他方、韓国の朝鮮日報5月11日付で、ニューヨークタイムズ、ワシントンポストなどが金融送金問題でブッシュ政権不手際を非難していると報道、ヒル国務次官補も、「結局北朝鮮に騙されたのだ」という強硬派の批判に直面しており意欲を失いつつあると伝えられている。ヒル氏は5月4日ジョウジータウン大学での講演で「6者協議の合意が年内に実現しなければ、私はこの地位にいないだろう」と語ったという。さらに批判のせいか、NSCアジア部長6者協議の副代表ビクター・チャ氏が4月一杯で突然辞任した。
ここに来て注目すべき情報を入手した。ブッシュ政権が、北に騙されたということである。具体的に騙されたのがヒルとライス、NSCアジア部長のビクター・チャ の3人。特に、チャ氏がブッシュ大統領に融和政策を(6者合意中身)を説明し、説得したというもの。
北からの工作の中身は「われわれは(北朝鮮)は、中国を信用していない」というメッセージであったという。この視点から、昨年ミサイル実験、核実験以後の米朝の動き、北が6者に復帰し、1月ベルリンで米朝二国間協議、バンコ・デルタ・アジア問題での中国の冷たい対応。米国の無原則的妥協などを見ていると、幾つかの謎が解けていくような気がする。
この工作は、「6者合意」までは北のペースで上手く進んだが、送金問題で躓き(中国は送金問題に一切協力しなかった)が生じた。これは米朝の読みに入っていなかったはずだ。
私が、この北の「工作説」に強い関心を示すのは、朝鮮労働党の伝統的手法であるからだ。目的を達するために相手国内に協力者を作る。日本の場合、北が元社会党副委員長(当時)田辺誠氏を使って元自民党副総裁金丸信氏を説得、1990年9月のあんなとんでもない「3党共同宣言」に同意させた。工作の勝利であった。
今回の工作は、政策立案者を抱きこむことであった。ビクター・チャの両親は韓国全羅南道木浦出身、金大中の縄張りである。昨年6月ヒルの上級アドバイザーに就任したバルビナ・ファン前へリテージ財団研究員も韓国系米国人で、ファンがジョージタウン大学で博士号論文作成した指導教官が当時準教授だったチャ氏である(「現代コリア」5月号島田洋一論文51頁)。二人の関係は極めて近い。
話しが横道に逸れるが、これを読みながらそういえば日本にも朝鮮問題なら、文学者の金達寿・李恢成氏らが(つまり三文字の人たちが)、何でも解説していた時代があった。今の米国は1970年以前の日本の北朝鮮問題の水準であるらしいことが分かってきた。要するに無知であるから、容易に工作に引っかかるのである。
しからばわが日本は、今は大丈夫かといえばそんなことはない。最近、加藤紘一・山崎拓氏が中国や韓国を訪問、核問題と拉致問題を切り離すことが「合理的」という趣旨の話しをして回った。信頼すべき筋の話では、中国でこの人たちは北朝鮮要人と会って万景峰号入港を認めて欲しいとの陳情を受けたという。
私は、以前から万景峰号は「金正日の宅急便」と呼んでいたが、将軍様は、やはり「松坂牛」と新潟の「越の寒梅」、北海道の「夕張メロン」でないと食欲も精神も安定しないらしい。万景峰号の入港を認めるかどうかは、加藤・山崎両氏ではなくて首相官邸である。金正日政権は陳情する先を間違えているのではないか。
また、「拉致と核を切り離せ」と両氏は、韓国の外務大臣と意見の一致を見たと韓国の通信社が報道していたが、金正日政権から見て、手柄を立てたい、自己の存在をアピールしたいと思っている手合いは、かつての外務省アジア局長田中均氏やヒルやライスと同じく加藤・山崎両氏は、格好な利用できる美味しい存在である。
大変興味深いのは前述の島田洋一論文によれば、チャもファンも「核と拉致の切り離し」を主張していたという。山崎・加藤氏らの主張と奇妙に一致している。また被害者家族を一本釣りして北朝鮮に連れて行き家族会を分裂させようと狙っている。工作にかけては世界一。金正日政権を甘くて見てはならない。