家族会・救う会が町村官房長官に会ったのが、10月5日である。翌日6日産経新聞は、一面左肩に「拉致 家族会 首相と溝」という見出しの記事を掲載した。中身は、安倍首相は、就任早々家族会などに面会したが、福田首相は家族会が面会を申し込んでいるのに会わない。だから「溝」というものである。
この記事を読んだ家族会の一人は、「朝日新聞がこんな見出しをつけて報道するのなら分からんわけではない。どうして産経が、家族会と首相の対立を煽るような紙面を作るのか」と驚きの声を上げていた。また、別な家族は、「この紙面は、家族会が首相に不満を持っているかのような書き方になっているが事実と違う。首相である拉致対策本部長に誤解を与えかねない。中山首相補佐官に電話をしてそうでないことを福田さんに伝える必要がある」とも…。
別な家族は「首相が家族会と会わないから怪しからん」ということだが、国民から「家族会は何様の気になっている」と誤解を受けかねない。われわれは過去、被拉致者5人のこと゛もたちが北から帰ってきたとき首相を批判して、逆に国民から厳しい批判にさらされたことを忘れてはならない。言動に気をつけなければ」といっていた。
産経新聞の主観はともかく、客観的には家族会・救う会と首相の対立をことさらに煽っていると言われても仕方あるまい。現に、「対立して大変ですね」という電話がすぐかかってきた。拉致の救出は政府抜きにしては出来ない。その政府と家族会などが対立して誰が得をするのか。この新聞は肝心なことが解かっていないのではないのか。
次に、10月10 日の産経新聞の「全員生存の前提で交渉を」と言う社説である。「福田内閣は、12人全員生きていると言う前提で、北との交渉を目指すべきである。北が『生きていない』というなら、死因の遺骨、遺品、墓の状況など、被害者家族や日本国民が納得できる説明が必要である」と書いた。一見もっとものような主張に見えるが、筆者は、金正日政権の残忍さをリアルに認識していないようだ。
金正日政権は政治目的のためには何でもやる。やれないことはない。遺骨を出せなどといったら、本当に被拉致者を殺害して骨を出してくる可能性がある。われわれが拉致の解決を日朝交渉の入口にすべきだといっているのは、そうしなかったら被拉致者が証拠隠滅のために消される危険があるからだ。この政権の本質を分かっていないと書く人の意図とは全く逆な結果を招く恐れがあることを知ってほしい。
次に、10月12日の3面頭の5段見出しの「北に人道支援検討―拉致再調査を条件に」という紙面である。政府が拉致の再調査を条件に人道支援の検討に入ったという趣旨のものだ。方々から問い合わせの電話が来た。結果は見ての通り、即日、官房長官は記者会見で、「そんな事実はない」と否定した。他紙も書かないところを見ると誤報のようだ。
産経新聞は、上述のように拉致問題で10月6日、10日、12日と立て続けに救出運動の側から言うと迷惑なというより、危険な報道をしている。家族会をしっかり取材しておれば6日のような記事にはなら なかったと思う。また、拉致問題を真剣に見つめていたら「被拉致者の骨を出せ」などということは間違っても書けない筈だ。誤報にいたっては論外である。
12日の人道支援云々は、政府の救出方針の大転換である。大問題になるはずなのに、何処の報道機関も書かないし放映もしない。なぜ産経新聞からのみこんな報道がなされるのか、変だ。こんなことが続いたら産経新聞は被害者家族などに見放されるだけではなく、社会的な信用を失っていく。