小泉首相の思惑 佐藤勝巳 (2004.11.5) 小泉首相が2回目の訪朝をしたのが5月中旬。25万トンの食糧支援という名の「身代金」(12.5万トン分52億円)を支払って、拉致された5名の家族8名を取り返した。 これを一定の成果と見るか、テロ政権に「身代金」を支払ったテロとの戦いへの裏切りと見るかは、人によって評価の分かれるところである。5月中旬時点では、小泉訪朝を評価する「世論」が多かった。 しかし、今は拉致救出運動の正念場である。金正日が「死亡した」といっている8名と、上陸していないといっている2名、計10名をどう救出するかである。これについて、8月、10月と2回、日朝実務者協議が開かれた。周知のように金正日政権は、「死亡」した物的証拠も、生存しているという証拠も全く示さず、「調査中」といって、いたずらに解決を引き延ばしているというのが現状である。 この状態を打破するのに日本国内に意見の別れがある。ひとつは、小泉首相に代表される話し合い解決。今ひとつは、家族会など救出関係3団体(家族会・救う会・拉致議連)に代表される「今こそ経済制裁を」という主張である。 まず、首相官邸が考えている話し合い解決であるが、彼らが「死亡した」といっている人たちを本当に「話し合い」で解決できるのかということである。 前述のように実務者協議で2回話し合ったが、何も進展していない。11月中旬、第3回目の実務者協議が平壌で予定されているが、「経済制裁」という切り札なしに話し合いを続けるなら、結果は今までと変わりないことは、火を見るより明らかである。 金正日政権は、8名死亡と言っているのであるから、具体的な物的証拠、骨などの提出を期限付きで求める必要がある。期限を守らなかったら、「経済制裁を発動する」と通告すべきである。もし骨が出てきたらそれをDNA鑑定すれば、彼らの言っていっていることが本当か、嘘かはすぐに判明する。 本当に拉致した日本人の骨であったら、小泉首相が言う「1年以内に日朝国交正常化」など問題外。逆に、日朝貿易の全面停止、北朝鮮船舶の日本入港全面禁止、北朝鮮を支持する在日朝鮮人の北朝鮮への渡航全面禁止、朝鮮総連への破防法適用などで金正日政権の責任を断固追求しなければならない。 最近の各種の世論調査をみれば明らかなように、国民は、金正日の意図を見抜き、「経済制裁で拉致解決を」という声が70%を超えている。 また、こういった世論を反映したものであろうが、自民党拉致問題対策委員会は、経済制裁が必要である旨の決議をし、政府に要請している。それだけではなく、19日、自民党「対北朝鮮経済制裁シミュレーションチーム(座長・管義偉衆議院議員)が、北朝鮮の対応に応じ、どの制裁を発動すべきか、プログラムを作成する方針を決めた(10月20日読売新聞)という。 ところが首相官邸は、死亡などとされている10人に対して、近く北朝鮮に「日朝合同調査委員会」の設置を「外務省に提案させる」という話が流布されている。 これが事実なら、「合同調査委員会が調査しているのに経済制裁はないだろう」という制裁阻止の防波堤にほかならない。これは「首相官邸の謀略」と呼ぶべきものである。 第一、北朝鮮自身が調査しても分からないものを、日本人(外国人)が参加することで、事が進展するなど200%ない。こんな委員会の設置を提案することは日本の自殺行為、国益の放棄にほかならない。 最高権力者金正日が「白紙に戻し、再調査をする」と小泉首相に約束したのだ。小泉首相は、約束違反であるといって金正日を糺すのが筋であろう。何故それをしないのか。 金正日独裁国家において、金正日の命令に背くことは死を意味する。日朝実務者協議で彼らは「工作機関が調査に応じないで困っている」などと、日本をナメタ話を平然としている。 調査をだらだら延ばしているのは、金正日の了解のもとにやっていることであると断言してよい。要するに小泉首相は、許宗萬・吉田猛などという胡散臭いものたちを相手にして、まんまと金正日に騙されたのである。 小泉首相はなぜ騙されたのか。巷間、首相は歴史に名を残すことと、ノーベル平和賞受賞を狙っている思惑があるから、騙されたのだと言われている。本当に名誉が欲しいのなら、毅然たる態度で拉致問題の全面解決を図ればよい。そうすれば間違いなく日本現代史に名前が残る。そしてノーベル平和賞も受賞できる。小泉首相は、問題の本質を取り違えてはならない。 |