現代コリア

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朝銀疑惑の究明を
佐藤勝巳

1999年7月 現代コリア7月号掲載

 

    いま、関係者の間で「朝銀疑惑」と言う言葉が現実味を帯びて口にされ出している。

 

    理由は一九九七年五月、朝銀大阪信用組合が債務超過で破綻した。そのときの処理の仕方を巡ってからである。

 

    全国各地にある信用組合の許認可権者は都道府県知事であって大蔵省ではない。各自治体にある信用組合は都道府県知事の監督下にある。大阪朝銀の監督官庁は大阪府知事である。

 

    大坂朝銀が破綻したとき、他の信用組合破綻の時と全く異なる受け皿が作られた。

 

    日本人経営の信用組合が破綻した場合は不良債権を整理回収銀行に分離し、それ以外の債権と預金が預金保健機構の資金援助つきで、受け皿となる金融機関に譲渡される。

 

    大阪朝銀の場合はここまでは同じであった。当時の大阪朝銀幹部は「預金を金正日に流したのだから逮捕を覚悟した。逮捕されたら全てを語るつもりでいたが、誰も調査にこず、来たのは預金保険機構から三千百億円の贈与であった。そして逮捕を免れた」といっている。

 

    疑惑の(1)は、公的資金(税金)三千億円余を使うのに朝銀大阪をお座なりの調査しかしていない。預金保険機構は何時もこんなでたらめのことをやっているのか。そうでなく、朝銀だけにこんなことをしたのであれば、なぜ大阪朝銀のみを特別扱いしたのか。

 

    次は破綻した大阪朝銀の受け皿問題である。冒頭で指摘したように信用組合の監督官庁は自治体の長である。ということは信用組合の営業範囲は二つ以上の自治体に股がることはなかった。

 

    ところが大阪朝銀の受け皿は、近畿五県の朝銀を一つにして「近畿朝銀」を作りそれを受け皿とした。

 

    疑惑の(2)は、営業範囲が五つの府県にわたる信用組合など日本のどこにもなかった。なぜ、全国に例のない受け皿が、国会の論議もなく決まったのかである。自治体にそんな権限はない。大蔵省か、金融監督庁であろう。しかし、一行政官庁が、こんな大変なことを権力の了解なしで独自に出来るはずがない。政治家の誰が何の目的でこれを作らせたのかだ。

 

    朝銀大阪が破綻した直後、新潮社刊「フォーサイト」七月号に「大蔵省筋は、『朝銀大阪が預金量で全国四位という信組大手だったといこともあるが、やはり民族系金融機関と言う事情が大きい』と説明する。

 

    「大阪府の関係者も北朝鮮情勢が不透明なうえ、新潟の女子学生拉致事件など日朝関係が混迷を深めつつあったため『国の高度な政治的、外交的配慮が働いた』ことを認めている」と書いた。

 

    朝銀を吸収合併する日本の金融機関は皆無であろう。だったら保険預金機構が預金を保障して解散させるしかないはずだ。なぜそうしなかったのか。

 

    そうしなかった理由は既述の「民族系金融機関」「北朝鮮情勢が不透明」「新潟の女子学生拉致など日朝関係が混迷を深めつつ」あることだと言う。

 

    総聯関係者は、当時自民党幹事長代理であった野中広務氏の「面倒見てやれ」という鶴の一声で決まったと言っている。この時期は野中氏主導で、北京で拉致を棚上げにして、日本人妻里帰りを実現させるための日朝交渉をやっていた時期である。「外交的配慮」とは多分このことを指しているのではなかろうか。

 

    大蔵省は「民族系金融機関」と言うが、だからどうしたと言うのか。なぜ、日本の金融機関と異なる扱い、優遇措置を取るのか。これは逆差別である。「朝鮮情勢が不透明」だからといって、公的資金を使うのに、どうして大阪朝銀の帳簿をいい加減にしか調査しないのか。大阪府に聞きたい。毎年監査していて、大阪朝銀が破綻するまでどうして分からなかったのか。大阪府議会は何をしていたのだ。「不透明」なのは大阪府と府議会ではないのか。

 

    「新潟の女子学生拉致など日朝関係が混迷を深めつつあった」ことと朝銀大阪の帳簿を厳密に調査しないこととどういう関係があるのか。日本人拉致を指令したのは金正日だ。その金正日を支持して預金を金正日に流したから後述の朝銀が破綻したのだ。監督の立場にあった大阪府の関係者が、よくもこんなことを無責任に口にできるものだ。

