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韓国大統領選、李明博は勝利者になれるだろうか

洪 熒

(2007.11.30)

 

    韓国の第17代大統領選挙に12人が候補登録をした。中央選挙管理委へ登録した予備候補150人が12人に圧縮されたのは、寄託金(5億ウォン、約6千万円相当)と推薦人(2,500人以上)という条件だった。左派(与党系)も右派(野党系)も候補一本化は実現しなかった。もちろん、本選に12人も乱立したのは非正常で、李明博(野党)・李会昌(無所属)・鄭東泳(与党)の3人の争いになる。

 

 

大統領候補登録者と各種世論調査の支持率(投票記号順、11月29日現在)


1.    鄭東泳(大統合民主新党、140議席)、親北与党、18-11%


2.    李明博(ハンナラ党、129議席)、中道右派、42-37%

 

3.    権永吉(民主労働党、9議席)、親北左派(朝鮮労働党と友党関係)、3-2.2%

 

4.    李仁済(民主党、7議席)、中道左派、1.7-1.1%

 

5.    沈大平(国民中心党、5議席)、中道右派、

 

6.    文国現(創造韓国党、1議席)、左派、前柳韓キムベリ社長、8-5%

 

7.    鄭根謨(真の主人連合、1議席)、中道、元科学技術処長官、大学総長

 

8.    許京寧(経済共和党)、中道?

 

9.    全寛(新時代真人間連合)、中道?、予備役将軍

 

10.  琴民(韓国社会党)、左派


11. 李寿成(和合と跳躍のための国民連帯)、中道左派、元国務総理、大学総長

 

12.   李会昌(無所属)、右派、元ハンアラ党総裁、国務総理、23-18%

 

    投票日(12月19日)までちょうど20日だが、選挙戦は路線や政策論争より、ネガティブ・キャンペーンが中心だ。特に、先頭の李明博候補のアキレス腱である「キムギョンジュン事件」(「BBK株価操作・金融詐欺」事件)に、李明博自身がどのくらいかかわっていたのかをめぐり攻防が激しい。この事件は検察が来週までに捜査結果を発表するが、この発表が今度の大統領選の最大・最後の山場になるだろう。

 

 

 

左派政権延長のための南北左翼権力の合作


    当選ラインは有効得票の40%線に予測されるが、南北の左翼権力(盧武鉉と金正日)は、まず、彼らの代理人である左派の代表が30%台の支持(得票)を確保するよう、あらゆる選挙介入、支援措置を動員している。金大中は保守政権ができると戦争の危険が増すと国民を脅迫(11月22日)した。金大中の「号令」などで鄭東泳の支持率が湖南地域(全羅道)から上がりはじめた。

 

    平壌側(金正日)は、10月までは李明博の落選に注力したが、11月半ばからは「如何なる手段を用いても(6.15宣言を反対する)李会昌を落選させよう」と指令を出している。朝鮮労働党の統一戦線事業部長の金様建が「連邦制の進捗状況」を点検するために11月29日から三日間ソウルを訪問し盧武鉉大統領にも会う。

 

    盧武鉉は「10.4宣言」に続き「南北総理会談」を通じ「南北経済協力共同委員会の構成・運営に関する合意書」、「西海平和協力特別地帯推進委員会の構成・運営に関する合意書」を北側と合意した。盧武鉉は国連の北朝鮮人権決議案には棄権しながら、ずうずうしくも「第1次南北関係発展基本計画(2008-2012年)(*これは次期政権の期間だ)を策定し、任期最後まで「金正日との連邦制」へ向け左翼政権10年間の違憲的「反逆システム」の完成・既定事実化に走っている。

 


左派の反撃は効果を上げるのか


    左右両陣営とも候補の一本化ができないでいるのは、大統領選の後半戦にあたる総選挙(来年4月)への思惑のためだ。親北左派は失政勢力というイメージからの変身のため、年初から三回も与党を解体し、四度も党を作り直して来たが、李会昌の出馬に拒まれてどうしようもない状況だ。鄭東泳は状況打開のため、大統合民主新党と民主党の対等の統合を推進(11月12日)したが、党内の反発で白紙に戻った。もっとも、議席140席と7席が対等統合するのはおかしいが、どうせ今の与党=大統合民主新党も、大統領選が終われば空中分解する運命だから、別にもったいない気持ちもなかったはずだ。結局、左派は投票直前に鄭東泳・文国現・李仁済の事実上の一本化を実現するだろう。親北左派の勢力誇示の決起(11月11日)は失敗したが、南・北の左翼権力があらゆる手段を総動員すれば、一本化した左派候補(鄭東泳)は35%以上の得票も期待できる。


