民族と平和」のため、韓米同盟の破棄を宣言したものだ。 盧武鉉は平壌へ行く前から「金正日が嫌うことは言わない」と公言した。彼は虐殺者金正日の長寿のために乾杯し、「アリラン公演」に拍手を送り、「奴隷化」した北の住民の人権などに全く無関心で「人民主権」を称えた。韓国の国軍捕虜、拉北者問題には触れもしなかった。 盧武鉉は「北側の体制を尊重する用意周到な配慮が必要だ」、「(対北)経済協力は改革・開放のためのものではない」と言った。「太陽政策」の詐欺性や破綻を認めた告白である。しかし、「大盤振舞い」のぶちまけ的対北支援の限りない拡大を宣言した。 最も致命的なのは、「10・4宣言」が金日成の遺訓である高麗民主連邦共和国の「十大施政方針」をコピーしたものだという点である。 盧武鉉と金正日は、11月に南北国防長官会談(平壌)と南北総理会談(ソウル)を開くことに合意した。盧と金は、「互いに内部問題に関与しない」(「10・4宣言2項)としたが、金正日が大統領選挙に黙っているだろうか。南北総理会談が開かれると、北側はハンナラ党が南北合意事項の履行を妨害すると称し、「10・4宣言」を逆手に取って大統領選挙に介入してくる。 盧武鉉が金正日に約束した天文学的な金額の「手形」は次の政権が支払うことになっている。金正日は、盧武鉉の「手形」を「現金化」するためにも盧武鉉を継承する左翼政権作りに全力を尽くさなければならない。もっとも、盧武鉉は、数十兆ウォン(数兆円)規模の対北経協を「別にお金のかかる問題ではない」と平気で言った。 平壌訪問の効果で盧武鉉大統領の支持率は40%台に上がった。しかし、彼は今、完全に分別力を失っている。自分の退任後にも在任中取った諸措置が変わることがないように「五寸釘」を打っておく、と公言して憚らない。大統領は、秘書室長にハンナラ党の李明博候補を告訴(9・7)させ、青瓦台のインターネット・ホームページを通じ李明博候補を攻撃し続け、中央選挙管理委員会が自制を求めても聞こうとしない。盧武鉉は任期が終わる検察総長の後任人事も次の大統領に譲ろうとせず、自分が任命すると意地を張る。 一部の政府部署が法治を回復しようとしても、国家機関の正常化を徹底的に抑えている。例えば、情報通信部は「情報通信網利用促進および情報保護などに関する法律」により、「南北共同宣言実践連帯」や「汎民連南側本部」など代表的な13の親北団体に対しインターネット・ホームページから法律(国家保安法第7条)に触れる内容の削除を命じた(9・18)が、青瓦台がかたくなに反発したので、適正な法執行が出来なくなった。「10・4宣言」による政治社会的雰囲気で取り締まりは益々難しくなる。 盧武鉉政権は左翼政権の失政や腐敗、「大統合民主新党」の予備選で明かされた、いわゆる「民主化・改革勢力」の醜さや無能を覆い隠すために、南北共助の「10・4宣言」を利用し宣伝に出た。国民の脳裏に刻印された「親北左派」の嘘、醜さ、無能などの記憶を消すには、より大きな反復的嘘や正常に判断・受容のできない虚構が必要で、国民を麻痺・麻酔させる大々的宣伝を展開するほかない。野蛮な独裁との連邦制に向けての国家的規模の洗脳作業である。 「10・4宣言」で戻ることのできない反逆の線を越えた盧武鉉(と金大中)が反逆を裁かれないためには、左翼政権の継続しかない。親北反逆勢力の生存の条件は、(1)保守右派は分裂させ、親北左派は団結させ投票で勝利する、(2)親北左派の支持率が低くても、投票の直前保守右派の候補が消える、(3)政治工作を通じ、「左派の宿主」になる「形だけの」保守政権を許す、のどちらかを実現することだ。 盧武鉉・金正日の民族共助を助けるアメリカ 6者協議は「9・19共同声明履行の第2段階措置」を発表した。盧武鉉の平壌訪問の前の日だった。「6者協議」そのものの存続のためのもので、「北核解決」はさておき、「平和体制」構築を目指す盧武鉉が金正日と北核問題を議論しなくてもいい口実をタイミングよく与えた。