この10年間の金日成の外交を見ていると「モスクワが駄目なら北京があるさ、北京が駄目ならモスクワがある」という、綱渡りというか、振り子外交を展開してきた。利用被利用の外交の基準は政権安保だ。イデオロギーなど関係ない。今、金正日がやっているブッシュ政権に対する「パートナー外交」は1960年代の金日成外交をなぞっている。別に新しい手法ではない。
金正日政権のこの動きに対する中国の対応である。前から感じていたことであるが、日本の小泉から安倍への政権交代を捉え、中国は対日接近を図ってきた。理由は、国内問題プラス朝鮮半島の米国との覇権を争いに日本が必要であったからである。
ミサイル実験、核実験にいたる金正日政権に対する中国の態度は、国連の制裁決議に賛成。非公式に耳に入ってきていた中国の金正日に対する圧力は、ミサイル実験などを巡って「やれるものならやってみろ」というやくざまがいの恫喝を思わせるものがあった。
また、バンコ・デルタ・アジア(BDA)の送金問題に対する故錦濤政権の消極的態度は、米朝を牽制する以外のなにものでもなかった。
そもそも南北首脳会談を目前にして、北京が日本メディア(産経新聞)にこんな内容をリークすること事態が、米国指導による南北首脳会談に対する牽制であることは誰の目にも明らかである。中国を無視してやれるものならやってみろ、というこれ以上強力なメッセージはあるまい。次に、何を暴露するか分からないというぞという脅迫が、言外に含まれている。
さて、ブッシュ政権であるが、ヒルなどを見ていると、朝鮮問題の歴史すら知ろうとしていない。金丸訪朝時代のわが国の外務省とよく似ている。韓国系米国人だから、北朝鮮のことを知っているというレベルである。金正日政権から見れば米国務省のヒルのような連中を騙すのは赤子の手を捻るより簡単なはず。金正日からどんなメッセージが届いたか知らないが、そんなものを信用するほうが馬鹿である。必ず反故にする。
ブッシュがこの金正日のメッセージを信用している証拠は、ヒルが来年末までに米朝国交樹立を目指すと公言していることである。今回の取材で分かったことは、政府筋は、ブッシュ大統領は、米財務省の金融制裁(現代コリア9月号真田幸光論文参照)で金正日政権を締め上げることが出来ることを承知しながら、それの発動(金正日政権打倒)を許さないでいる、という重大な事実を知ったことである。
この政府筋の話が事実なら、ブッシュは金正日の生殺与奪の権を握っているということである。これの真偽は6者協議の行方を見ればすぐ分かる。
事態がこのようである以上日本はどうするのか。結論を先に言うなら、拉致・核解決に日本は主導権を握った。安倍晋三内閣の拉致救出の方針は「拉致の進展なくしてカネは出さない」であるし、ブッシュ政権が、拉致を置き去りにして、米朝国交樹立などに動いたら、日米関係が目茶苦茶になるがそれでもよいのか。それをしたくなかったら、拉致解決に本気で協力せよと迫ることである。韓国・中国にも同じことを断固主張すべきである。中国は支持するはずである。
日本に拉致解決の千歳一遇のチャンスが訪れたのである。