    一方、党(ハンナラ)の支持率(50%)を上回ってきた李明博の支持率は、李会昌の出馬で下がり始めいつの間にか40%を割った。今のところ支持率を回復させる有効な手段もほとんど見当たらない。ハンナラ党の迷走・選挙戦略のミスがもたらしたもので、自業自得でもある。そもそも野党(ハンナラ党)は政権を奪還するため、左翼政権の失政を追及すべきなのに、ハンナラ党は違憲的「反逆」は勿論、不正腐敗も積極的に攻撃せず、いわゆる「大勢論」に安住した。政権をかけた闘争では攻撃しない側は攻撃される。ハンナラ党と李明博候補は野党らしい闘争を放棄し、逆に李明博自身の「BBK株価操作」関連を左派から無数に攻撃され支持率が下がり始めた。

 

 


李会昌の善戦

 

    保守系、いや左派政権の交替を願う有権者の立場からは、やはり李会昌の出馬決断は正しかった。李会昌の出馬を反則だと非難する主張も多いが、保守系から見れば、ハンナラ党が自ら保守性を放棄し、ここ10年間ほぼ定着しつつある「悪(反逆)の生態系」を認めた以上は、また、ハンナラ党が李明博を保護しようと、嘘まで平気で言うなら、李会昌の出馬は「状況変化」による「緊急避難」として認められる。李会昌が出なかったら保守右派は大変なことになったはずだ。 李会昌の出馬は左派の想定外だった。李会昌の出馬は鄭東泳の浮上を抑え、親北左派政権の継続の可能性は低くなった。本選に出た候補群の中で法治の回復や厳正な対北政策、つまり「反金正日・反太陽政策路線」を闡明したのは唯一の無所属候補の李会昌だけである。朴槿恵を支持したボランティア組織がハンナラ党から離脱し、伝統的保守系学者も李会昌支持に加わった。

 



投票に影響を与える変数要因


    検察は「キムギョンジュン金融詐欺事件」に李明博がどこまで関与したのかに対する捜査結果を投票の前に発表する。李明博を支持する有権者の「忠誠度」は、仮に李に道徳的な問題があっても、能力が優先で、政権交替のためには死票(李会昌支持)を防止し「次悪の選択」もやむを得ない、という心理だ。情けないのは、李明博とハンナラ党の傲慢・頑固な体質と危機管理能力の無さであり、自浄能力の欠如である。李明博は、一生を普通の人々のような生活感覚で生きてき、基督教の長老であるのにクリスチャンらしくもないから、冷静に言って、保守主義を代表できるリーダーだとは言えない。左派政権終息の理由の一つが品位の回復であることを考えれば、検察の発表内容によっては李明博の支持率がさらに落ちることは十分有りうる。


    キム・ギョンジュンのアメリカからの韓国送還や「三星グループの秘密資金」問題の暴露も、保守政権の登場を阻止しようとする左派勢力の政治工作として見るのが常識である。左派の候補が30%台の支持率を確保すれば、李明博と李会昌は一本化しなければならないだろう。

    平壌側(金正日)はあらゆる手段を動員して李会昌の落選・除去に躍起になっている。自らは民主的な選挙制度すら持たない北側のこのような鉄面皮な行動は許せないことなのに、盧武鉉・金大中をはじめ与野党の誰もこれを批判・非難しないから驚きである。金正日は李会昌の当選阻止のためにも、特に、来年の総選挙を通じ、政局を主導できる強力な反金正日政治勢力が登場するのを遮断するためにも、平和攻勢や民族共助キャンペーンを執拗に展開するしかない。

    圧倒的優位を保ってきた李明博候補が投票の直前落ちるのは普通なら考えられないが、李明博の頂点は党内予備選での勝利、そして候補登録までだったのかも知れない。


    もちろん、左派権力(盧武鉉)も、もう限界だ。特に、不正・腐敗問題で身動きがとれなくなってきた。全君杓国税庁長が史上初めて税務不正や収賄で逮捕された。盧武鉉自身も「三星グループの秘資金」特別検事の捜査対象になっている。メディアへの弾圧は有権者に左翼独裁との印象を与えた。何よりも李会昌の出馬で右派への攻撃が困難になった。李明博を攻撃、除去すればすむはずだったのに、ターゲットが二つになったからだ。

    今度の大統領選挙は偉大なる実験でもある。左派からの政権奪還が念願の保守右派が分裂した。保守勢力は分裂を収拾し、韓国社会の主流の座に戻れるのか。


    李会昌候補は未来へ向けての国家大改造を呼びかけたが、「第6共和国」20年間の4代の政権が残したのは、ポピュリズム的政策による原則・常識の破壊、法治の後退であり、最も深刻なことは安保の失踪である。政治権力は国民から信頼されなくなった。


    右派の大統領が当選しても、この常識や法治の再建、そして「反逆」の断罪は容易ではない。失われた「反逆」の10年間の「(悪に根差した)非正常的な生態系」を正常化するのは時間がかかる。が、正常化に向けて確かな出発ができる転機をつくるだけで、また、北の同族に希望を与えられることだけで充分であるかも知れない。

    韓国の次期大統領の歴史的責務は、未来への新しい「社会的合意」を導くことである。果たして、有権者は左派政権が構築してきた基準(合意)を変える、社会的合意を導くリーダーを思い切って選択するだろうか。20日後その結果を見ることになる。