ブッシュ大統領は、盧武鉉がシドニーで米・朝平和協定の交渉開始の表明を迫った時(9・7)にはきっぱり断わったが、国務省は北核問題において外交的進展があったと言えるのが重要だ。 ライス国務長官とヒルは、米朝関係正常化の条件を核問題解決の一つにだけ絞ることに成功した。独裁や虐殺、テロなどを問題にしないことに成功し、「北核解決」をアメリカのアジア外交の成功の基準にするのにも成功した。拉致はテロなのに、国務省は拉致問題の解決なしで、テロ支援国家指定の解除を全く関係のない核問題に連動させた。国務省は日本の面子より金正日の立場を優先するようになった。外交官は相手(敵)を屈服させる能力と同様、自国民を説得する能力が求められる。ヒルはいつの間にか平壌側の思考回路を尊重する「易地思之(相手の立場に立って考える)」になっていた。 ヒルと金桂寛は12月までに、北側は三つの施設の「無能力化」と「申告」を、アメリカ側はテロ支援国家指定の解除とニューヨーク・フィルハーモニー(交響楽団)の平壌公演を交換すると約束した模様だ。これらはいいニュースとして、見事に韓国の大統領選挙に影響を及ぼす。 アメリカの保守派も黙ってはいなかった。平壌側のスリランカの反軍勢力への武器支援や、平壌とシリアの核の取引きを暴露した。だが、国務省は知らぬ存ぜぬで無視した。 北の三つの施設の「無能力化」は年内に出来るだろうが、すべての核プログラムの完璧な申告は無理だ。しかし、北側は全部申告しなくてもいい。ヒルがうまく解決策を見出してくれるはずだ。ここまで来て外交交渉が破綻したら、困るのはアメリカの方だからだ。 でも、子供の茶番劇のような、ニューヨーク・フィルハーモニーの平壌公演の発想は本当に次元の低い「9・11」前の、20世紀冷戦型の演出だ。アメリカの外交から正義や勇気は捨てられたが、私はブッシュ大統領が過去6年間も金正日を抑え時間を稼いでくれたことに感謝する。 保守右派は体制交替に成功するだろうか 韓国民はこれ以上盧武鉉(親北左派)の狂乱を見るのはうんざりだ。この状況が続くのを想像するだけでぞっとする。歴史には無道な勢力による悲劇が多いが、自由民主主義制度の下でこのような経験をするとは、誰も想定しなかった。韓国社会は今「ストックホルム症候群」(テロリストに拉致されテロリストにシンパシーを寄せる)であり、「免疫不全症」(人体の免疫体系の故障で抗体が健康な細胞を攻撃)に罹っている。今度の選挙は、素朴に考えれば簡単な選択である。韓国民は決断すべき「真実の時」がきた。政権交替ではなく体制交替だ。金正日体制の本質は、暴力、独裁、野蛮である。この金正日と合体(民族共助・連邦制)して何をするつもりなのか。人間が怪物や悪魔と合体すると、人間も怪物や悪魔になるだけだ。だから親北左派は有権者が素朴な思考ができないように、理性より感性を、ひたすら盲目的民族主義を刺戟する。勝負は有権者の大半を左派が騙せるのか、右派が覚醒させられるのか、にかかっている。 韓国は今、見えない革命が進行中である。選挙関連の世論調査に応じる回答率は15%を下まわるそうだが、溜ったマグマが噴出するのは時間の問題だ。韓半島で60年間の善と悪の闘争が決着をつける前、あらゆる矛盾や利害関係が明らかになった。革命の環境はもう充分熟した。 革命は意志と行動の衝突である。左翼は選挙まで「平和体制」を求める韓国史上最大の大衆動員による実力行使を辞さない態勢である。しかし、親北左派の狂乱的反逆がこれ以上進めば国民の抵抗に遭い、盧武鉉は退任の前にも反逆者として刑事告発されるだろう。 親北左派の抵抗を制圧し、この国民革命の先頭に立つべき代表としての李明博の前には、立ちはだかる刺客や伏兵がまだ多い。しかし最大の伏兵は、他ならぬハンナラ党や李明博自身の油断なのかも知れない。 |