 

 

    朝銀は五月二一日記者会見して次の発表を行った。関東・甲信越の朝銀神奈川、埼玉、茨城、栃木、群馬が合併して「朝銀関東信用組合」(仮称)を作り、これに東京、千葉、新潟、長野の各朝銀が事業譲渡する。本店は神奈川に置く予定と発表した。

 

    これより早く五月一四日には他のブロックが一斉に記者会見、次のような発表を行った。朝銀北海道、福島、秋田、岩手が合併して「朝銀北東信用組合」(仮称)となり、これに宮城、青森の各朝銀が事業譲渡する。本店は北海道におく。

 

    朝銀岐阜、三重、静岡、石川、富山が合併して「朝銀東海信用組合」(仮称)を作り、これに愛知、福井の朝銀が事業譲渡する。本店は岐阜に置く予定。

 

     朝銀岡山、愛媛、香川、大分、佐賀が合併して「朝銀西信用組合」(仮称)を作り、福岡、山口、広島、長崎の各朝銀が事業譲渡する。本店は岡山に置く予定というもの。

 

    上記で事業譲渡した朝銀は大阪を含め一四信用組合が、破綻したのだ。総聯ではこのやり方を「大阪朝銀方式」と呼んでいるのだそうだが、そうなら破綻した朝銀の帳簿を調べないと言うことである。

 

    編集部が総聯内部から得た情報によれば、関東・甲信越ブロックの不良債権総額は水増しも含め二兆円あると言う。帳簿を本気で調べなければ金正日に送金したカネは表に出てこない。仮に、帳簿を改竄してもプロがその気になって調べれば容易に摘発できると言われている。整理回収銀行は朝銀の言いなりに不良債権を買うことにならないのか。

 

    帳簿を厳密に調べないのなら、架空預金を沢山作れば良い。その架空預金を預金保険機構は支払ってくれる。預金保健機構などから騙しとった日本国民の税金は、朝銀を助けた政治家か、金正日か、どこに行のだろう。

 

 

    これも総聯関係者からの情報であるが、延期された村山訪朝団は、日朝交渉再開のため金正日への手土産として、コメ八○万トンと朝銀を救うってやることであったと言う。

 

    監督官庁である自治体は断固監査すべきであるのだが、どこも動こうとしない。自治体がへたに動くと「それでは…」といって朝銀関係者にしゃべられたら各自治体は一様に困ることを抱えているようだ。そうでなければなぜ断固として監査をしないのか。

 大阪朝銀のときも、今回も日朝交渉の再開と一致している。到底偶然の一致とは思われない。預金を金正日に流した朝銀が、破綻をした。すると日本政府は監査を適当にやって税金で朝銀を救う。これは日本国の税金で金正日政権を支えるということではないか。

 

 

    小渕総理は、機会ある度に金大中大統領の「太陽政策」を支持すると言っていた。あの政策は、こちらが誠意を示せば、相手も誠意を示すであろうと言う、最も拙劣な思い込み外交の典型である。

 

    我国政府の対北朝鮮政策も一貫して「太陽政策」であったし、今もそうだ。金正日政権の態度を見るがよい。誰が、どんな「誠意」を見せても、米朝合意の裏で核開発しているし、韓国に潜水艦(艇)入れてくるし、戦争は仕掛けてくる。再度テボドン発射の準備を進めている。

 

    金日成・金正日は韓国を「武力統一」するという「革命政権」である。これを実現するためには「敵の武器を奪って、敵を倒す」というパルチザン戦法である。これは一貫して変わっていない。「太陽政策」「軟着陸政策」は敵に進んで武器を提供するという金正日政権の本質を取り違えた、飛んでもない危険な政策なのである。

 

    「太陽政策」と言っても韓国海軍は、敵の艦艇を撃沈大破、勝利した。金大中大統領は、北朝鮮政策をギブアンドテークに変えたようだが、小渕内閣は工作船を取り逃がした。共に「対話と抑止」と言っても日韓ではここ一番というときに決定的な差がでる。

 

    日本人を拉致し、弾道ミサイルを撃ち込んできた金正日を財政的に支えてきた朝銀を日本国民の税金で助けてやるという話はいくらなんでも酷すぎる。