アメリカは法律によって国家が運営されている国であった筈だ。だが、こんな矛盾したことを平気でやるブッシュ政権を誰も信用しなくなるだろう。結局、米国は他人の迷惑など顧みず、自分の都合で平気で法を無視する、信用できない国と誰もが考えるだろう。この認識は正しい。
そこで、なぜこんな信じがたいことを米国のヒルとライスはやるのかである。中国銀行にBDA資金の受け取りを拒否されて、六者協議がデッドロックに乗り上げ、二人は窮地に立たされた。
そこで考え出したのがBDAの預金者本人が、預金を直接下すことが出来るという今回の措置である。おそらくヒル・ライスの考えは、中国の「妨害」の排除と、問題のBDA預金2500万ドルのうち、700万ドルを所有する英国人の要求も満たすことが出来るということもあったと思われる。
この米国の措置について中国は、コメントを出していない、注目すべきことである。そもそもこんなトラブルが続いているのは、ヒルとライスが、金正日のBDAの資金凍結を解決しないと核協議に応じないという、不当な要求を認めたことに原因がある。
なぜヒル・ライスは不当な要求を呑んだのか。直接的にはヒルとライスが交渉で金正日に核を放棄させることが出来るという重大な判断ミスを犯しことである。その上に外交官としての実績作りを考えたことにある(わが国にも過去田中均氏という同じこと考えた外交官がいた)。
しかし、その背景には、ブッシュ政権が、中東問題で困難に陥り、中間選挙で民主党に敗退し、金正日などにかかわっておれないという、ブッシュ政権の弱体化がある。
今一つ、BDAに凍結されている金正日の凍結資金は2500万ドル。よく引用されているプロ野球選手の松坂大輔選手の獲得交渉権の代価は5000万ドルだが、BDAで凍結され北朝鮮資金の倍。米国から見れば、2500万ドルなどゴミ見たいな金額である。
しかもアメリカが出すのではなく、相手の預金を返すだけの話。騒ぐほどのことはない、という安易な考えがヒルなどの言動から伺い知ることが出来る。
安倍政権になるまでの日本政府もライス・ヒルと同じであった。金丸信氏をはじめ何人かの政治家が日朝正常化交渉に動いた。金正日政権は、交渉したかったらコメをよこせといい、日本は余剰米があるから「お安い御用」と累計で150万トンを供与した。そして未だに日朝交渉すら実現していない。ライス・ヒル、田中均ら外交官と政治家の違いはあるが、「売名」が「売国」に連なるという点で共通している。
ここから引き出される教訓は、拉致や核を解決しろと要求し続けることであって、コメを与え、凍結資金を解除することではない。従って今回のブッシュ政権の凍結資金解除は重大な誤りである。
山崎拓氏は根拠も示さず「追い詰めると暴発する」と盧武鉉と同じことを口にしている。だが、昨年10月国連で金正日政権に対し制裁決議を採択し、金正日政権を追い詰めた。また、小泉政権時の昨年7月と安倍政権10月に独自制裁を発動したが、ミサイル一発飛んでこなかったではないか。
山崎拓氏の認識はヒル・ライス、盧武鉉と同根である。金正日が暴発する、核協議に応じないといえば、コメや肥料を献上し、凍結資金を解除する。そして金正日の延命に手を貸すという構図だ。
金正日政権が一番困っているのは、米財務相がBDAに米金融機関との取引停止処分を科したことである。世界中の金融機関は、米財務省の措置を見て従来からそうだったのだが、北朝鮮との金融関係をより警戒しだしたことである。
多分、金正日は、米財務省の「BDAに掛けている制裁を解除せよ。テロ支援国家指定を解除せよ。この要求が実現しなければ核協議に応じない」といってくるだろう。そうしなかったら金正日は窮地を脱することが出来ないからだ。
この場合、ヒルとライスは6者協議を維持しようとするなら、金正日の要求を呑まざるを得ない。呑めば、アメリカは、ならずものの内政干渉に屈したということで、ヒル・ライスに対する内外からのバッシングはより一層高まるであろう。
「初期段階の措置」期限の4月14日が来ても、金正日政権は動かず。ヒルは北京で狼狽した表情で金桂寛を待つ姿が、TVでアップに映っていた。
自身の判断ミスによるアリ地獄が始まった。この二人は自分たちが如何に無知で愚かで傲慢であったかを確りと学習すべきだ。
しかし、金正日政権が、たかが実質1700万ドルの取り分に異常なまでにこだわるのは、それほどに困っている証拠だ。大局として時間はわれわれに有利に動いていることを見落としてはならない。
近く訪米する安倍晋三総理大臣は、ブッシュ大統領に融和政策の変更を毅然として求めるべきである。アメリカのためにも。