現代コリア

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ヒルさんお元気ですか

佐藤勝巳
(2007.5.3)

 

    近頃、ヒルさんの発言が聞かれなくなりましたが、どうしておられますか。ちょっと淋しい気がします。

 

    多分、あなたが描いた筋書き通りに6者協議が進まず、困惑しておられるのではないかと推測致しています。BDA問題がこんなにこじれるなど全く予想外のことだったのではないでしょうか。ヒルさんだけではなく、誰もが驚いていると推定されます。

 

    アメリカは六者協議には、交渉のプロ国務省、核の専門国防総省、マネーロンダリングは財務省、安全保障全体は国家安全保障会議、情報はCIAというプロジェクトチームを構成、北京で交渉に臨んでいました。わが国にこんなプロジェクトチームはありません。さすが「アメリカ帝国主義」は違うと感心していました。ところが、このまま行くと国務省の立場だけではなく、ブッシュ政権の立場が北朝鮮問題でもイラクに続いて困難になりそうな気配になってきました。

 

    一体ヒルさんこれはどうしたことなのでしょうか、と誰もが聞きたくなると思います。この小生が、ねェねェ、ヒルさん6者はどうなったのですか、とお尋ねしたいです。そもそも解らないのは、米財務省はBDAが偽ドル洗浄「主要懸念先」として指摘したのは、1年半ほど前の05年9月ですよね。

 

    1年半が過ぎ、金桂寛がBDAの2500万ドルが自分の手に入らない限り、6者協議は意味がないといって、席を立って今日に至っています。ヒルさんマネロンは法律に違反した犯罪の取締り(法の執行)の問題だと確か言っていたように思います。6者協議で話合われていることは金正日政権の核兵器と日本人拉致をどう解決するかという異質な問題と、ヒルさんの上司たちも言っていたように記憶しています。

 

    それなのに、ならず者集団の不当な要求(犯罪否定)にヒルさんはどうして応じたのでしょうか。われわれから見るとブッシュ政権も相当いい加減で、他人の迷惑など省みず、自分の都合で正反対の政策を平気で実行する、「信用できない」と思った日本人が沢山でてきたことは間違いありません。

 

    どうしてこんなことをしたのか、推測はあふれていますが、ヒルさん自身の口から政策変更の説明はなされていませんよね。是非とも聞きたいものです。私は、ヒルさんの交渉態度を見ていて、最初から不安に思っていました。理由は、ヒルさんの交渉相手である金桂寛なる人物と、彼を指導している金正日なる人間を全く疑っている気配が見られなかったからです。本当に話合いで核を放棄すると思って交渉していたのですか。

 

    ヒルさんは外交官ですから交渉に当たって、過去8年間のクリントン政権時代の交渉の記録を読んでいらっしゃるはずです。そして何が問題であったかを検討されていたはずです。その結果、米朝二国間交渉ではなく、6者協議になったのです。それでどうしてまた、実質二国間交渉に戻ったのでしょう。

 

    案の定、BDA問題でつまずいています。余りにも行き当たりばったりのやり方とハラハラして見ておりました。結局、ヒルさんあなたは、アジア人を馬鹿にしてモノさえ与えれば何とかなると軽くお考えになっているのではないでしょうか。


    ご承知のように、金正日政権は、在日の朝鮮総聯の機関紙「朝鮮新報」(4月27日朝鮮語版)は、「金正日政権の要求が、BDAの資金の返還にとどまらず、米国金融機関との取引やドル決済可能にすることを含むことを明確にした」(産経新聞4月29日)というように、米財務省は4月18日、BDAにマネーロンダリングがあったと断定、米金融機関との取引停止措置を発動しました。金正日政権は、この金融制裁の撤回を求めてきたのです。

 

    ヒルさんが一歩後退すると金桂寛は二歩前進してきましたね。ヒルさんは6者協議を維持するためにこの要求も呑むのでしょうか。小生は五分五分と見ています。つまり、米国内のライス・ヒルラインに反対する勢力との力関係と、日米の力関係で決まると見ています。その意味では、ヒルさんの立場は首が掛かっていますから、大変だとお察し申し上げています。

 

    もし、金正日政権の要求を呑むなどということになったら、米国内だけではなく日本でも大問題になります。なぜこんなことになったかといえば、金正日政権が、6者協議に応じたのは、短期的にはBDAの2500万ドルも欲しいかもしれませんが、長期的にはより深刻な金融制裁です。その解除させることにありました。『6者合意』を謂わば「人質」に取って金融制裁の撤廃をねらってきたのです。それを読めなかったヒルさん、あなたとライス長官の責任は重いですね。
現状では全世界の金融機関が金正日政権を相手にしませんから、真綿で首を絞められているのと同じ状況にあると思います。金正日政権は6者協議どころではない筈です。政権の存続そのものが、危機に直面していると考えられます。事実、北朝鮮からはそれを裏付ける情報が幾つか届きはじめています。

 

    そこで意見を申しますと、話合いで金正日政権が核やミサイルを放棄することはあり得ないということです。なぜなら核を持っているから金正日政権を相手にするのであって、核を持っていなかったらあんなならず者集団など誰も相手にしませんね。仮に、6者協議が成功し05年9月の共同声明の中身が実現しても、金正日政権は、核を持たず、国際援助によってしか生存できない哀れな国になり下がります。

 

    彼らの生殺与奪の権は日本などの援助国に握られます。ヒルさん、あなたが金正日の立場に立ったら核を放棄しますか。放棄しないと思いますね。自分が決定的に不利になることを選択する権力者はいません。多分、あなたに限らず誰もしないと思います。


    誰もしないことが確実に想定されることを金正日にだけ求めているというのが、6者協議です。出来ないことを出来るのだという虚構の上にたって交渉をしている。こういうのをナンセンスというのではないでしょうか。